[2008/10/07]

切羽より2m離れた位置から火薬を装填

〜切羽からの落石、肌落ちなどの労働災害から作業員を守る〜

  • 安全性の向上を主眼とした遠隔装填作業を実現し、確実な薬量管理・込め物装填を行い現行法規制をクリア
  • カートリッジ式含水爆薬を使用し小型で安価な遠隔装填を初めて確立
  • 北海道横断自動車道 大夕張トンネル東工事にて長期運用中

 鹿島(社長:中村 満義)は、日油株式会社(社長:大池 弘一、本社:東京都渋谷区)と共同で、山岳トンネルの発破作業で不可欠な火薬の装填を、離れた位置から遠隔操作で行えるシステム「Safe Charger」を開発し、実際のトンネル掘進で長期運用しています。

 山岳トンネル工事の発破掘削工程の火薬装填作業は、作業員が切羽から込め棒によって火薬を押し込む手装填が主流です。しかし、手装填では作業員が切羽に密着するため、肌落ち、落石等による災害が発生する恐れがあります。近年、装填作業における安全性の確保が重要視され、遠隔装填技術の開発が望まれています。現在、様々なタイプの装填装置、粒状やペースト状などの爆薬を装填するシステムが提案されているものの、一般的な装填方法として汎用化されるまでには至っていません。

 トンネル切羽近傍での労働災害の80%以上が切羽から2m以内で起こるといわれています。このことから今回開発したシステムは、切羽より2m程度離れた位置からの遠隔装填を可能とし、安全性の向上を図りました。
 装填機本体は、重さ7kg程度で全長40cm程度の小型かつ簡易な装置とすることで、導入コストの低減を図っています。また、ドリルジャンボなど現行の作業設備に適合しやすいシステムとし、操作方法を簡便にすることで装填作業者の負担軽減を図りました。
 使用する火薬はトンネル発破で汎用されている薬包径φ25〜30mmサイズのカートリッジ式(紙包装品)含水爆薬を使用するため、確実な薬量管理ができます。また、装填は親ダイ*1をパイプ先端に取付けて装薬孔に挿入し、続いて増(まし)ダイ*2、込め物*3の同時装填を可能とすることで現行法規制を遵守したシステムとしました。
 安全対策として、装填ホース及び装填パイプは導電性材料を採用して帯電防止を図り、さらに装填機、装填ホース及び装填パイプ内に潤滑水を流すことにより静電気による誤爆を防止し、親ダイに電気雷管の適用を可能にしました。また、駆動源は圧縮空気のみとし、圧送空気圧力は0.3Mpa以下で作動させることとしました。

*1親ダイ:発破において雷管を取り付けた薬包。
*2増ダイ:装薬の内、親ダイ以外の薬包。
*3込め物:増ダイに続いて装填する砂や粘土のこと。

システムイメージ図
システムイメージ図

上半装填状況
上半装填状況

下半装填状況
下半装填状況

本工法の概要

  1. 装填パイプの先端部を手元にたぐり寄せ、親ダイをパイプ先端に取り付けます。
  2. 装填パイプを装薬孔に挿入し、孔尻へ親ダイを押し込み、装填スイッチを押して(エアブローして) 親ダイを孔尻へセットします。

    装填パイプセット

  3. 余裕長分[装薬長(薬長×増ダイの本数)+込め物分20cm+約20cm程度]装填パイプを引き戻します。

    装填パイプ引き戻し

  4. 装填機の投入口から増ダイを装填分投入し、さらに込め物を投入して、一旦装填ホース内に所定本数を貯留させます。
    《一回に貯留可能な本数の目安は、φ30mmで150gの増ダイであれば、5本(750g)程度です。これ以上の薬量を装填する場合は、分割して装填します》

    増ダイ、込め物

  5. 装填ホースをしっかり持ち、装填スイッチを押して、エアーにより装薬孔へ増ダイと込め物を同時に装填します。

    スイッチ

工事概要

工事名 北海道横断自動車道 大夕張トンネル東工事
発注者 東日本高速道路株式会社 北海道支社
施工者 鹿島建設・熊谷組・みらい建設工業特定建設工事共同企業体
工事場所 北海道勇払郡むかわ町穂別長和
工事概要 延長 2,154m
NATM工法
工期 2005年 8月〜2009年 3月

今後の展望

 本システムは、いくつかの現場において実験を行い、基本的な性能について問題が無いことを確認しています。さらに、現在、北海道横断自動車道大夕張トンネル東工事において長期運用を行い実施工への適用を行っています。その結果、装填時間は従来工法と同等以下となることが確認されています。
 今後当社では、作業員の安全性が飛躍的に向上するこのシステムを積極的に導入し、火薬装填作業の更なる安全性の向上に努めていく方針です。

 

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