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東日本大震災における鹿島の取組み

陸前高田地区 海岸復旧工事

「奇跡の一本松」の海岸を一日でも早く復旧する

7万本の松林の中でただ1本だけ津波に耐え抜いた「奇跡の一本松」で有名となった岩手県陸前高田市の高田地区海岸。ここでは岩手県内最大の海岸復旧工事が進められました。長さ約2kmに及ぶ二つの防潮堤を再整備するとともに、津波で被害を受けた海中の人工リーフを1,200mにわたって復旧する工事です。住民の命を守る防波堤が2016年12月に完成しました。

図版:イメージ

工事概要

高田地区海岸災害復旧工事

発注者
岩手県
工事場所
岩手県陸前高田市高田町宇古川地内
施工者
鹿島・佐武建設・明和土木・中澤組JV
工事概要
復旧延長1,872m、防潮堤工(第一線堤)1,768m、防潮堤工(第二線堤)1,872m、人工リーフ工1,200m、
水門工1基、陸閘1基、仮設桟橋工2か所、仮防波堤工2か所
工期
2013年3月~2016年12月
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完了のご報告

資材不足、膨大な物量との闘いの末、地域を守る堤防が完成

2011年3月11日、巨大な津波により流された松林、そして、人々の営み。震災から2年後の2013年から陸前高田地区の海岸復旧工事は始まりました。当時、被災地では深刻な資材不足に見舞われ、本工事でも石材と再生砕石が足りず全国からの海上輸送で調達。そのための荷揚げ用仮設桟橋2基と仮設防波堤を建設しました。厳しい自然条件の中、約2kmに及ぶ高さ12.5mの堤防工事は膨大な物量との闘いでした。地盤改良用の杭は約2万6,000本、現地発生土を利用した盛土は46万m3、その上に被覆されたコンクリートブロックは約5万個に及びました。現場では積極的に現場を公開し、地元の方々や近隣の小中学生、全国からの視察者を含む現場見学者は延べ5,000人以上に上りました。

工事開始時は副所長として、また、2015年10月からは所長として工事を率いた明本守正所長は「東北の震災復興に貢献したいと想うJV職員、協力業者が日本全国から集まり、陸前高田市民の生命を守る防潮堤を3年9ヶ月を掛けて、心を込めて作りあげました。粘り強い防潮堤の機能と景勝地である高田松原にふさわしい造形美を追求して細部にこだわりを持って施工しています。延べ5,000人を超える視察者が訪れる中、工事の重要性を認識し、高いモチベーションを持って丁寧に作り上げた職人魂を見て頂きたいと思います。工事にご理解とご協力を頂いた陸前高田の皆様に感謝するとともに、早期の震災復興を願っています」と語っています。

100年後も地域の人々の生活を守る堤防が誕生し、今後は砂浜と松林の再生が進む予定です。

図版:完成した第二線堤

完成した第二線堤

図版:浜田川水門(ドローンによる撮影)

浜田川水門(ドローンによる撮影)

図版:完成した第一線堤

完成した第一線堤

図版:完成した第二線堤の天端(手摺も当社の施工)

完成した第二線堤の天端(手摺も当社の施工)

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完成までの流れ

図版:完成までの流れ

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2つの防潮堤を再生し、松林公園を再整備

震災前「日本の渚百選」にも選ばれた陸前高田の松林と白い砂浜は、風光明媚な景勝地として全国的に名を知られ、多くの観光客や海水浴客でにぎわっていました。東日本大震災では海岸の防潮堤が倒壊・流失し、市庁舎を含む中心市街地も大きな被害を受けました。高田松原の名で親しまれていた松林も一本を除いてすべて流されました。残された一本の松は「奇跡の一本松」と呼ばれ、2013年7月に保存工事が完了しました。

この高田海岸で鹿島JVが手掛ける復旧工事は、海岸沿いの砂浜に接した形で第一線堤と第二線堤を整備します。第一線堤は震災前と同じ海抜3mで整備し、第二線堤は震災前の5.5mに対して12.5mと2倍以上の高さとなります。また、同じく津波で損壊した海中の人工リーフも震災前と同様に3基再整備するほか、浜田川水門も併せて復旧する計画です。

図版:津波に耐え抜いた「奇跡の一本松」

津波に耐え抜いた
「奇跡の一本松」

図版:完成イメージ図

完成イメージ図

図版:平面図

平面図

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図版:断面図

断面図

図版:工事完成イメージパース

工事完成イメージパース

図版:松原復元計画イメージパース(別途工事)

松原復元計画イメージパース(別途工事)

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進む2つの防波堤築造と水門工事

Column 工事完了を控え「防潮堤復旧工事への支援に感謝する会」開催

2016年10月28日、「防潮堤復旧工事への支援に感謝する会」が、高田地区海岸災害復旧工事現場内で行われました。これは、震災直後から岩手県に職員を派遣した大阪府並びに応援社員への感謝と、工事の施工とともに、延べ5,000名を超える視察者・見学者に対応してきた鹿島JVへの感謝の意を表するという位置づけで、発注者である岩手県沿岸広域振興局の主催で開催されたものです。会には、大阪府からの8名の応援職員を含め、岩手県関係者、JVや協力会社らの施工関係者を合せて100名近くが参加し、和やかな雰囲気の中行われました。

図版:式典の模様

式典の模様

会は、岩手県沿岸広域振興局・小向局長からの挨拶の後、鹿島JVの峯尾次長から工事の経過説明が映像を交えて行われ、3年半に亘る工事の経過を関係者一同で振り返りました。続いて、感謝銘鈑の除幕式が行われ、「おおきに大阪」と書かれた銘鈑が関係者の手により除幕されると大きな拍手が沸き起こりました。更に、JV構成各社に小向局長から感謝状が手渡され、土木技術の素晴らしさを広く伝え、地域のイメージアップに貢献したことへの感謝が述べられました。最後に鹿島・東北支店品川副支店長が施工者を代表して挨拶を述べ、参列者は3年半に及ぶ復旧工事に思いを馳せました。

図版:関係者らによる感謝銘鈑除幕の模様

関係者らによる感謝銘鈑除幕の模様 
銘鈑は防潮堤堤体に設置される

図版:鹿島東北支店・品川副支店長の挨拶

鹿島東北支店・品川副支店長の挨拶

感謝の会終了後、参列者はほぼ工事が完了した第二線堤を歩き、記念撮影を行いました。高田地区海岸復旧工事は2016年12月に完成を迎える予定です。

図版:第二線堤ウォークの記念写真をポストカードにして参加者に配布

第二線堤ウォークの記念写真をポストカードにして参加者に配布

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2016年1月

海側の第一線堤(T.P.+3.0m)は、被覆コンクリートブロックの設置工事がほぼ完了しました。陸側の第二線堤(T.P+12.5m)では、現地発生土を利用した盛土工が終盤に差し掛かっており、被覆コンクリートブロックの設置工事が最盛期を迎えています。浜田川水門工事は、2015年11月に躯体工事が完了し、今後は管理橋や護岸・護床などの付帯工事が行われます。工期は2016年12月の竣工に向けてあと1年を切っており、急ピッチで作業が進んでいます。

図版:全景

全景

図版:工事がほぼ完了した第一線堤

工事がほぼ完了した第一線堤

図版:第二線堤では、被覆コンクリートブロックの設置工事が進む

第二線堤では、被覆コンクリートブロックの設置工事が進む

図版:ドローンにより撮影した第一線堤と第二線堤の様子

ドローンにより撮影した第一線堤と第二線堤の様子

図版:躯体工事が完了した浜田川水門

躯体工事が完了した浜田川水門

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Column 現場見学者数は延べ3,600人以上

高田地区海岸復旧工事では現場見学会を積極的に開催し、地元の方々に広く工事の様子を見ていただくとともに全国各地から視察の方も多く訪れています。見学者の延べ人数は、受け入れ態勢が整った2014年2月から2016年1月までの2年間で、3,600人以上にも及んでいます。2015年は120件の見学会が開催され、約2,200人が現場を訪れました。見学者の方には、「奇跡の一本松」を背景とした記念写真と現場全景写真入りのポストカードを配布しています。ポストカードには、本ページへアクセスできるQRコードがついていて、見学者に好評です。また、現場事務所の玄関には2015年の視察見学者の皆さんの記念写真を掲示しています。

図版:見学者へプレゼントされるポストカードのサンプル

見学者へプレゼントされるポストカードのサンプル

図版:現場事務所の玄関への掲示の様子

現場事務所の玄関への掲示の様子

また、陸前高田市の小中学生を対象とした「夏休み現場見学ツアー」などでは、第二線堤に据え付けられるコンクリートブロックに見学者がメッセージを書くイベントが行われました。これは、明本所長(当時副所長)のアイディアで行われたもので、津波で失われた高田松原と砂浜の早期再生を願うメッセージなどが多く寄せられました。このメッセージ入りのブロックは第二線堤の人通りの多いスロープに設置される予定です。

図版:コンクリートブロックにメッセージを書き入れる陸前高田市立第一中学校の生徒たち

コンクリートブロックにメッセージを書き入れる陸前高田市立第一中学校の生徒たち

2016年、岩手県では「いわて国体」が開催され、陸前高田市はビーチバレーの会場となります。いわて国体の開催に向けて現場の仮囲いにPR看板を設置しています。夜間はライトアップしており、東日本大震災復興の懸け橋となる「いわて国体」を盛り上げています。

図版:夜間はライトアップされている「いわて国体」PR用仮囲い看板

夜間はライトアップされている「いわて国体」PR用仮囲い看板

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2015年2月

海側の第一線堤は、基礎となる鋼矢板と根固め工がほぼ完了し、被覆コンクリートブロックを設置する工事が行われています。第二線堤では、グラベルコンパクションパイル工法による地盤改良工事が進んでいます。グラベルコンパクションパイル工法とは、地盤内に砕石を柱状に造成することで軟弱地盤を改良する工法です。第二線堤全体で26,000本の施工を2015年2月に完了しました。更に、周辺地区の宅地造成工事で発生した土を用いて嵩上げを行う盛土工事が行われています。

図版:全景

全景

図版:被覆コンクリートブロックを施工中の第一線堤

被覆コンクリートブロックを施工中の第一線堤

図版:地盤改良工事を行う施工機械が並ぶ第二線堤

地盤改良工事を行う施工機械が並ぶ第二線堤

図版:周辺地域で発生した土をセメント改良しながら盛土工事を行う

周辺地域で発生した土をセメント改良しながら盛土工事を行う

図版:浜田川水門の工事も急ピッチで進む

浜田川水門の工事も急ピッチで進む

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2014年2月

2013年3月から工事が開始されましたが、仮設工事用道路等に使用する石材が地元管内で不足することがわかり、広く全国から調達することになりました。大量の石材は陸上輸送が困難であり、周辺の港についても災害復旧工事中であるため使用できず、関係省庁との協議の結果、海上輸送のための荷揚げ用仮設桟橋を2基、建設することになりました。また、外洋に面しているため、安定的に船舶を受け入れるための仮防波堤も併せて築造します。第1桟橋は2013年11月、第2桟橋は2014年2月に完成し、石材と砕石合わせて70万m3の搬入が本格化しました。

図版:仮防波堤設置工

仮防波堤設置工

図版:仮設桟橋稼働状況

仮設桟橋稼働状況

図版:第一線堤 鋼管矢板打設状況

第一線堤 鋼管矢板打設状況

図版:陸上部 盛土状況

陸上部 盛土状況

図版:海上工事の様子

海上工事の様子

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図版:全景

全景

Column 奇跡の一本松をモチーフにした看板

現場では、工事の内容をお知らせする看板とともに、奇跡の一本松をモチーフにしたイラストの看板を掲示しています。スローガンの文字は地元の陸前高田高校の書道部の生徒さんに書いていただいたものです。イラストをよーく見ると、何か文字が浮かび上がってきませんか?

図版:現場イラスト看板

現場イラスト看板

Column 地元の七夕祭りの早期再開を願って

高田松原の一本松をモチーフにしたイラスト看板に続き、新たなイラスト看板が完成しました。

第一弾の看板と同じくイラストレータの寺田佑子さんによる横10mにも及ぶ巨大な看板。陸前高田で受け継がれてきた3つの七夕をモチーフにした色鮮やかなイラストです。

陸前高田では、日本唯一といわれる海を舞台にした七夕で赤い短冊や五色のボンボリ等で、飾り付けられた船団が一斉に海へ繰り出して真夏の広田湾に華麗な絵巻の世界を広げる「海上七夕」をはじめ、「うごく七夕」、「けんか七夕」など3つの七夕が夏を彩っていました。イラスト看板は高田松原海水浴場の夏の風物詩となっていた「海上七夕」の早期再開を願って設置したものです。

看板は復興まちづくり情報館に隣接して掲示され、情報館に訪れる地元の方や観光客の方の目を楽しませています。

図版:横10mのカラフルな看板は、訪れた人の目を引く

横10mのカラフルな看板は、訪れた人の目を引く

図版:左から小友町の「海上七夕」、高田町の「うごく七夕」、気仙町の「けんか七夕」

左から小友町の「海上七夕」、高田町の「うごく七夕」、気仙町の「けんか七夕」

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