[2012/08/02]

帯電ミストによる浮遊粉じん除去システム「マイクロECミスト」開発

解体工事や盛土工事など粉じんが発生する現場への適用を目指して

鹿島建設株式会社
ホーチキ株式会社

 鹿島建設株式会社(社長:中村満義)とホーチキ株式会社(社長:根本健三)は、解体工事現場や土工事の現場などで発生する浮遊粉じんを効率的に除去することができる、帯電ミストによる浮遊粉じん除去システム「マイクロECミスト」を開発しました。これまで有効な回収方法が確立されていなかった空気中に浮遊した粉じんを、特殊なノズルで帯電させた水粒子をミスト状に発生させ噴霧することにより、浮遊粉じんを効果的に吸着し洗い落とす技術です。

【開発の背景】
 解体工事現場や土工事、トンネル工事などの現場では、大量に粉じんが発生する場合があります。粉じんの対策としては、発生源において集排管で集めるなどが考えられますが、一度空気中に飛散した粉じんを効率的に除去する技術は確立していませんでした。
 この度、鹿島とホーチキは、帯電させた水をミスト状に発生させて噴霧することにより、空気中に浮遊する粉じんを効率的に吸着できることをつきとめ、この効果を応用して、水を帯電させミスト状に噴霧することが出来る特殊なノズルを開発しました。室内試験(チャンバー内の噴霧試験)と現場試験(土工事の実現場)にて行った実験により、帯電なしのミストに比べて粉じんを劇的に除去することが可能であることを確認しました。
 鹿島とホーチキは、2005年に水幕による防火設備「ウォータースクリーン」を共同で開発し、水による防火設備の認定第一号を取得し、多くの実績を上げています。その後、様々な特徴的機能を有する帯電ミストに注目した研究を共同で行い、浮遊粉じん除去効果に着目した技術開発を行った結果、本システムの開発に至りました。

【本システムの概要】
 帯電ミストは、マイナスの電荷を載せた200ミクロン以下の微細な微粒子群で形成された微噴霧です。帯電ミストは、通常のミストでは除去困難とされていた10ミクロン以下の浮遊粉じんを静電気力により空間で確実にキャッチして落下させることが分かりました。さらに、帯電ミストを粉じん発生源に作用させると、粉じん粒子を覆うように立体的に水が付着して発生源全体をくまなく濡らす効果が確認され、粉じんの発生そのものを抑制する作用も有していることが分かりました。
 帯電というと危険なイメージがありますが、200ミクロン以下の微小な水粒子に静電気が載った状態のミスト噴霧で、人体に影響は全くなく、自然界でも滝などで発生するマイナスイオンと同じです。
 本システムは、特殊な帯電ミスト発生ノズルで帯電ミストを発生させ、大型ファンによる気流に乗せて噴射する「帯電ミストファンノズル」の他、ポンプ、水槽、電源等で構成されています。
 ノズル部での帯電ミストの生成は、原理的にはインクジェットプリンタのインクの噴出制御に用いられるものと同様の誘導帯電方式ですが、独自開発技術により、1分間に10リットルの帯電ミスト(電荷量約0.5mC/kg)を連続して安定的に噴射することができます。ノズル部で発生した帯電ミストがファン部で生成された空気流にのせて粉じん空間に送り込まれるという仕組みです。


マイクロECミスト発生装置
マイクロECミスト発生装置


【実験の概要】
(1)チャンバーを用いた帯電ミスト発生ノズル粉じん洗い落とし性能検証試験
 鹿島技術研究所内のドラフトチャンバーを用いて閉鎖空間を形成し、風等の外乱がない状況下にて粉じん洗い落とし実験を実施しました。その結果、ミストを帯電させることにより「関東ローム」「珪砂」「フライアッシュ」などの微細な粉じんに対して、帯電なしのミストと比較して2倍以上の減衰速度向上を確認しました。この実験により200ミクロン以下という最適な粒径を求めました。
ドラフトチャンバー室内試験結果
ドラフトチャンバー室内試験結果


(2)造成現場での粉じん洗い落とし実験
 造成現場の作業時に発生する粉じんを帯電ミストで抑制する手法についての性能検証を行うため、バックホウ作業時、ダンプトラック走行時にミストを噴霧し、それぞれで発生する粉じん濃度を計測する実験を行いました。ダンプ走行時、数回のバックホウ作業を想定して行った実験では、いずれの場合でも、帯電ミストによる粉じん除去効果が無帯電ミストに比べて著しく高いことが確認されました。ただし、横風の影響を受ける場合も多く見受けられたので、帯電ミストの噴射方法を更に検討することが課題となりました。


バックホウ作業時の帯電ミスト噴霧状況ダンプトラック走行時の帯電ミスト噴霧状況
バックホウ作業時の帯電ミスト噴霧状況ダンプトラック走行時の帯電ミスト噴霧状況

「バックホウ作業時粉じん」の濃度比較
「バックホウ作業時粉じん」の濃度比較



【今後の展望】
 浮遊粉じんについては、土木工事だけでなく、建築の解体工事現場において、作業環境保全はもとより周辺環境保全の観点からも対策が急務となっています。これまで、有効な対策が確立されていなかった空気よりも軽い浮遊粉じん(粒径10ミクロン以下)に、この帯電ミストが効果的なことが実証されたため、今後は造成工事やトンネル工事などの土木工事だけでなく、建築の解体工事にも積極的に提案していく予定です。


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