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商都・大阪に築く高さ日本一の超高層タワーマンション
(仮称)KM複合ビル新築工事

江戸時代,商都・大阪の中心であった「北船場」と呼ばれる堺筋,高麗橋付近でいま,オフィス,ホテル,住宅,商業施設で構成される大規模再開発が進んでいる。
この再開発エリア(北浜リノベーションブロック)で,現在当社が施工しているのが,当社開発の「NewスーパーRCフレーム構法」を適用した超高層タワーマンション「The Kitahama Tower & Plaza 」。
地上約209m,完成すると住宅としては日本一の高さとなる。
完成予想パース
  (仮称)KM複合ビル新築工事
工事概要
(仮称)KM複合ビル新築工事
場所:大阪市中央区/事業主:三洋ホームズ,アートプランニング,エヌ・ティ・ティ都市開発,神鋼不動産,平和不動産,名鉄不動産,三菱電機ライフサービス,近畿菱重興産,ユニチカエステート,長谷工コーポレーション/設計:長谷工コーポレーション,三菱地所設計,日本設計,当社建築設計本部,当社関西支店建築設計部/用途:共同住宅,運動施設,店舗,診療所/規模:RC造(NewスーパーRCフレーム構法)一部S造(CFT構造) B1,54F,PH2F 465戸 延べ90,073m2/工期:2006年9月〜2009年3月
(関西支店施工)

大阪の繁栄を担った北浜
 地下鉄堺筋線北浜駅(大阪市中央区)周辺は,江戸時代,天下の台所・大阪の船場の入り口で「北船場」と呼ばれ,堺筋や高麗橋通りは,商いのメインストリートだった。緒方洪庵が開き,福沢諭吉などの著名人を輩出した「適塾」や戦前に建設された歴史的建造物も多く残る。
 近年,都心回帰の著しい大阪だが,この北浜もまた再開発によって,上質な都心のライフスタイルを実現する街へ変貌をとげようとしている。

「北浜リノベーションブロック」の総仕上げ
 北浜の複合再開発エリア「北浜リノベーションブロック」では,オフィスビル(当社施工)とホテル(他社施工)が既に完成し,現在,当社が施工中の「The Kitahama Tower & Plaza 」が再開発の総仕上げとなる。
 「The Kitahama Tower & Plaza 」は,旧三越大阪店の跡地で,地下鉄堺筋線北浜駅直結という好立地にある。三洋ホームズをはじめとする事業主10社の共同事業で,設計は,長谷工コーポレーションなど4社が担当し,共用部デザインは世界的に有名なインテリアデザイナーのジェリー・ビール氏が手掛ける。
 建物は住宅棟(Tower)と商業棟(Plaza)で構成され,住宅棟は地上54階,地下1階,総戸数465戸。商業棟は地上6階,地下1階でショッピング施設,医療施設,フィットネスクラブなどの複合施設となる。住宅としては日本一の高さ209.35mになる。
 「The Kitahama Tower & Plaza 」の構造は,一度計画決定された後,当社開発の「NewスーパーRCフレーム構法」に設計変更された。
 工期短縮とコストダウンを図る当社開発の「NewスーパーRCフレーム構法」(下記参照)なら工期を守ることができる。お客様により安全で柱・梁のない快適な居住空間を提供したいという当社の提案が受けいれられたのである。

高層階からは,大阪市内が一望できる。写真右手に見えるのは大阪城(2008年7月)
11階エントランスホール完成予想パース 立面図
29階ビューラウンジ完成予想パース

3世代100年住み継げる住宅を可能にする当社の「NewスーパーRCフレーム構法」

NewスーパーRCフレーム構法の概念図 建物の高さを誇るだけでなく,当社開発の「NewスーパーRCフレーム構法」が,多彩な間取り構成を可能にし,安心・安全の住まいを提供する。
 当社が豊富な実績を持つ当社開発の「スーパーRCフレーム構法」は,超高層建築でありながら,耐震性に優れ,柱・梁のない空間を実現,将来のリフォームにも対応できるのが特長。この「スーパーRCフレーム構法」に当社開発の高靭性繊維補強セメント複合材料(ECC:Engineered Cementitious Composite)を取り入れたのが当工事で採用した新架構「NewスーパーRCフレーム構法」である。この工事では建物中心部に配するスーパーウォール(コア壁)の41階以上にECCを用いたECC梁を導入。ECCは,引張力に強く,従来のモルタルの200倍の変形に耐えられる。ECC梁が地震時に建物の振動エネルギーを吸収するため,従来,建物の頭頂部にニつの方向に設置するスーパービームを一方向のみとした。そのため,最上階での高所作業が減り作業員の安全の確保,工期短縮およびコストダウンにもつながっている。
過去の施工から学び,進化させる
 急ピッチで作業が進む現場に向った。現場では元気よく「足元よし!」と,指差喚呼の声が響く。取材の日は,54階中の38階を施工中で,31階に上がらせてもらう。
 東には大阪城が見え,北側には梅田,手前には水と緑豊かな中之島公園が広がる。南西方向に目をむけると大阪湾沿いのベイエリアが見える。素晴らしい眺望である。その中で,一際目をひく建物が,当社施工の超高層タワーマンション「クロスタワー大阪ベイ」(2006年竣工・高さ200m)だ。
 現場の片山慶教副所長によると,厳しい工期のため,この現場では,関西では初めて「スーパーRCフレーム構法」を採用した「クロスタワー大阪ベイ」の設計・施工を徹底的に分析して,さらなる改善の可能性を追求。何を真似て,進化させるかを検討し施工計画に反映させているという。
 高い品質を維持し,いかに工期短縮するか――。施工は「クロスタワー大阪ベイ」に習い,建物中心部のコア壁部分と,周辺の床スラブ部分を完全に分けた工程で進んでいる。緻密な揚重計画を立て,それを確実に実施する。一方で,「クロスタワー大阪ベイ」を経験した作業員を確保した。1フロア4日サイクルだった作業は習熟し,現在は1フロアを3日で躯体を構築するまでになった。
 住宅棟と商業棟のエリアを分けそれぞれの工程に影響が出ないようにした。また,コンクリートの場所打ちを減らし,周辺部材は極力プレキャスト化した。場所打ちせざるを得ないコア部分は,従来2階分で行っていたコア壁の柱を,最大3階分(約11m)で鉄筋の地組み・建込みを行った。コンクリート打設時間の短縮・省力化のため,配管の振り回し作業を補助する機械「ディストリビュータ」を導入し,従来の1.5倍を打設できるようにした。
 「商業棟の地下は,地下鉄堺筋線北浜駅へ続く通路と出口を供用したまま施工するなど,難しい点はいくつもあります。これからは,住宅棟頭頂部のスーパービームの施工が最大の課題となりますが,本社,支店の協力を得ながら,現場内のコミュニケーションをより活発にして,皆で力を合わせ乗り切りたい」と片山副所長。
36階の内観。当社の「NewスーパーRCフレーム構法」は階高を変えるなど多彩な間取りが可能
上部からの全景 外周梁プレキャストの建込み
配管の振り回しを補助するディストリビュータで打設時間の短縮を図る
感謝の心を持ち,仕事を楽しむ
 「クロスタワー大阪ベイ」に引き続きこの現場の陣頭指揮を執る片山豊所長は,「頭は冷たく,心は熱く。人との出会いを大切にし,仕事をさせていただいているという感謝の心を持つこと」がモットーだという。
 「歴史ある北浜という地で,大阪市内どこからも見えるこの建物の施工を担当していることに大きな喜びを感じています。短工期の大規模工事で苦労しているが,この建物の完成を心待ちにしているお客様がおられることを忘れず,施工のプロとして恥ずかしくない仕事をしていきたい。また,忙しい中でも全員が感謝の心を忘れずに,皆で仕事を楽しんでやりたい」と話してくれた。

 レトロな建造物と近代的なオフィスビルが融合する北浜。「The Kitahama Tower & Plaza 」の完成は2009年3月の予定である。
外観。9月末には最上階の54階まで躯体が上がる(2008年7月)
現場の皆さん。片山豊所長(前列左から5番目),片山慶教副所長(前列左から6番目)を中心とした素晴しいチームワークで短工期に挑む

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三越大阪店の基礎に使われていた双頭レール
解体工事で発見された双頭レール この工事が始まる前,解体された三越大阪店の地下から約500本もの「双頭レール」が発見された。このレールは,1872年に開業した日本初の鉄道,新橋〜横浜間に使われたものと同じものだという。三越大阪店は,大正初期の建物だが,当時,鉄道のレールが鉄筋の代用として建築物の基礎に使われていたらしい。
 現場の往西秀晃次長に話を聞いた。
「解体は他社施工で行われましたが,当社関西支店OB高嶋三郎さんに聞いたところ,1969(昭和44)年,高嶋さんが担当した地下鉄堺筋線北浜駅と三越大阪店を結ぶ地下連絡通路工事で,既に発見されていたそうです。今回,大量に出土したため,本工事のSMW山留壁の構築に影響がでましたが,高嶋さんにもアドバイスを頂きながら対応しました」。
 双頭レールは,片面が磨耗すると裏返して使えるI字型のレール。この歴史的な遺構は,博物館などに寄贈され,基礎柱の一部は大阪市立大学杉本キャンパスに産業遺産として展示されている。