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技術力と信頼

財部 最初に,利益の源泉といえる現場の現状についてお聞きしたいと思います。
松井 建築現場は,人員不足,資材高騰でどの現場も一筋縄ではいかないというのが現状かと思います。労務費と資材が高騰していることは一般に浸透してきていますから,かつての鋼材高騰のときとは,だいぶ雰囲気が違いますね。ただ,人員については不足している。首都圏では大きな現場の稼働に伴い,どの現場からも人手が足りないという声が聞こえています。
 土木でも厳しい受注競争に加えて,調達や現場の人員確保等,簡単ではありません。
財部 その厳しい状況を好転させるためには,どうすればよいと思いますか。
 まず大切なのは,根本的な部分を見失わないことではないでしょうか。つまり,建設業は,これからも社会から必要とされる産業であるという強い信念を持って仕事にあたることです。そして,厳しい外部環境ばかりに目を向けて落胆するのではなく,競合他社と比較して,鹿島の強みや優位性が何であるかを追求するようにしています。例えば,協力会社を大切にするという鹿島の社風です。人材確保が難しいのは確かですが,“鹿島の現場なら”と集まってくれる作業員さんもたくさんいます。精神論的ですが,これまで築いてきた信頼が現場を支えてくれるのです。そう考えると,決して悲惨な状況ばかりではありません。
吉田 建築管理本部で調達を半年間担当しましたが,資材についていえば海外調達は有効な手法ですね。ただ,為替の動きひとつで調達価格が大きく変化しますから,スピード感が要求されます。
松井 私は,現場だけで思考するのではなく,鹿島の総合的な力を引き出すことに打開策を見出しています。構造などについて建築設計本部からバックアップしてもらっているのです。構造的な工夫を施して事業用の床面積を増やし,得意先の事業に貢献しながらも施工性に配慮した仕様をめざしています。
新里 まさに設計と施工のシナジーですね。私は,開発事業に携わっていますから,事業者の立場で,その力を実感してきました。共同事業パートナーからも“鹿島はいいものをつくってくれる”と高い信頼を得ています。
松井 そうですね。当社の設計力はすごいと常々感じています。人材も豊富で,施工のことをわかった設計といいますか,よく研究していて経験が蓄積されています。さらに,土木の協力で地盤や杭の検討をしてもらうこともできます。現場力には,設計力が欠かすことのできない大切な要素だと思います。
吉川 設計と施工だけの話に留まらず鹿島が生み出す“技術”全体に同じようなことがいえるのではないでしょうか。私は,海外畑が長く,7ヵ国でダム,交通インフラなどの現場をこなし,欧米も含め他国の技術者と話をする機会もありますが,鹿島の技術は他国に負けていないと感じます。地震国,日本で培われた技術は世界に誇っていい。現場環境が多少厳しくなろうとも,根本にある技術の優位性は揺るがない。

図版:座談会 イメージ

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財部 海外の話が出てきましたが,当社にとってグローバル化は大きなテーマといえると思います。海外でのビジネスの状況はいかがですか。
鬼頭 米国,東南アジアは,半世紀を超える歴史もあり,鹿島の評価・知名度は高いですね。特にシンガポールを中心とした東南アジアでは抜群です。
財部 具体的には,どんなところが評価されているのでしょうか。
鬼頭 国内では,当たり前のことですが,一言でいえば,高品質のものを工期内につくるということでしょう。当初は,価格勝負が多かったのですが,この当然のことを継続することにより,最近は,まず鹿島に声をかけたいという企業が増えています。
度会 そうですね。“当たり前”と思えることが強みじゃないでしょうか。米国で,カナダ,ドイツ,イタリア,メキシコ,インド……と様々な国のエンジニアと協働で医薬品工場の計画に携わった経験がありますが,プロジェクトスケジュールをコミットできていたのは,私たちだけでした。緻密な段取りは,日本人が圧倒的に秀でていますよね。タスクの担当者が自発的に改善できる点もほかの国にはまねができない。
鬼頭 日系企業の工場建設を担当していたときに,その強さを実感しました。お客さんは1日でも早く竣工して生産を開始したい。工場の稼働が前倒しできれば,その分利益につながりますから。鹿島のスケジュール管理能力は高く評価されています。
吉川 インドネシアのカレベダムでも同様でした。民間事業で水力発電のダムです。1日でも早く完成して発電を開始すれば,それだけ利益になる。早く竣工させたことを評価してもらい,増額変更を認めてもらったことがあります。
高村 私は,組織力も日本人の強さだと思います。個々の力をひとつのベクトルにまとめられる能力は,様々な分野の人を束ね,新たな挑戦をする原動力になる。
永江 最近,海外希望者が増えてきました。会社が海外に舵を切っていますから,早い段階から行きたいと手を挙げている人が多い。
新里 開発に入ってくる若手は海外希望者が多く,事業規模が大きいことや仕事を任せてもらえるのが魅力のようです。
吉川 任せてもらえるというか,任されるという感じですかね。事業規模に関係なく少人数で全てをやらなければならないので,苦労も多いですがやりがいもあります。国内では協力会社に任せることができますが,直庸形態でのアフリカの現場では計画から指示,段取りまでの全てを行う必要があります。当然ミスをした場合の影響は計り知れませんが,国内とは違ったおもしろさがありますね。
鬼頭 海外では毎日ハプニングがありますよね。それをやりがいがあっておもしろいと感じられる人は,海外に向いていると思います。「運転手が迎えに来ません」とか「食中毒にかかってしまいました」といったよろず相談にも面倒くさいと思わず親身に対応できることが大切です。
吉川 日本じゃ考えられないようなことが起きるわけですね。そこで悩んでしまうと立ちいかなくなる。
高村 海外で感じたのは,自分の意見をアピールする力ですね。フランスでは,会議になると皆よくしゃべる。僕はフランス人と日本人の感性は似ていると思っていますが,合意形成の道筋は全然違う。日本人は他人の意見を聞いて「彼はこう言っているはずだ」と言ってないことまで想像する。フランス人というのはその逆で,言いたいことを言って,人の意見を全然聞いていない。
鬼頭 それは私もハワイ島のプロジェクトで感じましたね。当初,英語が達者でなかったこともあり会議であまり発言をしなかったら,いつの間にか会議に呼ばれなくなっていた。彼は意見がないから呼ぶだけ無駄と思われたようです。それで気がつきました。めちゃくちゃな英語で構わないから,自分の意見をいうことが大切だと。「なんだかよくわからないが,意見を持ってそうだ」と思わせることが大事。内容だけでなく存在感です。
高村 語学力も重要ですが同時にアピール力は,これからのグローバル化のなかで大きな価値を生みます。これは日本でもステークホルダーや得意先に自分の意見をしっかり伝えるという意味で役立つと思います。

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KOAが設立25周年

図版:KOAが設立25周年

東南アジアを統括する海外現地法人KOA(カジマ・オーバーシーズ・アジア)が今年で設立25周年を迎えた。KOAは,1980年代の円高で国内製造業が海外進出を進めるなか,工場建設需要の高まりから設立された。タイやマレーシア,フィリピンなどで日系企業の工場建設を進めてきたほか,拠点を置くシンガポールでは,オフィスやホテル,マンションなどの大型工事も施工している。インドネシアのスナヤン開発プロジェクトなど開発事業でも成果を収め,多角的に事業を推進している。なお,当社の東南アジアでの事業展開はさらに古く,戦後の賠償工事によるインフラ整備などに携わった60年代に遡る。
写真は,スナヤン開発プロジェクトの全景。

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