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環境保全技術

動植物・環境モニタリングシステム
「いきものNote®

クラウドサーバを用い効率的に動植物データを一元管理

建設工事においては、工事区域とその周辺の動植物や自然環境のモニタリングや保全対策の重要性がますます高まっています。工事の進捗に伴い、日々地形等の状況が変化するため、継続的なモニタリングを行い、実施している環境保全対策を最適化する必要があります。

動植物を中心とした環境モニタリングでは、動植物の写真や調査時刻、分布地点といった情報が必要になりますが、これまではそれぞれの記録方法や媒体が異なり別々に管理していたために、データを一元管理し、わかりやすく表示するには手間と時間、そして、環境の専門知識や長年の経験が必要でした。

そこで鹿島では、iPadを用いて効率的かつ精度よく動植物の写真データや位置情報を記録し、電子地図上へマッピングできる「いきものNote」を開発しました。

※iPadは米国Apple,Inc.の登録商標です。

特許出願中
平成27年度ダム工学会賞 技術開発賞

図版:いきものNote

キーワード

生物多様性、環境保全、スマートデバイス、GIS、ダム

特長・メリットココがポイント

「何が・いつ・どこで」が簡単に収集可能

環境パトロールの際に、専用アプリをインストールしたiPadを携行した社員が現場でとらえた動植物の写真をiPad内蔵のカメラで撮影すると、写真データとともに、撮影された時間及び位置データ(緯度経度データ)が自動保存され、地図画面上にわかりやすく表示されます。

図版:「何が・いつ・どこで」が簡単に収集可能

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クラウドサーバに保存され、
効率的に蓄積、検索も容易

取得されたデータは、クラウドサーバに転送・保存されるため、現場担当者のみならず、発注者や本社担当者などと容易に共有することができます。これにより現場の環境対策を多くの専門家で支援することができます。また、ベースマップを現場で使用するCAD図面等を使用することで現場での利便性が向上し、CIMとの連携も容易に行うことができます。

図版:クラウドサーバに保存され、効率的に蓄積、検索も容易

施工中のダム現場で環境モニタリングに適用、有用性を確認

本システムを適用したダム現場では、現場周辺の9か所のビオトープを整備し、工事中の動植物の回復に必要な基盤を再構築するため、現況把握と対策が適切に機能しているかを本システムで確認、有効性を確認しました。

図版:五ケ山ダムで環境モニタリングに適用、有用性を確認

将来はCIMとの連携や災害時対応なども視野に

写真データを簡単に地図にマッピングできることから、環境モニタリングだけでなく、例えば災害時の被災調査などにも威力を発揮します。また、今後はCIMとの連携を進めることで情報の蓄積や共有をさらに高度化・合理化していくことにしています。

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適用実績

図版:五ケ山ダム

五ケ山ダム

場所:福岡県筑紫郡那珂川町

工期:2012年6月~2018年3月

発注者:福岡県

規模:重力式コンクリートダム、
堤高102.5m、堤頂長556m、
堤体積93.5万m3

学会論文発表実績

  • 「スマートデバイスを使ったダム建設工事における自然環境保全対策管理と保全効果」,第69回土木学会年次学術講演集,Ⅵ部門,633-634,2014年
  • 「iPadを使った環境モニタリングシステム”いきものNote”」,土木建設技術発表会2014概要集,126-131,2014年
  • 「ダム仮排水路工事における環境保全対策工の管理と発生材の生態系保全対策資材への活用」,第70回土木学会年次学術講演集,Ⅵ部門,565-566,2015年
  • 「スマートデバイスを用いた動植物・環境モニタリングシステムのダム工事への適用」,平成27年度ダム工学会 研究発表会・講習会講演集,1-5,2015年

ビオトープ創生技術

野生生物の生息できる空間を創生する技術

ビオトープ(biotop)は学問的には「特定の生物群集が生息する単位空間」と定義されています。これは、ある特定の生物だけではなく、それをとりまく様々な生物が共に自然に生息できる環境(生態系)を備えた空間を意味しています。ビオトープを創生することにより、市街地にも自然環境を持ち込み、野生生物の生息環境を創り出すことが可能になります。開発等により、生息環境が失われる希少生物等に対して、新たな生息環境を提供するミチゲーション(環境影響軽減)の一つとしても重要な技術で、生物多様性保全に役立つ技術です。自然観察や環境教育の場、人々のやすらぎの場を提供することも可能です。

図版:ビオトープ池の例

ビオトープ池の例

キーワード

ビオトープ、生態系、ミチゲーション、生息環境、生物多様性、希少生物、環境教育

建設工事で技術適用する際の留意点

  • 周辺地域を含めて、気候、地形、植生、動植物相などを十分に調査し、ビオトープ創生後の利用、維持、管理等も考慮した最も効果的なビオトープ計画が必要です。
  • 目標となるビオトープにあわせて、多様な生物が生息できるように多様な環境が必要です。
  • 野生の植物を植えたり、野生動物を放すこともありますが、その場合には、生物多様性に配慮し、その地域にもともと生息している動植物に限定し、周辺の自然の生態系を乱すことがないように十分な配慮が必要です。
  • ビオトープは造成が終わった段階が出発点です。ビオトープとしての機能が発達するのには時間がかかる場合もあります。ビオトープの変化を継続的に調査して、目標のビオトープに合うような維持・管理が必要となる場合もあります。

図版:創生後のビオトープにおける水生動物種数の変化

創生後のビオトープにおける水生動物種数の変化

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特長・メリットココがポイント

生物多様性の保全や環境教育に貢献

  • 市街地を中心に急速に失われつつある自然を呼び戻し、貴重な野生生物の生息場所を提供し、生物多様性保全に貢献します。
  • 人々に自然と触れ合える安らぎの場を与え、自然の仕組み、大切さを学ぶ環境教育の場としての利用も可能です。

図版:ビオトープに生息する水生動物の例

ビオトープに生息する水生動物の例

地域全体の自然環境の改善にも有効

  • 1つ1つは小さなビオトープでも、地域の中の複数のビオトープのネットワーク化により大きな効果を上げることができます。既存の調整池等のビオトープ化も可能です。
  • ビオトープ化により、複雑な生態系が成立し、池水の水質が良い状態で安定する効果もあります。

図版:ビオトープ化工事前後の池水水質変化の例

ビオトープ化工事前後の池水水質変化の例

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適用実績

図版:ガーデンプラザ新検見川ビオトープ

ガーデンプラザ新検見川
ビオトープ

場所:千葉県千葉市 

竣工年:1996年5月

発注者:鹿島

規模:ビオトープ面積約500m2

学会論文発表実績

  • 「ビオトープの研究(その1)─実験ビオトープの水生動物相─」,鹿島技術研究所年報, Vol.45,1997年
  • 「ビオトープ出現動物の生活史段階と空間利用」,土木学会関東支部技術研究発表会講演概要集, 25巻,Ⅶ-16,1998年
  • 「水辺ビオトープにおける水質環境と水生動物相の変化」,土木学会関東支部技術研究発表会講演概要集,25巻, Ⅶ-17,1998年

ホタルビオトープ

地域の自然環境・生態系に配慮した建設工事

鹿島はホタルやトンボ、カエルなど、地域の自然環境を象徴する種を守り、育てる工夫を行っています。

様々な生き物が持続的に生息し続けるためには、土壌、植物、水、日照、地形など多様な条件のバランスのとれた環境づくりが不可欠です。場所に応じた環境づくり、そしてホタルのような地域の財産を大切にするために、ビオトープの創出や環境配慮型施工などに取り組んでいます。

鹿島はホタルが自然に生息できるホタルビオトープの創出等を通じて、多様な生態系の保全・形成を目指しています。

図版:ホタル配慮ビオトープ事例

ホタル配慮ビオトープ事例

図版:ホタル水路事例

ホタル水路事例

キーワード

ホタル、湿地、水田、ビオトープ、生態系
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特長・メリットココがポイント

ホタル環境調査

重要な生息環境の保護が必要な工事、ビオトープなど新しい環境を作り出す工事を行う場合は、対象となる地域に関する環境情報の収集が重要となります。特に、専門家の目を通した踏査は、土地利用・緑地環境、餌動物・外来種(捕食)動物・水路・植物等のアウトラインや着目点の把握に不可欠です。

図版:調査状況(水路)

調査状況(水路)

図版:(左)カワニナ、(右)ゲンジボタル幼虫

(左)カワニナ、(右)ゲンジボタル幼虫

保全・整備計画の作成

計画地・周辺にホタル生息環境が存在している場合は、工事そのものの影響の回避・低減に努めています。

工事中は作業員・近隣への注意喚起とあわせ、施工上の配慮を講じることで、貴重な生物・個体群を消滅させません。

地域資源を活かして整備するビオトープ・水路をコアとした環境創出の計画作成を支援します。

図版:工事中の注意喚起ポスター

工事中の注意喚起ポスター

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ビオトープ整備

整備工事は刻々と変化する現地の環境条件に合わせながら、計画修正、保全対策措置を柔軟に行います。

整備中のみならず、終了後も、企業・地域・学校等と連携し、環境持続活動を支援します。

地域の状況に則した環境づくりと、地域との協働により、継続的な環境のポテンシャルアップが図られます。

図版:ホタルビオトープ(コケ護岸、多様な環境づくり)

ホタルビオトープ(コケ護岸、多様な環境づくり)

適用実績

図版:レンゴー福島矢吹工場

レンゴー福島矢吹工場

場所:福島県矢吹町

竣工年:2010年

敷地内(休耕田)を活用し、湧水及び井戸水を利用した湿地のビオトープ整備を行いました。郷土樹木の植栽や、豊かな生態系を育てる多自然型水辺をつくるとともに、周辺に生息するヘイケボタルを育てるプロジェクトを支援しています。

図版:共立女子第二中学校・高等学校

共立女子第二中学校・高等学校

場所:東京都八王子市

竣工年:2011年

学習素材としてもご活用されているホタル水路です。ゲンジボタル・カワニナ等を育てながら、鑑賞にもご活用いただけるようご提案しました。
周辺の豊かな自然環境と呼応したビオトープを併設し、多様な生物の生息にも配慮しています。

図版:サンデンフォレスト

サンデンフォレスト

場所:群馬県前橋市

竣工年:2001年

敷地全体を環境配慮型造成・配慮計画を行い、調整池内の多自然化、付替え水路の多自然化、既存林の整備、貴重植物移植等による環境保全・再生とともにホタル水路の整備を実施しました。竣工後10年たち、ゲンジボタルが飛び交う豊かな環境が形成されています。

環境配慮型ポーラスコンクリート工法

大きな空隙のポーラスコンクリートで
多様な生物の生息空間を創出

河川や調整池などの水辺環境は動植物の生息環境として重要な機能をもつことが認識されるようになり、環境保全効果に優れた多自然型護岸の採用が増加しています。ポーラスコンクリート(POC)は通常のコンクリートと異なり、動植物が利用可能な空隙を作ることができるため、多自然型護岸として利用されています。しかし、従来のPOCは使用する骨材(または空隙)が小さく、動植物の生育環境としては不十分でした。

鹿島は、農研機構農村工学研究所、住友大阪セメント、ケミカルグラウトと共同(官民連携新技術研究開発事業)で、従来のPOCより空隙の大きい「環境配慮型ポーラスコンクリート工法」を開発しました。

特許登録済

図版:ポーラスコンクリートの環境保全機能

ポーラスコンクリートの環境保全機能

キーワード

ポーラスコンクリート、多自然型護岸、生物多様性、生息空間

施工手順

一般的な現場における施工フロー及び長大法面を対象とした実際の打設状況を以下に示します。

図版:施工フロー

施工フロー

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図版:長大法面における打設状況

長大法面における打設状況

特長・メリットココがポイント

多様な生物の生息できる
大きな空隙と必要強度を確保

  • 20~40mmの骨材を使用することで、従来のPOCの2倍程度の空隙径を持つPOCが製造可能になりました。大きな空隙によって多様な生物が生息できます。
  • 特殊混和剤を使用することにより、大きな骨材でも護岸に必要な圧縮強度10N/mm2を確保できます。

自然土壌の充填が可能

  • 空隙が大きいため、アルカリの緩衝効果が高く安価な黒土などの自然土壌を充塡できます。

施工可能場所の拡大を実現

  • 各工程に施工規模に応じた施工機械を使用することで、小規模な水路から大規模な護岸まで現場打設が可能です。二次製品ブロックでの施工にも対応しています。

草刈作業の省力化

  • 通常の多自然型護岸に比べ足場の安定性があるため、草刈作業を省力化できます。

図版:POC断面形状(空隙を緑色で表示)

POC断面形状(空隙を緑色で表示)

図版:POC水路(施工4年半後)

POC水路(施工4年半後)

多様な水生昆虫や植物が良好に生育

  • 植生域・底泥域など環境の異なる部分に棲み分けを行い、RC水路に比べ様々な水生昆虫が生育しています。
  • 骨材粒径の小さい従来のPOCに比べて植物の生育が良好で、多様な植物が生育しています。

図版:施工後1年間の水生昆虫の分布例

施工後1年間の水生昆虫の分布例

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適用実績

図版:いさわ南部農地整備事業ポーラスコンクリート水路

いさわ南部農地整備事業
ポーラスコンクリート水路

場所:岩手県奥州市

竣工年:2003年11月

発注者:東北農政局

規模:施工面積250m2

図版:当間高原リゾート・リバーサイド自然観察池

当間高原リゾート・
リバーサイド自然観察池

場所:新潟県十日町市

竣工年:2002年10月

発注者:当間高原リゾート

規模:施工面積150m2

図版:忍野ため池

忍野ため池

場所:山梨県南都留郡

竣工年:2003年9月

発注者:山梨県

規模:施工面積約5,000m2

図版:新最終処分場調整池

新最終処分場調整池

場所:栃木県宇都宮市

竣工年:2004年4月

発注者:宇都宮市

規模:施工面積約1,500m2

学会論文発表実績

      
  • 「環境配慮型ポーラスコンクリートによる農業水利施設の多機能護岸工法の開発」,農林水産省,官民連携新技術研究開発事業,2001年-2003年
  • 「骨材粒径の異なるポーラスコンクリートの植物生育特性」,第60回土木学会年次学術講演会講演概要集,2005年
  • 「ポーラスコンクリート水路の生物生息環境の特性」,日本緑化工学会誌,32巻1号,2006年
  • 「大粒径ポーラスコンクリートに関する研究」,コンクリート工学年次論文集,29巻2号,2007年

希少水生生物保全技術

豊富なノウハウをもとに
着工前調査から施工後のフォローまでカバー

造成や伐採を伴う工事は、貴重種を含む動植物を育んだ豊かな自然環境のもとで実施せざるを得ないことがあります。特に、当該構造物が大規模であれば、工事範囲・期間が自然環境(地形・植生)に与える影響も低減する必要があります。

そのため、工事においては工事終了後の環境修復とあわせ、工事中の環境維持対策についても十分に配慮した施工を行っています。特に自然保護対策に関する配慮・工夫については、対象とする貴重種の絞込み、現地調査、それらの生態をはじめとした生物情報を加味した保全メニューを提案しています。さらに、工事終了時における貴重種の生息状況を確認することにより、工事中の環境維持対策の有効性検証や、より適した環境にすべく改善案の検討まで行っています。

図版:現地調査に基づく保全対策の提案、実施

現地調査に基づく保全対策の提案、実施

キーワード

生態系保全、iPad、環境保全、環境学習
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環境保全対策について

建設工事において近隣住民の環境保全に対する要求は高く、発注者側もこれを無視できません。魚介類が生息する水域に近接した土木工事では、セメント系排水の漏出による環境水のpH上昇、掘削・浚渫に伴う濁りの発生、重機による騒音振動など、水生生物に影響を与える因子が存在します。そのため、これらの生育区域内での工事では、移植や一時的な保護・退避の対策が可能な場合を除いて、工事による影響を最小限に留めるための工程変更・制限や流路の切り回し、作業道の仮設迂回など環境保全対策を実施しています。

これまでの検討対象種は多岐にわたっています。淡水魚類ではアユ、ヤマメ、タナゴ、ホトケドジョウ、トゲウオ、海水魚ではトビハゼ、トカゲハゼ、アワビ、アサリ、タイラギ、イセエビ、カブトガニ、アカテガニ、ワカメ、コンブ、ノリ、リュウキュウアマモなどに対する対策等を検討しています。「レッドデータブック」(環境省)、「日本の希少な水生野生生物に関するデータブック」(水産庁版)に掲載されている種は保護対象となりますので、その生態情報に応じた調査や対策ノウハウがポイントとなります。

図版:水生生物の生息場所保全対策の実行フロー

水生生物の生息場所保全対策の実行フロー

図版:淡水魚データベースの概念図

淡水魚データベースの概念図

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特長・メリットココがポイント

豊富な調査ノウハウと移植保全実績

  • これまでに対応の検討、調査を実施した水生生物は多岐にわたります。主な種類はアユ、ヤマメ、タナゴ、ホトケドジョウ、トゲウオ、トビハゼ、トカゲハゼ、アワビ、アサリ、タイラギ、イセエビ、カブトガニ、ワカメ、コンブ、ノリ、リュウキュウアマモなど、淡水魚から海水魚、水産生物にまで幅広い実績があります。

図版:工事予定地から保護した希少魚類ホトケドジョウ

工事予定地から保護した希少魚類ホトケドジョウ

図版:土砂流入防止柵

土砂流入防止柵

水生生物の生態情報、データベースから
最適保全対策提案

  • 「レッドデータブック」(環境省)、「日本の希少な水生野生生物に関するデータブック」(水産庁版)などに記載されている種類はもとより、要望があった種類についてその生態情報に応じた調査や対策を構築します。
  • データベースは、河川・湖沼工事等に付随して起こる魚類生息環境問題に対応する迅速な情報提供や環境問題に関する技術営業資料の基礎データとして利用することを目的に、日本産淡水魚類140種についての情報(形態・分布・生態・生活史・稀少性・画像等)を簡潔にまとめたものです。

図版:データベース

適用実績

図版:新東名高速道路佐奈川橋(仮称)

新東名高速道路
佐奈川橋(仮称)

場所:愛知県豊川市

竣工年:2012年

図版:福岡県五ヶ山ダム

福岡県五ヶ山ダム

場所:福岡県筑紫郡

学会論文発表実績

  • 「スイゼンジノリ培養条件の検討」,平成23年度日本水産学会春季大会講演要旨集,1319海藻,2011年
  • 「カワスナガニ幼生の室内飼育実験」土木学会第67回年次講演会,Ⅱ-109,2012年

カニ護岸パネル

生き物目線で護岸の形状を考えることで食物連鎖の復活を実現

防災・治水を目的とした護岸改修によって、生物の棲み処であった石積護岸は、コンクリートや鋼矢板護岸に姿を変え、生物たちの棲み処が失われる形となりました。

鹿島では、既存のコンクリート護岸でもカニが生息している実例に着目し、カニ護岸パネルを開発しました。

食物連鎖において海ではカニの存在が重要とされています。カニの好む棲み処は、湿潤した石積の隙間などです。そこでコンクリートを用い、カニが好む石積み機能を再現しました。

また本パネルには、カニだけでなく、ウナギやハゼが生息している様子も確認されています。

特許登録済
2011年日立環境省環境大臣賞
国土交通省 平成14年度自然創出に関する画期的技術

図版:カニ・ウナギ護岸パネル 断面イメージ

カニ・ウナギ護岸パネル 断面イメージ

キーワード

護岸、食物連鎖、生物多様性、湿潤、減災、カニ、ウナギ、ハゼ、カニパネル、KANIパネル®
改ページ

生態系に配慮したカニ、ウナギ、ハゼなどの多様な生息空間の創造

カニ護岸パネルは、カニが好む日光の照り返しが低い色調を採用するとともに、パネル表面をカニが歩行しやすい粗面にしています。また石積みを模した目地や、裏面に通じる貫通穴を再現することで、カニが安心して隠れたり冬眠できるよう配慮されています。また穴を好むウナギの棲み処、食物連鎖の基盤でカニの餌にもなる藻類が繁殖しやすい粗面など、身近な生物を守る様々な機能を有しています。

あわせて生物の多様性を育む潮だまりや干潟などを隣接して整備することで、多様な生物の生息空間を創造することができます。

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カニが生息している様子(動画)

図版:都市部におけるカニ護岸パネルと潮だまりを有する耐震補強護岸例

都市部におけるカニ護岸パネルと潮だまりを有する耐震補強護岸例

図版:ウナギやスズキの幼生が生息している様子

ウナギやスズキの幼生が生息している様子

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特長・メリットココがポイント

生き物の棲み処をコンクリートで創造

  • 実際に生息している石積みの護岸を参考に、コンクリート製のプレキャスト部材を製作します。
  • カニが歩ける凹凸の粗面と、隠れ場所としての深目地を入れ、照り返しが小さい色にしています。
  • パネルの色は、周辺の景観に合わせて、約10種類の色調から選べます。
  • 新設護岸だけでなく、既設護岸にも施工可能です。

図版:カニ護岸パネル

カニ護岸パネル

食物連鎖を意識した機能

  • 裏まで貫通する穴を設け、裏には棲み処や冬眠場所となるよう小石や土砂を充填しています。
  • 水生生物の生活空間を創出し、カニを要とする食物連鎖を復元することを目的とした生物共生護岸を再現します。
  • 護岸の生物再生は、沿岸魚介類の資源の保全・再生産にも寄与し、身近な内湾の再生につながります。

図版:カニが隠れている様子

カニが隠れている様子

人にも優しい護岸

  • 表面に深目地があるため、河川・運河などに誤って人が落ちたときも登ることができます。
  • 地震などで河川・運河周辺に避難した際に、パネルを登り降りすることが可能なので、そのようなニーズの場所にも設置され、減災に寄与しています。

図版:表面の深目地

表面の深目地

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適用実績

図版:芝浦アイランド南地区西側護岸整備

芝浦アイランド南地区
西側護岸整備

場所:東京都

竣工年:2006年4月

発注者:モノレールエンジニアリング

規模:護岸238m
鋼管矢板 
φ800 L=18m n=108本 φ500 L=12.5m 他 n=131本
鋼矢板VL 
L=13.5m他 n=52枚 他 
埋立工 7,390m3 土留擁壁 1式

図版:臨海・港湾

他にも多くのパネル納入・設置実績があります。

学会論文発表実績

  • 「環境保全・修復材 ─コンクリート護岸パネルの試み─」,土木学会,海洋開発論文集,第17巻,2001年6月
  • 「自然環境とコンクリート性能について」,コンクリート工学,Vol.45,No.5,2007年5月

地球にやさしく! 
サンゴ礁を蘇らせる「コーラルネット®

設置するだけで、サンゴが自然にふえる人工基盤
港湾・空港構造物周辺の環境創造としても活用

鹿島は業界で唯一、サンゴに関する研究開発を長年にわたって行っています。地球規模でサンゴ礁が消滅している原因の一つに、開発による細かい粒子が海底に堆積し、サンゴの子どもが着生しない現象があります。

コーラルネットは、網状構造のため、サンゴの着生を妨げる細かな粒子の堆積を防ぐと共に、外敵であるウニや魚類から守ります。また、基盤裏側にはサンゴが好んで着く石灰分を含む藻類(石灰藻)を増殖させます。

現在、沖縄県におけるサンゴの再生事業、港湾施設において適用し、サンゴの成育効果が確認されています。

2009年土木学会地球環境シンポジウム 地球環境技術賞
第3回いきものにぎわい企業活動コンテスト 審査委員特別賞
平成26年度土木学会賞 環境賞(Ⅰグループ)
特許登録済
NETIS OKK-150002-A

図版:コーラルネットを活用した港湾におけるサンゴの再生(イメージ)

コーラルネットを活用した港湾におけるサンゴの再生
(イメージ)

図版:慶良間諸島座間味島でのサンゴ再生プロジェクト

慶良間諸島座間味島でのサンゴ再生プロジェクト

キーワード

サンゴ、港湾、自然再生、臨海、環境
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サンゴ着生基盤「コーラルネット」の用途別タイプと仕様

コーラルネットの素材は、目的や場所によって自然分解性と不分解性の2タイプがあります。大日本プラスチックスと共同開発した自然分解性のコーラルネットは、自然環境に配慮したサンゴ礁再生を実現します。基盤の裏側に自然着生したサンゴは、岩盤などに移設して1年以内で活着し、6〜7年後には基盤は自然分解しサンゴだけが残る仕組みです。港湾などのコンクリート構造物に設置する不分解タイプの基盤は、ステンレスなど腐食の少ない素材で構成され、波や流れのある環境でも安定した設置ができます。

図版:自然分解樹脂製サンゴ着生基盤

自然分解樹脂製サンゴ着生基盤

図版:ステンレス製サンゴ着生基盤

ステンレス製サンゴ着生基盤

図版:慶良間諸島の砂礫帯における自然分解性コーラルネットによる枝サンゴ群集の再生 基盤設置から2年

慶良間諸島の砂礫帯における自然分解性コーラルネットによる枝サンゴ群集の再生 基盤設置から2年

図版:那覇港の港内側におけるステンレス製コーラルネットによるサンゴ群集の再生 基盤設置から3年

那覇港の港内側におけるステンレス製コーラルネットによるサンゴ群集の再生 基盤設置から3年

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コーラルネットの特長・メリットココがポイント

サンゴの着生・成育に最適な構造

  • コーラルネットは、網目状の構造であるため細粒分などのサンゴの着生を妨げる物質を堆積させません。サンゴは、はじめ基盤の裏側に着生し、構造上、光や流れが通り、魚やウニなどからの捕食を免れ成育します。
  • サンゴ着生基盤の裏側には、石灰分を含む藻類(石灰藻)が繁茂する特性があります。サンゴ幼生は、この石灰藻を好んで着生することが判っています。

図版:網状構造によるサンゴ着生基盤の特長

網状構造によるサンゴ着生基盤の特長

図版:基盤裏側に着く石灰藻とサンゴの幼生

基盤裏側に着く石灰藻とサンゴの幼生

軽量・施工性の良さ

  • 薄型、軽量のため運搬並びに施工が容易です。自然海域では鉄筋を使用して固定、港湾ではコンクリートへアンカーボルトにより固定します。
  • コーラルネットは、コンクリート、岩礁、砂礫底など、どんな場所でも簡単に設置することができます。

図版:(左)ダイバーにより基盤を設置(自然分解性コーラルネット)、(中)設置した基盤に自然着生したサンゴ、(右)サンゴの着いた基盤を設置して3年目 産卵による再生産が可能なサイズに成長

ダイバーにより基盤を設置
(自然分解性コーラルネット)

設置した基盤に自然着生したサンゴ

サンゴの着いた基盤を設置して3年目
産卵による再生産が可能なサイズに成長

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生育状況

2010年にコーラルネットを設置以降、基盤にサンゴが着生し、順調に成長しています。設置から4年後の2014年6月に本技術の適用により初めてサンゴの産卵を確認しました。

図版:設置時(2010年)

設置時(2010年)

図版:1年経過(2011年)

1年経過(2011年)

図版:2年経過(2012年)

2年経過(2012年)

図版:3年経過(2013年)

3年経過(2013年)

図版:4年経過(2014年)

4年経過(2014年)

図版:4年目の大潮に初の産卵を確認(2014年6月)

4年目の大潮に初の産卵を確認(2014年6月)

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自然分解性コーラルネットに自然着生したサンゴ(4年目)
サンゴが成長して岩に根付いた後、基盤は自然分解します。サンゴは海のゆりかご。海の生き物の住み家や産卵場所を提供し、海洋生態系の中で重要な役割を果たしています。

適用実績

図版:内閣府 実海域実験場提供システム 那覇港内サンゴ再生実験

内閣府
実海域実験場提供システム
那覇港内サンゴ再生実験

場所:沖縄県那覇港

適用期間:2011年3月〜現在実施中

港内側2地点の水深-3m、-5m、-7mに50センチ角ステンレス製着生基盤を設置。計20枚

図版:沖縄県サンゴ礁保全再生事業

沖縄県サンゴ礁保全再生事業

場所:沖縄県慶良間諸島、沖縄本島

適用期間:2012年4月〜現在実施中

事業者:沖縄県
(沖縄環境調査(株)、いであ(株)と共同実施)

規模:慶良間海域、沖縄本島海域の合計約20地点

図版:座間味島サンゴ再生プロジェクト

座間味島サンゴ再生
プロジェクト

場所:沖縄県慶良間諸島

適用期間:2008年〜現在実施中

発注者:座間味ダイビング協会との共同

規模:慶良間海域

学会論文発表実績

  • 「那覇港内におけるサンゴ再生(1)─港内物理環境とサンゴ被度の関係─」,日本サンゴ礁学会,第15回講演要旨集,2012年
  • 「那覇港内におけるサンゴ再生(2)─網状人工基盤の設置によるサンゴ着生効果─」,日本サンゴ礁学会,第15回講演要旨集,2012年
  • 「台風により崩壊したサンゴ礁地帯のスピード再生 ─生分解性網状基盤の活用─」,日本サンゴ礁学会第16回大会要旨集,2013年
  • 「港内のサンゴ生息地適性指標モデル(HSIモデル)の開発」,土木学会論文集B2(海岸工学),2013年
  • 「那覇港内における網状人工基盤を用いたサンゴ群集の再生」,土木学会論文集B2(海岸工学),2014年

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