特集:アップデートされる交通インフラ |
CASE-3 深夜の架け替え工事 |
工事概要 |
運行する鉄道の高架橋を架け替える 東京の都市再生の象徴として注目を集める汐留では,大規模な再開発のなかで立体交差化事業が進められている。ここで当社JVは,地下,地上道路および地下鉄構造物構築にともなう鉄道高架橋の改築工事を行っている。敷地は「汐留・シオサイト」のエントランス部分に位置し,JR東海道線の新橋駅〜浜松町駅間を結ぶ高架橋と東京都都市計画道路・環状2号線との交差部にあたる。完成後には,シオサイトの新たな顔として多くの人を招き入れるゲートとなる。 現在の高架橋はJR山手線・京浜東北線・東海道線の上下6線が通る,まさに首都圏の大動脈をなす鉄道の結節点。工事によって列車の運行を妨げることはできないこの現場では,鉄道の運行時間外のわずかな合間を縫って工事を進めなくてはならない。 工事は作業用構台の設置にはじまり,仮受け杭・土留め杭の打設,工事桁の仮設,高架橋の撤去などを経て,本設躯体を築造し,工事桁を撤去して完了となる。作業時間は終電が通った直後の1時30分頃から始発が走る明け方までの2時間半ほど。その間,線路は閉鎖(線閉)され,感電災害を防ぐための「き電停止」措置がとられる。当現場の指揮を執る永田敏秋所長によると,「線閉による列車遅延があれば,労務災害と同じように“事故”である」という。時間に対する厳しい姿勢がうかがい知れる。 この現場では工事桁(H型鋼)をSC構造の本設桁として利用することが,JR東日本として初めて試みられている。この桁は,工事桁下部に補強桁を取りつけて埋設型枠を設置した後,内部にコンクリートを充填し,本設桁とするものだ。実用化にあたり,養生期間中に電車走行で振動する条件下でもコンクリートと鉄骨との一体性が確保できるかが課題であった。そのため,JRの発注を受け,当社技術研究所で実証モデルによる施工性試験を行い,その結果,実用性を確認するに至った。現在は,新技術の実現に向けて着々と工事が進められている。 |
分刻みの更新作業 この現場では昨年,5回の「長大間合い」で桁の架け替えを行った。長大間合いとは,軌道上で工事を行うために,通常の列車運休時間を延長し,確保される時間のことで,土曜日の終電通過後から最も利用者の少ない日曜日の日中にかけて工事が行われる。 5回の長大間合いのうち,昨年5月17・18日に行われた山手線内回り・外回り両線の桁架け替え工事では,線閉時刻を日曜日の14時26分まで延長する大工事となった。これまで使用されていた既設桁を横移動し,できた空間に山手線2線分の工事桁を架設するというものだ。総勢400人の作業員が集まった桁架け替え作業は,深夜1時14分の線閉確認と同時に開始され,翌昼まで続けられた。 その間には,一部工事が行われた京浜東北線の軌道復旧を行うなど,すべての工程が分刻みのスケジュールで進められた。「限られた時間だからこそ,かえって集中力が持続できた」と永田所長は語る。現在では,通常の線閉間合いでの工事桁架設工事も終わり,既設のレンガ高架橋の撤去工事に移っているが,時間厳守の作業は変わらず続いている。 |
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東海道線新橋・浜松町間環状2号線交差部工事現場では,今年3月から工事中の都市景観に配慮した仮囲いを設置している。 仮囲いには,工事風景の写真や竣工イメージパースのほか,現場周辺の歴史的な写真なども掲示されている。かつての新橋・浜松町周辺がおさめられた写真のなかには,汐留に復元された旧新橋停車場駅舎の在りし日の写真などがあり,道行く人々のなかには足を止めてしばし見入る姿もあった。 夜になると写真がライトアップされ,長い仮囲い沿いに家路につく人たちへの防犯対策にも配慮されている。 |
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