鹿島(社長:中村満義)は、鹿島KIビルの一部を改修して、既存オフィスビルの省エネルギー・CO2削減のための改修工事のモデルとし実証実験を行ない、改修前と比較して50%の削減を達成しました。
当社は、経済産業省の掲げる2030年新築ビルのZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)化に先駆けて、独自の目標として2020年に設計施工案件の新築ビルZEB第1号実現を目指しております。同時に新築のみならず、様々な制約のある既存ビルのリニューアルによるZEB実現に積極的に取り組みました。今回の実証実験を通じて技術開発を更に進める予定です。
今回の実証実験に適用する技術については、スマート電力充放電制御は日立製作所(社長:中西宏明)と、アクティブ人感センサーによる空調・照明制御はオムロン(社長:山田義仁)などと共同研究体制を構築していました。さらにLEDを用いた明るさ感演出照明はパナソニック(社長:津賀一宏)、潜顕分離空調システムについては、ダイキン工業(社長:十河政則)の協力を得ております。また、運用段階の検証については、千葉大学大学院工学研究科の川瀬貴晴教授と産学連携のオールジャパン体制のもと、今回得られた知見を開示し、恒久的節電ひいては低炭素化社会の実現に貢献してまいります。なお、本研究はNEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の省エネルギー革新技術開発事業/実証研究(電力需給緊急対策)として実施いたしました。また、ZEB化改修の重要性が認められ2012年度グッドデザイン賞を受賞しています。
■工事場所
KIビル(東京都港区赤坂) 6階の1/2フロア、約500m2
《KIビル概要》
用途 | : 事務所 |
設計 | : KAJIMA DESIGN、MIDI綜合設計研究所 |
規模 | : SRC造 地下1階/地上9階 (A棟5F,B棟9F,C棟2F) |
延床面積 | : 29,468.67m2 |
完成 | : 1989年 |
本件での主な適用技術を示します。
太陽光発電による電力をリチウムイオン蓄電池にて充放電することで電力供給を安定的に行う「スマート充放電制御システム」をはじめ、「人密度検知人感センサーによる空調・照明制御」、「空気放射空調システム(湿度処理分離デシカント空調機と対流促進型空気放射)」、「グリッド天井対応の明るさ感演出LED照明」、「エネルギーのリアルタイム見える化」、「汎用タブレット端末を利用したオフィス環境の最適化アプリ」などの技術を導入しています。
適用技術全体システム図
本システムは、外気処理をヒートポンプデシカントパッケージ、室内負荷処理をビル用マルチ(高顕熱型)室内機にて行うものです。
室内機からの給気に天井面に設置したアルミ製のパンチング吹出口を使用することで、対流と放射を併用した空調を行い、冷房時は高めの設定温度でも冷涼な体感温度が得られることを意図しています。また湿度制御を外気処理系統にて単独で行い、冷房時は室内設定温度を高く、暖房時は低く設定しても適度な湿度を保持することにより快適性が維持され、省エネルギーを図っていることを実証いたしました。
空気放射空調システム概要
建物での消費エネルギーを効率的に制御するシステムとして、人密度検知人感センサを導入しました。概念図のように、天井面に設置したサーモパイル人感センサからの情報を元に、制御ゾーンごとの人密度を算出しています。今回は混雑・閑散・不在の3種類の人密度情報を設けました。この人密度検知情報は図に示した制御画面にて確認することができます。また、人密度検知人感センサでの検知情報を元に予め設定したエリアの混雑状況に応じた照明器具の調光や外気処理機の運転台数のコントロールなど、図に示すような制御システムを構築することで、従来の人感センサよりきめ細やかな検知範囲と精度を実現しています。
人感センサシステム概念図と制御画面
人の明るさの感じ方の概念を照明の配光計画に導入し、全体照度を低減させても明るさ感を損なわない照明器具を開発し適用しました。光源には省エネ効果の高いLEDを採用し、汎用性、展開性に配慮してグリッド天井対応型の器具を開発しました。天井面から吊下げたアクリル製の羽根は、器具本体からの入射光により羽根自体が発光する事によるボンボリ効果と羽根内部の反射光により天井面を照射する双方の効果により空間全体の明るさ感を向上させています。ベース照度300〜350lx程度でも空間全体では、明るさ感の高い光環境をもつ空間の実現を達成しました。
明るさ感演出LED照明器具と発光概念図
改修エリアの一次エネルギー消費量について、改修工事が完了した平成23年9月から平成25年1月までの各月で用途別(照明・コンセント・空調・太陽光発電)に計測結果をまとめました。なお、システム全体の評価は次世代電力マネジメントシステムの構築が完了した平成24年2月〜平成25年1月までの12ヶ月としています。
改修エリアについて、太陽光パネルによる発電量は、改修エリアの空調機器に供給されるため、空調でのエネルギー消費量から太陽光発電によるエネルギー分を除した形で示しています。
非改修エリアに関しては、空調エネルギーについて既存の空調システムが中央方式であるため、6階フロアで使用した蒸気・温水・冷水については個別に流量計を設置して、当該フロアでの消費量を算出しました。
結果として、改修エリアでの年間一次エネルギー消費量は1105.1MJ/m2、非改修エリアでは2272.4 MJ/m2であり、両者を比較した削減率は51.3%と当初の目標値の50%を達成しました。一般オフィスの統計値に対しても45%削減となっています。
特に照明システムにおける削減効果が大きく、非改修エリア年間合計で428.0 MJ/m2であるのに対し、改修エリアでは143.9 MJ/m2と、約66%の削減を達成しています。これは、導入したアンビエント用LED照明や人密度センサによる削減効果に加え、合わせて導入した明るさセンサを用いた調光による効果が得られました。
空調システムに関しては、導入したマルチ型パッケージエアコンと床置型ヒートポンプデシカントパッケージを組合せた潜熱顕熱分離空調システムにより、非改修エリア1233.6 MJ/m2に対して、610.5 MJ/m2と約50%の削減効果が得られました。
改修エリア/非改修エリア エネルギー消費量推移比較(平成24年2月〜平成25年1月)
オフィスにおける再生可能エネルギー利用の最適な電力マネジメントシステムを構築するための知見を得ることを目的に開発と検証に取り組みました。太陽光発電20kW、空調(室外機定格容量約20kW)、リチウムイオン蓄電池14kWhを組合せ、それらをZEB電源盤で集約しその電力情報をもとに充放電コントローラで制御を行いました。
システム概要
現在、当社では新築・改修合わせて2020年ZEB実現のためのロードマップを作成し、順次遂行しています。省エネルギー施策に合わせて、ストックのZEB化に対するニーズに積極的に対応するため、今後更なる技術開発による進化を図るとともに、実プロジェクトでのZEB化実現を目指してまいります。
プレスリリースに記載された内容(価格、仕様、サービス内容等)は、発表日現在のものです。
その後予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。