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第二東名高速道路 内牧高架橋(PC上部工)工事

最新鋭の構造・工法で経済性を追求
JR静岡駅より車で30分程北上する。一面に広がる茶畑が青々と輝く
内牧川盆地を横断するように,第二東名高速道路内牧高架橋の建設が進んでいる。
経済性を追求する新たな構造,それを実現する新しい施工法――。
最新技術の粋を集めた現場の現在(いま)を紹介する。

第二東名高速道路 内牧高架橋 内牧高架橋架設風景
工事概要
場所:静岡県静岡市内牧地内
発注者:日本道路公団 静岡建設局
基本設計:(株)日本構造橋梁研究所
詳細設計:当社土木設計本部
規模:
橋長―1,048.16m(上り線),1,024.16m(下り線)
幅員―全幅18.05m,有効16.50m(上下線共)
構造形式:21径間連続PC箱桁橋
断面形状:ストラット付一室箱桁
工期:2000年10月〜2004年1月
(横浜支店JV施工)
新しい構造形式と施工法
 内牧高架橋は,第二東名高速道路静岡I.C.〜藤枝岡部I.C.間の一部をなす, 21径間連続PC箱桁橋である。上り線と下り線の高架橋が別々に建設され,橋長は上下線ともに約1km,両側に路肩を持つ3車線道路の有効幅員は,16.5mに達する。
 この橋には,「ストラット付PC箱桁」と呼ばれる,国内では前例の少ない構造形式が採用されている。ストラットと呼ばれる斜めの支柱を等間隔に配して,張出し床版を支持するこの構造は,従来のPC箱桁に比較して,主桁底版の幅を小さくすることができる。その結果,主桁断面積が減少し,上部構造の軽量化が図れ,主桁を載せる橋脚とその基礎のスリム化も実現できる。経済性に極めて優れた構造形式といえる。
 施工面完成予想図。約3m間隔で配置したストラットで床版を支持する。においても経済性,合理性を追求し,「断面分割型プレキャストセグメント工法」と呼ばれる新工法を採用している。この工法は,主桁断面の一部をプレキャストセグメント(以下セグメント)として製作,先行架設して,残る部分を後から架設して断面全体を完成させるもの。当工事では,後から架設する部分を,場所打ちコンクリートで施工する。日本ではまだ前例のない施工法だ。幅員の広い橋の主桁断面すべてをセグメントで製作するとなると,大規模な製作・架設設備や巨大セグメントを仮置きする広大なストックヤードが必要となってしまう。様々な施工条件から,本工法が経済性・合理性の面で最適と判断された。
PC箱桁の断面比較(単位:mm)
セグメント16個を吊り下げる凄腕マシン
 7月下旬,現場は下り線のセグメント架設の最盛期を迎えていた。セグメントの架設には「スパンバイスパン工法」を採用。これほど大規模な橋の工事への導入は当社初だ。はじめに橋脚上のセグメント(柱頭部)を建設し,続いて橋脚間(1径間約50m)の主桁を構成する16個のセグメントを吊り下げて並べる。その後,プレストレスを導入して1径間分のセグメントを一気に一体化する方法だ。1径間の架設が終わると,その次の径間というように,順次架設していく。
 架設地点に隣接する第二東名高速道路の本線上の敷地が,セグメントの製作・ストックヤードになっている。セグメントを製作する型枠装置と運搬用の橋型クレーンを含む製作設備が2ライン整備され,1日2個を製作,最大147個の仮置きが可能だ。セグメントは,限られた敷地の中で一部2階建てに積み上げられて,架設の順番を待つ。
 橋型クレーンが作動を開始し,トレーラーにセグメントが積載される。18径間目のセグメント架設のスタートだ。重さ約60tのセグメントを載せたトレーラーが,既に架設を完了した約850mに及ぶ橋桁の上をゆっくりと走行し,架設現場へ向かう。トレーラーの運転も慎重だ。現場へ到着したセグメントを,架設桁と呼ばれる大きなマシンが吊り上げ,所定のポイントまで運搬する。セグメントを仮吊鋼棒にしっかりと吊り替え,1個のセグメントの仮吊り作業が完了する。地上約40mで60tものセグメントを吊り下げる作業に間違いがあってはならない。作業員たちが入念にチェックを繰り返す。
 こうして1径間を構成する16個のセグメントを吊り下げる作業に約1日半。続いて,吊り下げられたセグメントを,エポキシ樹脂で接着する。橋脚上に先行して場所打ちで建設されたセグメントと,エポキシ樹脂で接着されたセグメントとの間の目地部には,新たにコンクリートが打設される。目地部のコンクリートが硬化した後,柱頭部を含め1径間分のセグメントすべてを貫くようにPC鋼材を挿入し,緊張・定着する。こうして,1径間のセグメント架設は9日かけてすべての工程が完了する。
第二東名高速道路本線上の限られた敷地に,プレキャストセグメントが仮置きされている。 セグメント型枠装置に鉄筋カゴを吊り入れる。
「スパンバイスパン工法」でセグメントを架設。ダイナミックなマシンが青空に映える。
セグメントを載せたトレーラーは,架設現場へ向けバックで走行する。 架設桁がセグメントを運搬する。
スパンバイスパン工法
新たな施工段階へ向けて
 下り線のセグメント架設は順調に進み,本年9月末には完了する予定だ。次に控えるのは,ストラットの取付けと,張出し床版の場所打ち架設の作業だ。国内初の挑戦となる。現在,現場と本社機械部が連携し,安全性と作業性を兼ね備えた移動作業車の開発を進めている。
川崎所長 現場の川崎所長が思いを語る。
 「この工事が完成すれば,国内最高峰の橋梁技術の結集と言って過言ではないでしょう。我々もその意義を自覚し,工事に全力投球しています。しかし,何より大切なのは現場で働く人たちの安全です。これから高所での新たな作業が始まります。社員をはじめ作業員一人ひとりの健康管理,そして快く仕事ができる環境を整えることが,所長に課せられた最大の任務だと肝に銘じ,無事故無災害での完工を目指します」。
 緑が眩しいこの地に,最新の土木技術を結集した新たな橋が姿を現す――。その日を目指し,現場では人々が日々作業に邁進する。