現場から:

避難坑を拡幅して
      新たにトンネルを掘る

高知自動車道(四車線化)明神トンネル工事



 高知駅前から車で北へ約1時間,高知自動車道が愛媛県との県境近くに差し掛かる頃には,緑におおわれた山深い光景があたり一面に広がる。急峻な四国山地のほぼ中央に位置するこの周辺では,現在暫定二車線で供用中の高速道路を四車線化する工事が急ピッチで行われている。その中の1つ当社が施工中の明神トンネルの現場を紹介する。


地図

●既設トンネルの避難坑を拡幅

 現在供用中の明神トンネルは,高知自動車道大豊・南国間に位置し,全長3,728mに及ぶもの。日本道路公団が中硬岩地帯において全線にわたりNATMを採用した初めてトンネルであった。当時(T期線)は,本坑と避難坑の2つのトンネルが当社JVが施工した(1981〜1986年)。今回の工事(U期線)では,現在避難用通路となっている避難坑を拡幅して,新たに二車線の道路トンネルをつくるものである。完成後は現在の供用線は下り線に,新しいトンネルは上り線になり,四車線道路が出来ることになる。


●供用線への影響を抑え,避難の安全を確保しながら

 野口所長はT期線から施工を担当している。「避難坑を拡幅する工事ですから,万が一施工期間中に避難坑を使用するような災害が発生した場合,まず避難者の安全を確保しなければなりません。そのため保安体制を整え,万全を期して施工を行っています。例えば供用線の避難連絡坑扉を開けると現場事務所でも警報が鳴る仕組みになっていますので,時々誤って開けられ夜中にとんでいったこともあります。また20m横を供用線が走っていますので,そこに影響が出ないように,発破の振動やクラックの変位を計測しながらトンネルの掘削を進めています。」


野口所長
野口英一所長

●リポート〜トンネルの切羽をみる

 現場事務所の車に乗りNATMで施工中のトンネルに入る。実は初めての経験である。外はどしゃぶりの大雨だが,中での作業は昼夜兼行で続けられている。坑口から約1km程は既に仕上げが終わっており普段見るトンネル内部と同じの様相を呈している。途中にセントルと呼ばれる覆工コンクリート用型枠装置がある。さらに奥へ進むと,吹付された凹凸ある岩盤と遠くに見える作業用の照明など施工現場の雰囲気が出てくる。いわば巨大な洞窟とでも表現できようか。進行方向右側には工事用車両が縦列で待機している。やがてトンネルの切羽に立つ。ちょうど3ブーム2バケット油圧ジャンボ機を使って,爆薬装填の準備作業中である。切羽の先には避難坑が通じており,その向こう側から切羽に向かって常に新鮮な風を送っているため,この辺りが一番通気状態が良好だそうだ。作業員が爆薬の装填を終える頃,トンネルの外に戻り発破を待つ。ドンという振動のあと坑口の防音扉が開けられ,やがて大型ダンプによるズリ出しが始まる...。

切羽の様子
切羽の様子
油圧ジャンボで発破作業をしている。中央は既設の避難坑



高知自動車道(四車線化)明神トンネル(その2)工事
<工事概要>
場所 高知県長岡郡大豊町小川〜馬瀬
発注者 日本道路公団
規模 総延長3,714m(うちその2工事2,300m ),発破掘削による補助ベンチ付全断面掘削工法(NATM)
工期 1999年1月〜2002年3月
施工 四国支店JV施工