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プレスリリース

[2017/09/06]

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切羽前方の湧水圧を連続的にモニタリングする「中尺スイリモ」を開発

山岳トンネルにおける中尺ボーリングを活用して100m先の湧水圧を正確に把握

 鹿島(社長:押味至一)は、山岳トンネル工事において、切羽から100m程度先までの地質等を調査する中尺ボーリングを活用して、切羽前方の湧水区間の水圧を連続的にモニタリングするシステム「中尺スイリモ(中尺ボーリング版 水(すい)リサーチ・モニター)」(特許出願中)を、鉱研工業株式会社(社長:末永幸紘、本社:東京都豊島区)と共同で開発しました。湧水圧の変動を正確に把握することで適切な対策工を事前に検討できるため、トンネル掘削における安全性の向上と、工程遅延リスクの低減が期待できます。
 本システムを、現在、神奈川県秦野市で施工中の「新東名高速道路 羽根トンネル工事」に適用し、100m先にある湧水区間の水圧を精度よくモニタリングできることを確認しました。

「中尺スイリモ」の概要

「中尺スイリモ」の概要

開発の背景

 山岳トンネル工事では、切羽前方の湧水に対して適切な対策工を事前に検討・実施することが、安全に工事を進める上で非常に重要です。特に大深度トンネル工事では、地表から観測井戸を設置することが困難なため、トンネル坑内からの水平ボーリングにより、事前に湧水の状況を把握することが必要です。
 鹿島は、超長尺ボーリングを活用して、切羽から500m以上先の湧水区間の位置や流量・水圧を把握するシステム「超長尺スイリモ」を2015年に開発し、精度よく把握できることを確認しています。しかし、より適切な湧水対策工を選定・実施するためには、100m程度の中尺ボーリングを活用した、連続的なモニタリングによる正確な湧水圧の把握が効果的です。湧水圧を正確にモニタリングするためには、パッカをボーリング孔の先端に確実に挿入し、周辺と分離した上で湧水区間の水圧のみを計測する必要がありますが、従来、パッカを挿入するためには削孔鋼管を一旦引き抜く必要があり、その際、孔崩れが起きる懸念があるなど、技術的に非常に困難でした。

※パッカ…孔内でゴムや布等を拡張させ測定区間を周囲と分離する装置

「中尺スイリモ」の概要と特長

 そこで鹿島は、先端にパッカがついた鋼管を削孔鋼管の中に通し、ビット(先端の刃)を押し出してパッカを確実に挿入する新たな機構を開発しました。これにより、削孔鋼管を一旦引き抜く作業が不要となり、孔崩れ等の懸念が解消されます。

パッカ用鋼管でビットを押し出す機構

パッカ用鋼管でビットを押し出す機構

「中尺スイリモ」の実施方法

  1. 中尺ボーリング孔の先端が湧水区間に到達するまでボーリング孔を削孔します。
  2. 削孔鋼管を湧水区間手前まで引き抜き、削孔鋼管の中にパッカ用鋼管を挿入します。
  3. ビットをパッカ用鋼管で押し出した後、パッカを拡張させることにより、湧水区間を周囲と分離します。手元に水圧計を接続し、先端の湧水区間の水圧をモニタリングします。

中尺ボーリングによる水圧モニタリングの実施手順

中尺ボーリングによる水圧モニタリングの実施手順

羽根トンネル工事での「中尺スイリモ」の試験適用

 新東名高速道路 羽根トンネル工事において、湧水が懸念される区間の湧水圧をモニタリングするため、本システムを試験的に適用しました。約120mの水平ボーリング孔を削孔した後、湧水区間の手前(82m地点)にパッカを設置し、約3ヶ月間にわたって水圧をモニタリングしました。
 本システムで得られた水圧データは、地質の不均質性により周辺の観測井戸の水位とモニタリング初期段階から数mの差があるものの、その後の水位変動と似た変動を示し、水位と水圧には相関関係があることから、水圧データが正確にモニタリングできていることを確認できました。

中尺ボーリングマシンでの削孔状況、パッカ挿入状況、モニタリング状況(羽根トンネル工事)

中尺ボーリングマシンでの削孔状況、パッカ挿入状況、モニタリング状況(羽根トンネル工事)

羽根トンネル工事 平面図

羽根トンネル工事 平面図

モニタリング結果(水圧を水位に換算したもので比較)

モニタリング結果(水圧を水位に換算したもので比較)

今後の展開

 鹿島は、超長尺・中尺など長さの異なる水平ボーリングを活用し、トンネルの掘削段階に合わせた湧水データ計測システム「スイリモ®」の開発を進めています。
 今後も、高い湧水圧が予想される山岳トンネルにおいて、「スイリモ」を積極的に活用して、水圧を事前に正確に把握し、適切な湧水対策工を選定・実施することにより、トンネル工事における安全性のさらなる向上を目指してまいります。

工事概要

工事名  : 新東名高速道路 羽根トンネル工事
発注者  : 中日本高速道路株式会社 東京支社
工事場所  : 神奈川県秦野市
工期  : 2013年7月~2018年8月
施工者  : 鹿島建設株式会社・株式会社熊谷組 新東名高速道路羽根トンネル工事特定建設工事共同企業体
工事諸元  : トンネル施工延長 上り線2,901m下り線2,876m、掘削工法 NATM掘削

※参考
山岳トンネルの切羽前方の湧水データを高精度に計測する「スイリモ」を開発 別ウィンドウが開きます
(2015年11月24日プレスリリース)

プレスリリースに記載された内容(価格、仕様、サービス内容等)は、発表日現在のものです。
その後予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。

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