鹿島(社長:中村 満義)は、外部からの環境振動の建物内への影響を、より精度良く評価するために、振動源から地盤・基礎・建物までを一体モデルとして解析できる予測評価法を開発しました。これにより、あらゆるパターンの振動問題に対して、簡易から詳細までの予測評価法が整備され、振動測定技術とこれまで培った豊富な対策技術とあわせて、振動に対する合理的な設計が可能となりました。
近年、工場の生産機器等の稼動や周辺道路での車両走行、また建設工事作業によって発生する振動が、建物の居住性や精密機器工場の嫌振機器に影響を与えて問題となることが増えています。このような問題は発生してから対策するのでは対策方法も限られ、多大なコストを要するため、設計段階で振動の応答を精度よく予測し、対策が必要であれば事前にその効果を予測して、かつ、現状に即した最も効果的な対策を実施することが重要です。
従来は、地盤・基礎モデルの応答と建物モデルの応答を別々に求めていましたが、今回、鹿島では地盤・基礎・建物を一体としてモデル化し、3次元解析で求める予測評価法を開発しました。これは、耐震安全性の評価で実績のある地盤・基礎・建物の一体解析手法をベースとして、環境振動分野向けに新規に開発したものです。今回の予測評価法では、建物のモデル化を詳細に行うことで、建物内のどの位置でも実現象に近い振動伝播特性を再現でき、応答を別々に求めるよりも精度の高い予測を低コストで迅速に行うことが可能となりました。
一体解析評価法を用いれば、例えば、工場の新設にあたって、既存の建物内の機械から発生する振動が、新設工場の稼動に与える影響を事前に評価することができます。
実際に、ある既存工場の設備機器の振動が、36m離れて建設される新設工場の2階床に設置予定の機器(嫌振装置)の稼動に与える影響が懸念された事例がありました。そこで、今回開発した一体解析評価法を用いて機器の設置予定位置での振動評価を行いました。その結果、当初の設計案では機器の振動許容値を満足することが難しいことが判明したため、対策についても本評価法を用いて解析した結果、柱本数を増やしスパン割を見直すこと等が振動低減のために有効であることが明らかになりました。この改良設計案が採用され、竣工後の測定では、振動許容値を満足することが確認されました。
このほか、本評価法と従来の評価法を合わせて適用することで、新設工場の稼動による振動の既存工場への影響評価、解体工事の振動の近隣居住地への影響評価、周辺道路を大型車両が走行した際の基礎の防振設計の検討などに用いることができます。これまでに18件の事例に適用し、本評価法の有効性を確認するとともに、合理的な設計に貢献しています。
生産施設の高密度化や生産品の高精度化により、工場の振動基準はますます厳しくなってきています。一方で、工場の早期稼動に向けて建設工期の短縮が求められています。
一体解析評価法を用いれば、建設前に環境振動問題を予測して合理的な振動対策の検討が可能であるため、リスクを事前に検討でき、その結果、工場の早期稼動に貢献できます。鹿島では、今回開発した一体解析評価法を含む環境振動予測・対策技術を活用し、最適な振動防止設計や施工法の提案を行うことで、建物の品質確保の一層の向上を図っていく方針です。
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