[2013/03/13]

杭頭半固定工法「キャプリングパイル工法®」の新型PCリングを開発

コスト削減と施工性向上を実現し、一般評定を更新

 鹿島(社長:中村満義)は、独自の杭頭半固定技術であるキャプリングパイル工法を改良し、(財)日本建築センターの一般評定を更新しました。今回の改良により、コスト削減、施工性向上、適用範囲拡大等を図ることが可能となりました。

背景

 1995年の阪神淡路大震災では、多くの建物の杭頭部に破壊事例が報告され、杭頭への応力集中を緩和する工法の開発が必要になりました。当社は杭頭半固定工法のキャプリングパイル工法を開発し、2002年12月に(財)日本建築センターの一般評定を取得しました。
 杭頭部の納まりの良さとコスト削減効果が評価され、その後10年で、当社のみならず社内外の300現場で20,000本を超える杭に適用され、杭頭接合法の一般工法として広く認知されてきました。

本工法の概要と特徴

 キャプリングパイル工法は、杭頭に接合部材(PCリング)を載せ、このPCリングから伸びた定着筋を建物のパイルキャップ部(いわゆるフーチング)と一体化します。これにより、PCリングを介して地震時に生じる上部構造からの地震力を杭に伝達させる構造となっていて、杭頭を半固定とすることで杭頭に集中する地震時の応力が緩和できるため杭材の損傷を軽減できます。このキャプリングパイル工法は、既製杭や場所打ち杭に拘らず全ての杭に適用でき、設計・施工が簡単で、品質も安定し、コストパフォーマンスに優れた工法です。

《経済性》
 半固定であることから地震時の杭頭応力が小さくなり、杭材を軽減出来るとともに杭頭応力を負担する基礎梁の応力と断面の低減が可能になるので、基礎躯体と掘削土量も軽減出来ます。地盤状況にもよりますが、一般的に杭頭固定の場合と比べて10%程度の基礎工事費を削減できます。


キャプリングパイル工法 杭頭固定とキャプリングパイル工法
写真1. キャプリングパイル工法  図1. 杭頭固定とキャプリングパイル工法

《安全性》
 杭頭を固定とすると想定以上の大きな地震時には杭頭が破壊する可能性がありますが、本工法では地震の大きさが大きくなると、杭頭の固定度が小さくなり、杭頭に生じる応力を低減する効果があるので、局部的な破壊を回避できます。

杭頭固定の場合の実験例本工法の実験状況
写真2. 杭頭固定の場合の実験例  写真3. 本工法の実験状況

《施工性》
 杭頭接合部材のPCリングを杭頭にセットするだけなので、シンプルで施工性が良く、確実に半固定性能を発揮できる杭頭接合法です。杭の定着筋と基礎梁主筋との干渉が少なく、納まりの良さが評価されています。

既成杭の場合場所打ち杭の場合
写真4. 既成杭の場合  写真5. 場所打ち杭の場合

今回の改良点

 数多くの実績を重ね、より施工性を向上させることとコストの更なる低減を狙い、以下の改良を行いました。

  1. PCリングの耐力配分の見直し

  2.  PCリングの定着筋が、パイルキャップや基礎梁鉄筋の配筋作業の障害になっていましたが、PCリングの鋼板リングを厚くすることで、定着筋の本数を減らし、長さも短くすることで、施工性を大幅に改善しました。

    従前のPCリング新型PCリング
    写真6. 従前のPCリング写真7. 新型PCリング

  3. 現場製作PCリングの導入

  4.  PCリングに関わるコストを削減するために、工場製作していたPCリングを現場で製作することができるように、現場製作用鋼製型枠(図2)を開発しました。これにより、製作費と運搬費を合わせて約4割のコスト削減を実現しました。
    現場製作用鋼製型枠
    図2. 現場製作用鋼製型枠


  5. 適用範囲拡大

  6.  最大杭径を大きくして対象物件を増やすことを可能にしました。(適用杭径を、既存杭では300〜1,000mmから300〜1,200mmに、場所打ち杭は、800〜2,000mmから800〜2,500mmに拡大しました。)
     また、当社で開発した引張力伝達可能なテンキャップパイル®工法の機能も統合しましたので(図3)、杭に引抜きを生じるような板状建築物や高層建築物も適用可能です。

    47階建の超高層免震集合住宅への適用事例テンキャップパイル工法
    写真8. 47階建の超高層免震集合住宅への適用事例   図3. テンキャップパイル工法
       (引抜き力抵抗用)

今後の展開

 杭頭接合法では、当社が先駆けとなり評定取得後10年で全国に展開を進め、数多くの実績を重ねてきました。このキャプリングパイル工法を用いた建物では東日本大震災においての被害はなく高い安全性が認められています。今後、適用案件をさらに増やし、地震による杭頭部の被害を更に軽減し、より安全安心な建物づくりに貢献してまいります。


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