特集:もうひとつの防災

リサイクル技術の災害廃棄物処理

東海集中豪雨災害廃棄物処理
3万6,200トンの水害ゴミ
 昨年9月11日から12日にかけて,名古屋市を中心とした東海地方が集中豪雨に見舞われた。台風14号の影響によるもので,2日間の積算降水量は多いところで約600mmに達したとされる。豪雨は多数の浸水被害を広範囲に与えたほか,堤防の決壊や崖崩れ,土石流などによる被害を及ぼした。そして浸水した建物からは,家電製品や畳といった大量の災害廃棄物が発生したのである。
 大府市や豊明市など2市7町では,廃棄物を共同で処理するために,名古屋港の埋立処分場跡地に一時保管した。当社は,この廃棄物の委託処理に当たることになったのである。その量は36,200tに上った。
一次保管場所に山積された災害廃棄物。機械で粗選別作業を行う
一次保管場所に山積された災害廃棄物。機械で粗選別作業を行う
設置されたプラント。ふるいや手で選別していく
設置されたプラント。
ふるいや手で選別していく
設置されたプラント。ふるいや手で選別していくふるいや手で選別していく

悪臭防止対策の薬剤散布
悪臭防止対策の薬剤散布
運搬車の脱泥機
運搬車の脱泥機


東海集中豪雨での災害廃棄物処理の流れ災害廃棄物処理の流れ
東海集中豪雨での
災害廃棄物処理の流れ
フジテレビ河田町旧本社ビル解体工事(1997年)。
フジテレビ河田町旧本社ビル解体工事(1997年)。
当社の「ゼロエミッション型解体」の先駆的事例である

ゼロエミッション工事は日常から

 廃棄物(エミッション)がゼロになることを目指す-国連大学が提唱した「ゼロエミッション」は,当社も早くから取り組んでおり,1998年には「ゼロエミッション型解体システム」を発表している。災害廃棄物処理で活かされた埋立廃棄物選別・資源化システムは,こうした取組みの一環である。
 新築工事については企画・設計段階から生分解プラスチックなどのエコマテリアルを採用するなど,廃棄物を出さない工法を選定しているが,さらに重要なのは解体時に発生する廃棄物の処理である。戦後まもなく建てられた建設物の多くがこれから解体期を迎え,また,既存建設物を更新するリニューアルが注目されるなかで,ゼロエミッション型の解体工事はますます重要視されているのだ。
 当社では日常の建設工事から,建設廃棄物の最少化を目指して,廃材の再資源化に取り組んでいる。「ゼロエミッション型解体システム」では,建物の解体時のマニュアルを整備して分別解体することで,廃棄物の95%以上をリサイクルできることを示した。
 こうした技術と経験の蓄積が,結果的に,自然災害の早期復旧支援に大きな役割を果たすことができたのである。逆に,廃畳や廃タイヤなどの災害廃棄物に特有な処理工事の経験もまた,日常の建設工事に活かし,「ゼロ」を目指したリサイクル技術を継続的に促進させることになる。
内装材の分別解体状況
内装材の分別解体状況
現場での分別状況
現場での分別状況





Chapter1 : 建設会社ができること

Chapter2 :「経験」を応用した無人化施工

| Chapter3 : リサイクル技術の災害廃棄物処理

Chapter4 : 復旧活動を最適化する情報システム