[2012/10/31]

100m超の超高層ビルを『鹿島カットアンドダウン工法®』で解体

ビルをそのまま下から解体し、究極の環境配慮と短工期を狙う

 鹿島(社長:中村満義)は、2008年に中高層ビルを下から解体する「鹿島カットアンドダウン工法」を実用化して鹿島旧本社ビル2棟を解体しましたが、さらに環境性能向上と短工期化を図り、今回100mを超える超高層ビル「りそな・マルハビル」(東京都千代田区大手町)の解体工事へ適用いたします。
 本工法は、いわゆる「だるま落とし」のようにビル外観をそのままにジャッキで建物を支持して下層階から解体する工法で、従来の工法に比べて騒音や粉じんの飛散を抑制するなど環境への影響を大幅に減少できます。常に地上付近で一定の作業を繰り返して行うため、環境対策設備や施工設備を盛り替える必要がなく、周辺環境への影響因子を一定の場所で確実に対策することができるとともに、高所作業削減による安全性向上に効果があります。

<鹿島カットアンドダウン工法>
<鹿島カットアンドダウン工法>
地上階で解体作業を実施し、フロアをジャッキダウン

 今回、りそな・マルハビル解体工事では新たに、地上1階部分に施工設備を集約・固定できる特長を生かして、粉じん飛散量や騒音の伝播、景観など、環境への影響を高精度の解析評価を実施し、最適な仮設計画にするとともに、騒音と逆位相の音で能動的に騒音を低減させるアクティブノイズコントロールや粉塵を効果的に抑える「マイクロECミスト」などの新技術も適用して周囲への影響をより減少させます。また、躯体1フロアを最短3日で解体する超短工期化により、客先から要望の多い、建替期間の短縮化も図っています。
<一般工法>

   <一般工法>
    最上階で解体

「鹿島カットアンドダウン工法」の概要

 本工法は、建物の1階の全ての柱部分に油圧ジャッキを設置して2階以上を支持し、最下層の躯体解体と建物のジャッキダウンを繰り返して、高層ビルを下層階から解体する工法です。

  (1) ジャッキの挿入(準備工事)
  (2) 梁・床の解体
  (3) 柱の切断、撤去(約700mm)
  (4) ジャッキ伸長、柱再支持
  (5) 全ジャッキの収縮(建物ジャッキダウン)

 この(2)〜(5)の作業を繰り返して解体を進めていきます。

鹿島カットアンドダウン工法

りそな・マルハビル解体工事の概要

 当該ビルは、高さ108m、24階建てという鉄骨造の超高層事務所ビルで、大手町という都心にあるため、特に周囲への影響を可能な限り排除する必要がありました。2012年9月から高層棟の柱40本すべてをジャッキに受けかえる工事を行い、10月24日から約3か月間で23フロアのジャッキダウン解体を行います。
 
りそな・マルハビル解体(鹿島カットアンドダウン工法)総合仮設計画図
りそな・マルハビル解体(鹿島カットアンドダウン工法)総合仮設計画図


100mを超える超高層ビル解体への適用

●耐震性の確保
 本工法はコアウォールと荷重伝達梁による耐震機構によって解体中も建物供用時と同様の耐震性を確保していますが、施工ステップごとの解析をより綿密に行うことで、さらに精度を向上させました。常にコアウォールに地震時水平力を伝達するメカニズムにより、ジャッキダウン中や柱切断時の耐震性を確保しています。
コアウォールと荷重伝達梁

 コアウォールと荷重伝達梁

●ジャッキシステムの性能向上
 今回の建物を支えるジャッキは揚力15,000kN(約1,500tf)と大型化し、同調性能やフェイルセーフ、フールプルーフをより向上させた制御システムも新たに開発。鹿島技術研究所などで最高22,500kNでの保持能力や動作、40台の同調性などを事前検証しています。


環境対策の向上

●粉じん飛散の抑制
 風の弱まる地上レベルで解体作業を行うことで、屋上から解体する従来工法と比較して粉じん飛散量を10%低減できます。本工事においては、更に、気流シミュレーションを用いて仮囲いの形状を最適化し、粉じん飛散量を最大49%低減します。加えて帯電させた水粒子をミスト状に発生させ噴霧することにより、浮遊粉じんを効果的に吸着させる、「マイクロECミスト」を適用します。
気流シミュレーション

    気流シミュレーション

●騒音・振動の低減
 解体に伴う騒音が地上部に集約され、多くの重機は上部を建物で覆われているため、外周の狭いエリアの対策を施すことで、ほぼ全面に防音対策ができます。屋上部での騒音発生作業が無いため、防音施設を飛散や落下のリスクの高い高層部に設けなくても、高層建物の多い都市部での近隣建物上階への騒音が防止できます。解体材を高所から落下させることが無いので、当然ながら騒音振動の発生が少ないことも特長です。本工事においては現場で使用する機器のエンジン音に対して、騒音を効果的に相殺するアクティブノイズコントロール(ANC)技術を使って低減させる試みも行います。
鹿島カットアンドダウン工法騒音伝搬シミュレーション

   鹿島カットアンドダウン工法騒音伝搬シミュレーション

●CO2排出量の削減
 解体工事におけるCO2排出量の大半は、機械・重機に使用する燃料です。「鹿島カットアンドダウン工法」は、解体作業が地上レベルで効率的に行われるため、従来工法に比べて重機燃料(軽油)消費量が少なくなり、CO2排出量を8.5%削減できる見込みです。また、稼働時の解体重機の燃料消費を把握し、CO2排出量をモニタリングします。
 また、コアウォール築造には省CO2コンクリートを採用し、コアウォール解体時には微小発破による切断工法である「鹿島マイクロブラスティング(MB)工法®」の適用に向けて準備を進めています。
CO2排出量の比較

      CO2排出量の比較


工事概要

工事名称  : りそな・マルハビル地上解体工事
工事場所  : 東京都千代田区大手町1-1-2
発注者  : 三菱地所株式会社・JXホールディングス株式会社
監修者  : 株式会社三菱地所設計
施工者  : りそな・マルハビル地上解体工事共同企業体
   (鹿島建設株式会社・株式会社NIPPO)
工期  : 2012年4月2日〜2013年1月31日(予定)

解体建物概要

竣工  : 1978年
構造  : 地上S造・地下SRC造
規模  : 地下4階・地上24階・塔屋2階
基礎  : 直接基礎
建物高さ  : 約108m
延床面積  : 75,413.90m2

参考ホームページ:「鹿島カットアンドダウン工法」HP 別ウィンドウが開きます


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