[2009/11/05]

電子デバイス工場の操業を継続しながら
装置レイアウト変更に対応可能な構造システムを開発

「ローコストなフレキシブル架構システム」と「床上から対応可能なsKs嫌振床」

 鹿島(社長;中村満義)は電子デバイス工場において、操業を継続しながら装置のレイアウト変更に容易に対応できる以下の技術を開発しました。
 一つは、初期投資を最小限に抑え、将来の嫌振・高剛性対応エリアへのレイアウト変更が容易な「ローコストなフレキシブル架構システム」。もう一つは、装置のレイアウト変更の際、嫌振床の設置・移動・復帰を、操業を中断することなく、床上からのみの施工で行える「sKs嫌振床」です。

開発の背景

 半導体や液晶パネルなど最先端電子デバイス工場においては、生産設備や生産技術が日々進化し、高度化しているため、工場の建設にあたっては、スピーディな意思決定が求められ、おのずと超短工期が求められています。既存の工場においても、生産品目の変更や生産量の増減を頻繁に行う必要があり、工場のレイアウト変更のニーズや、仕様の高度化にスピーディかつ的確に応えられることが求められています。特に、生産ラインにおいては、レイアウト変更や装置増設に対して、操業を継続しながらレイアウト変更を行いたいというニーズが不可欠な要素になっています。

ローコストなフレキシブル架構システムの開発

 そこで鹿島では、建物建設時は通常の仕様を満足する経済的な架構とし、将来、必要な部分箇所において嫌振・剛性条件の性能アップが容易に行えるフレキシブルな架構システムを開発しました。このシステムは顧客のニーズに対して、もっともローコストな構造架構形式を提案し、後に必要なエリアだけを高剛性エリアに変更することができるため、初期投資を大幅に抑えることが出来ます。
 クリーンルームは、「クリーンルーム階」と循環空気の通り道である「リターンプレナム階」で構成されています。リターンプレナム階には設備配管や補機と呼ばれる装置が多数設置されます。将来、レイアウト変更で、嫌振・剛性条件をアップしたい箇所にクリーンルーム階からリターンプレナム階へ「補強材」を追加するだけで、高剛性床に変更することが出来ます。この補強材の追加は床下設備配管の上部で行うため、配管に影響なく、操業を継続したまま施工できます。

生産装置移動前

生産装置移動後(補強材(赤色)追加)

 これらをまとめた架構選定メニューもあわせて開発しました。具体的には、顧客から微振動条件や剛性条件など5つの条件を確認するだけで、もっとも経済的な構造架構を提案するものです。構造架構を検討する際に5つの条件だけを確認することで、最もローコストな鉄骨部材が選定できます。

床上から対応可能な嫌振床技術の開発

 微振動を嫌う生産装置の床には嫌振床が必要となる場合がありますが、従来の嫌振床は独立架台のため、生産装置のレイアウト変更の度に操業を中断するか、あるいはメンテナンス等で装置が稼動していない特定の時期に嫌振床の設置、移動を行っていました。
 鹿島では既に、設置や移動が簡単にできる「Ks嫌振床」(特許取得済)を開発し、多くの実績がありますが、今回新たに、どこでも自由に嫌振床を設置できるだけでなく、すべての作業が床上からできるように改良した「sKs嫌振床」を開発しました。(特許申請中)
 従来の嫌振床は、補強のため、床下の設備配管の盛り替えが必要となり、結果、操業を中断したり、工期や費用が増加する場合がありました。今回開発した「sKs嫌振床」は、補助鋼材を短くし、グレーチング床の脚を設置したままの状態で施工できるよう改良することで、すべての作業が床上から行うことができるようになりました。嫌振床エリアの下部設備配管等の盛替えが不要となり、費用・工期共に削減することが出来ます。何より、操業を継続したまま装置のレイアウト変更が行えることが最大のメリットです。
 また、嫌振床への変更、復帰時にグレーチング床の脚の取り外しが必要ないため、騒音、振動、粉塵の心配がありません。

グレーチング床パネルを撤去した状態
グレーチング床パネルを撤去した状態
嫌振床を床上から設置している状況
嫌振床を床上から設置している状況

今後の展望

 電子デバイス施設のリスクとしては、「操業継続リスク」が最も重要視されており、日常のレイアウト変更を操業を止めずにスピーディに行えることは顧客の最大の要望事項となっています。
 電子デバイス分野は最先端の技術革新分野の一つです。鹿島では、既存工場の有効利用のニーズを含め、可変性の大きい次世代の電子デバイス工場を積極的に提案していく方針です。

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