[2009/08/06]

コンクリートの収縮ひび割れを誘発する
新しい目地工法の開発
(KCJW工法:Kajima Contraction Joint Wall工法)

従来より小さな目地でより効果的にひび割れを集中させ、
内蔵プレス鋼板との併用で耐震壁にも適用可能

 鹿島(社長:中村満義)は、鉄筋コンクリート構造物の新しいひび割れ誘発目地工法を開発しました。従来の目地工法に比べ、小さい目地で同等以上のひび割れを誘発することが出来るため、ふかしコンクリートを減らすことが出来、目地幅が小さくなり、目地が目立たなくなるので、意匠上も効果があります。有害なひび割れを防ぐことで、耐久性の高い構造物となり、コンクリート量が減らせることにより省資源にもつながります。
 今回開発した新工法では、ノッチ目地と内蔵プレス鋼板を併用することにより、一般的なRC壁だけでなく、耐震壁にも適用可能です。
 2009年3月に、耐震壁に用いるための建築技術性能証明を(財)日本建築総合試験所から取得し、今後、鹿島設計施工物件はもちろん、他社設計の物件にも積極的に採用していく方針です。

開発の背景

 鉄筋コンクリート構造物のひび割れは、美観上の問題だけでなく、漏水を引き起こしたり、内部の鉄筋の発錆を促進するなど、建築物の機能や耐久性に支障をきたす原因となる場合があります。
 特に、壁は部材厚が薄いためにコンクリートの乾燥収縮による有害なひび割れが発生しやすく、壁に発生する有害なひび割れの防止対策として、一定間隔に台形形の目地を設け、その目地部に乾燥収縮ひずみを集中させてひび割れを誘発させる工法が一般的にとられています。しかし、十分なひび割れ集中機能を発揮させるためには、部材厚さの20%以上の目地断面欠損量が必要とされ、断面欠損量分だけ部材厚さの増し打ちが必要になるなど、コスト増の要因となります。近年、耐震壁の部材厚さが厚くなる傾向にあり、その対策が必要となっていました。
 そこで、今回、断面欠損量を低減でき、従来の目地工法と同等以上のひび割れ誘発性能を持った耐震壁にも適用できる新しい目地工法を開発しました。

台形目地をノッチ目地に置き換えた例

新目地工法の概要

 新目地工法は、外部目地の「ノッチ目地」と内部目地の「内蔵プレス鋼板」を組み合わせています。
 ノッチ目地は型枠に取り付けた樹脂製のノッチ材を使用して、コンクリート表面に深さ10〜20mm程度の切れ込みを入れた目地です。雨掛かり部でシールを施す場合は幅10〜15mm程度の目地棒と組合せることが出来ます。従来よりも目地幅が小さくなる上、台形目地の3分の2の深さで同等のひび割れ誘発効果が得られることが実験で実証されました。台形目地に比べ、美観上も目立たなく、コンクリート打放し壁にも有効です。
 内蔵プレス鋼板は、断面欠損を確保する目的で、耐震壁の内部に鋼板を設置します。鋼板部分は引張力を負担しないので、ひび割れが発生しやすくなります。また、鋼板にプレス加工をして凹凸をつけることで、せん断力を伝達しやすくし、耐震壁にも用いることが可能となりました。ひび割れ誘発上は断面欠損となりますが、構造実験により構造耐力の低下がないことを確認しています。
 また、内蔵プレス鋼板は、従来の台形目地工法との併用も可能で、コストや適用部位に合わせて使い分けることが出来ます。

概念図

外部目地と内部目地との組合せ例

本工法のメリット

  1. 厚い耐震壁のひび割れ対策が出来ます
     従来の目地では、目地幅が広くなり過ぎて困難であった厚い耐震壁の場合でも、断面欠損率の最低基準である全壁厚の1/5以上、ひび割れ誘発効果がさらに高くなる全壁厚の1/4以上を確保し、増し打ち(ふかし)コンクリートを減らすことが出来ます。

    台形目地をノッチ目地+内蔵プレス鋼板に置き換えた例

  2. 250mm以下の耐震壁や非耐震壁の増し打ち(ふかし)コンクリートを減らすことが出来ます
     ノッチ目地を用いれば台形目地の3分の2の深さとすることが出来るので、増し打ち(ふかし)コンクリートの量を低減出来ます。

  3. 目地幅を狭く見せることが出来ます
     雨掛かり部でシールを施す外部目地の場合、ノッチ目地を使うと目地幅を10〜15mm程度にまで小さくすることができ(深さも目地幅と同じにできます)、シール量も減らすことが出来ます。雨掛かりでない内部目地の場合は、目地幅を1mm以下に出来ます。

    同等の効果の台形目地とノッチ目地の例

  4. 目地部以外のひび割れ発生確率の低減が出来ます
     目地部以外のひび割れの発生確率が著しく低減出来ますので、補修箇所が減り、美観が向上します。

    内蔵プレス鋼板の施工の様子
    内蔵プレス鋼板の施工の様子

    内蔵プレス鋼板の施工の様子
    内蔵プレス鋼板の施工の様子

    内蔵プレス鋼板の施工の様子
    内蔵プレス鋼板の施工の様子

    ノッチ目地の施工事例
    ノッチ目地の施工事例  目地の幅は10mm程度

    目地底のノッチ部にひび割れが集中している
    目地底のノッチ部にひび割れが集中している

今後の展望

 2009年3月に本目地工法を耐震壁に用いるための建築技術性能証明を取得し、取得後は3件の工事に適用、合計16件に適用されています。
 本目地工法は鹿島の独自工法として、設計施工物件はもちろん、他社設計鹿島施工物件にも積極的に提案、採用していく方針です。
 鹿島では、この他、ひび割れ低減効果の高いコンクリート「クラフリート」を開発しており、また、ひび割れ発生リスクを予測し適切な対処法を選定する設計手法「SCRAD」とあわせて、ひび割れに対する様々なソリューションでお客様のニーズに対応しています。

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その後予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。