[2007/12/14]

重要な生産装置を地震から守る

−部分免震システムをクリーンルーム内に初適用−

  • 重要な生産装置のみを免震化
  • 既存工場も短工期・低コストで改修可能

 鹿島(社長:中村満義)は、建物内の必要な部分だけを免震化する工法「部分免震システム」を電子デバイス工場のクリーンルーム内に初めて適用しました。化学物質(アウトガス)等の厳しい制約のあるクリーンルーム内でも問題なく設置でき、重要な生産装置の耐震安全性向上に貢献できました。

 近年、地震などの災害発生時に事業損失をいかに最小限にとどめ事業を継続していくか、いわゆる「BCP」への対応が多くの企業の経営課題となっています。とりわけ復旧に時間を要する装置や、高価な生産装置が多数設置されている電子デバイス施設では、大地震発生時の操業停止による事業損失が企業にとって大きな損害となることから、建物や設備を地震から守る技術が求められています。
 鹿島の部分免震システムは生産施設の必要な部分だけを免震化することができるため、建物全体の免震システムと比べて低コスト・短工期で導入でき、また、既存工場にも適用可能であることから、顧客の事業戦略に合わせた柔軟な適用が可能となります。

 このたび鹿島は部分免震システムを電子デバイス工場のクリーンルーム内に初めて適用しました。同システムはボールベアリングタイプの支承とオイルダンパーを組み合せた免震システムです。今回、生産装置を固定する9m×2.35mの架台下に8台の支承材と4本のオイルダンパーを配置し、地震時の揺れを1/5〜1/10程度低減できるよう設計しました。クリーンルーム内では、製品の歩留まり低下に影響を及ぼすアウトガスを発生させない事が課題でしたが、アウトガスの成分や発生量の事前検証、稼働試験を実施した結果、クリーンルーム内でも問題なく設置可能なことが確認されました。
 なお、同システムはクリーンルーム以外の床免震システムとして既に54件の実績があり、戸建免震システム(商品名:シンドCUT)としても2006年度までに346戸の適用実績があります。シンドCUTは2005年の日経新聞の『日経優秀作品・サービス賞』の優秀賞を受賞しています。

本システムの特徴は以下のとおりです。

●短工期・低コストで、既存工場の免震リニューアルに最適
 工場の建物全体ではなく、重要な生産装置だけを部分的に免震化するため、低コストかつ短工期で設置可能です。今回の場合、免震装置据付から上部架台構築まで約2週間で施工しました。鹿島の部分免震システムは、免震床の周辺部に揺れを吸収するための
25cmのクリアランスと、床面からの躯体鉄骨のわずか25〜30cmの空間があれば既存建物にも設置可能です。

クリーンルーム内の部分免震システム詳細 部分免震架台

(写真左)クリーンルーム内の部分免震システム詳細
(写真右)部分免震架台

●ボールベアリングタイプの免震床で地震力を1/5〜1/10に低減
 ボールベアリングは1個のボールで360°全方向に免震効果を発揮します。地震時に大径ボールが受皿の上を転がり地震力を低減させます。受皿にはすり鉢状の傾斜がついており、地震後は自動的に元の位置に戻るため、地震後のメンテナンスも容易です。

ボールベアリングタイプの免震装置 ボールベアリングタイプの免震装置

加速度比較 ボールベアリング免震床の地震応答解析

今後の展望

 本免震システムは新築工場だけでなく、既存工場に対しても非常に有効な技術であることから、半導体生産装置やFPD(フラット・パネル・ディスプレイ)生産装置の中でも特に高価な装置、復旧に時間を要する装置を地震から守る免震化技術として積極的に提案していく方針です。また、免震効果の確認や地震観測システムと組み合わせた地震動データ観測・分析も含めてシステム提供をしていきます。

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