[2017/02/02]
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モニター上でブームを合わせるだけ!新しい削孔誘導システムを開発
唐丹第3トンネルの月進記録達成に大きく貢献
鹿島(社長:押味至一)は、株式会社演算工房(京都府京都市、社長:林稔)と共同で、山岳トンネルの効率的、かつ高速な施工を目的とした、ドリルジャンボの新しい削孔誘導システム「MOLEs」※(モールス)を開発し、岩手県釜石市で施工中の「国道45号 唐丹第3トンネル工事」に初適用しました。
本システムは、演算工房が保有する削孔ガイダンスシステムに、鹿島独自のスキャニング技術を付加し、モニターに実切羽面と削孔位置を表示するもので、オペレータに対して視覚的にわかりやすい誘導が可能となります。本システムを採用した唐丹第3トンネル工事では、所定の発破進行長(一度の発破で掘進する距離)を安定して確保することができ、2016年7月に記録した月進270mの達成に大きく貢献しました。
※MOLEs(Mograss Operate with Laser scanning Engine system)
開発の背景
山岳トンネル工事においては、工期短縮と余掘り低減のため、火薬装填用の発破孔の削孔にあたり、計画通りの削孔位置、削孔角度、削孔深さとなるよう、正確かつ迅速な削孔作業が求められます。従来この作業はオペレータの経験によるところが大きく、将来的には熟練作業員不足が懸念されています。
近年、ICTの進歩に伴い、削孔作業を支援するガイダンスソフトが開発されていますが、実体のない仮想の切羽面 (以下、「仮想切羽面」という)上でグラフィックを用いて削孔位置へと誘導するため、凹凸のある実際の切羽面とのズレが生じ、普及が進んでいません。一方でフルオート削孔が可能なコンピュータジャンボも開発されていますが、マシンそのものが高価なため、これも普及するまでには至っていません。そこで鹿島は、演算工房が保有する削孔ガイダンスシステム『MoGraSS』に、鹿島独自の3Dスキャナ技術を付加した新しい削孔誘導システムを開発しました。
誘導原理
今回鹿島が付加した機能は、切羽面をスキャニングし、実切羽の凹凸面を座標として把握した上で、計画発破孔の位置と削孔角度を正確に算出し、モニターに誘導ガイダンスを表示するものです。これにより、仮想切羽面での誘導で生じていた操作性の悪さや実切羽面とのズレはなくなり、正確かつ迅速な削孔作業が行えるようになりました。(特許出願中)。
MOLEsの概要と特長
今回開発した「MOLEs」は、光波測量によりジャンボ自身の位置や姿勢を把握するターゲット、切羽面の凹凸を把握する3Dスキャナ、切羽面とブームの動きを捉える動画カメラ、削孔誘導画面を表示するモニターから構成されています。従来の削孔ガイダンスシステムで必要であった電気式のモーションセンサ類が一切不要なため、振動や粉じん、削孔水による故障も少なく、汎用のドリルジャンボへの後付け設置も容易です。
唐丹第3トンネルでは、2台のドリルジャンボで切羽の左右をそれぞれ削孔していましたが、両方のドリルジャンボに本システムを搭載したところ、計画通りの削孔作業が行え、導入前に比べて左右の切羽での進行差が減少し、切羽面の凹凸も少なくなりました。また、1発破ごとの進行長も導入前と比較して約25%向上し、安定した発破進行長を確保することができ、月進記録の達成に大きく貢献しました。
今後の展開
本システムは、視覚的にわかりやすく、経験の浅いオペレータでも計画通りの削孔が可能となることから、今後の熟練作業員不足への対策にも大きく貢献するものと考えています。また、汎用型のドリルジャンボに簡単に後付け設置できることから、コストを抑えながら精度の高い掘進が行え、工期短縮にも寄与します。
鹿島は、本年1月より他のトンネル現場でも本システムの運用を開始しており、今後、複数の現場で本システムによる工期短縮と余掘りの低減効果について検証を行い、山岳トンネル工事の合理化に引き続き取り組んでまいります。
工事概要
工事名 | : 国道45号 唐丹第3トンネル工事 |
発注者 | : 国土交通省 東北地方整備局 |
工事場所 | : 岩手県釜石市唐丹町字大曽根~釜石市甲子町第13地割 |
工期 | : 2014年3月~2017年3月 |
施工者 | : 鹿島建設株式会社 |
工事諸元 | : トンネル延長2,998m 設計掘削断面積109.0~126.3m2 内空断面積94.9m2 |
釜石南IC 盛土量130万m3 |
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