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東日本大震災における鹿島の取組み

富岡町 対策地域内廃棄物処理

避難指示区域内での廃棄物処理業務

福島第一原子力発電所の事故による放射性物質の影響が残る福島県において、避難指示区域内の廃棄物処理が環境省の事業として行われています。福島県富岡町では、町内で発生した津波がれきや除染作業に伴って発生した廃棄物等を処理するための施設が建設され処理が進められてきましたが、2018年12月、処理が完了しました。

図版:イメージ

MHIEC・鹿島・MHI共同企業体では、津波被災地である海岸沿いの仏浜、毛萱地区の約8.2haの敷地内において、破砕選別施設、焼却施設、保管施設等の仮設廃棄物処理施設の建設・運営・解体業務を行います。処理が完了したことを受け、施設の解体を行い、2019年10月、業務が完了しました。

受託業務概要

富岡町対策地域内廃棄物処理業務(破砕選別、減容化処理)

場所
福島県双葉郡富岡町大字仏浜、毛萱地区
発注者
環境省
実施者
MHIEC・鹿島・MHI共同企業体
(MHIEC:三菱重工環境・化学エンジニアリング(株))
(MHI:三菱重工業(株))
業務内容
仮設廃棄物処理施設の設計・施工、施設の運営、施設の解体
処理対象物
津波がれき、家屋解体廃棄物、片付けごみ※1、除染廃棄物 等
業務期間
2014年3月~2019年10月

※1 片付けごみとは、一時帰宅された住民の皆様による家の片付け等の際に廃棄せざるを得なくなった家財類です。

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完了のご報告

5年半にわたる約35万8,000トンの廃棄物処理業務が完了

2011年3月11日の東日本大震災により発生した廃棄物について、富岡町内で発生した津波がれきや除染作業に伴って発生した廃棄物などを処理する施設の建設、運営、解体撤去に関する業務をMHIEC・鹿島・MHI共同企業体で担当しました。

処理を行う廃棄物の中には放射性物質が含まれるため、施設内部を放射線管理区域に設定し車両・作業員とも二重扉から出入りを行う、建屋内部を負圧に保ち粉じんや放射性物質が外部に飛散・流出しないようにする等、様々な工夫を行い、厳重な管理のもと業務を行いました。津波がれき、家屋解体廃材、片付けごみ、除染廃棄物の4種類の廃棄物を、破砕選別施設と焼却施設の二つの施設で処理を行いました。処理量は破砕選別施設で約3年9か月の期間で約19万8,000トン、焼却施設で3年6か月の期間で約16万トンとなりました。

2014年3月から、10か月の施設建設、その後、4年近くにわたる処理期間、10か月の施設解体を行い、2019年10月に業務は完了しました。

図版:破砕選別施設、焼却施設、保管施設も解体されたヤード全体

破砕選別施設、焼却施設、保管施設も解体されたヤード全体

5年半に及ぶ業務を終えた鹿島の西村正夫所長は「業務を始めた当初(2014年)は富岡町全域が避難指示区域でしたが、2018年4月に帰還困難区域を除く約9割のエリアの避難指示が解除され、本業務が一定の役目を果たせたと実感しています。最後まで大きな事故やトラブルなく業務を完了できたのは、発注者のご指導や地元の理解、またJV構成会社や協力会社等多くの方々の努力のおかげであり、心より感謝申し上げると共に、今後の富岡町の復興を祈念しています。」と語っています。

図版:焼却施設解体の様子(2019年3月)

焼却施設解体の様子(2019年3月)

図版:焼却施設跡地

焼却施設跡地

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処理業務の概要

福島県内では、2011年3月11日に発生した、東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法「放射性物質汚染対処特措法」に基づき、国が対策地域※2内廃棄物の処理に関する計画を定め、その処理を進めています。

本業務では、富岡町の各所から津波被災地内の仮置場に集積された①津波がれき②家屋解体廃棄物③片付けごみ④除染廃棄物等の廃棄物を、破砕選別施設、焼却施設に運び込み処理を行います。選別された不燃物や焼却灰は保管施設で保管されます。

※2 廃棄物が特別な管理が必要な程度に放射性物質により汚染されている等、一定の要件に該当する地域(おおむね旧警戒区域・計画的避難区域に相当:11市町村)

図版:汚染廃棄物対策地域

汚染廃棄物対策地域

図版:ヤード地図

ヤード地図

図版:ヤード全体図

ヤード全体図

図版:業務の流れのフロー

業務の流れのフロー

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破砕選別施設

破砕選別施設では、仮置き場から運搬された廃棄物を、破砕機や振動ふるい機、また、手選別等によって可燃物や不燃物の各品目ごとに選別します。また、コンクリートがらや金属くずなどの再利用可能なものを取り出すことで、最終的に処分される廃棄物量を減らします。一日あたりの処理能力は約160t。施設全体を密閉性の高い大型テントで覆い、テント内を負圧に保つことで処理過程で発生する粉じんの外部への飛散を防止します。

選別後、可燃物は焼却施設に送られて焼却、不燃物は選別物保管施設などで保管します。

図版:破砕選別施設見取り図

破砕選別施設見取り図

建設の様子

図版:2014年11月撮影

2014年11月撮影

図版:2014年12月撮影

2014年12月撮影

図版:2015年1月撮影

2015年1月撮影

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破砕選別の流れ

図版:破砕選別の流れ

破砕選別施設内部の様子

図版:振動ふるい機

振動ふるい機

図版:土間展開手選別

土間展開手選別

図版:粗大可燃物破砕

粗大可燃物破砕

図版:ベルコン手選別

ベルコン手選別

図版:コンクリートがら破砕

コンクリートがら破砕

図版:破砕選別施設内部全景

破砕選別施設内部全景

処理完了

2015年4月から稼働を開始した破砕選別施設では、2018年12月までの3年9か月間の処理期間において、約19万8,000トンの処理を完了しました。2019年1月からは施設の解体のフェーズに移行しています。業務完了まであと約4か月となりましたが、処理期間と同様、周辺の空間線量率等のモニタリングを厳重に行いながら作業を行っています。

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焼却施設

焼却施設では、富岡町内の仮置場から運搬された可燃物や、破砕選別施設で選別された可燃物を焼却します。2基のストーカ式の焼却炉(焼却能力:500t/日)を用いて可燃物を焼却し、容積を5分の1~20分の1程度に減らすことができます。

焼却に伴って排出される排ガスはガス冷却室で急速に冷却されたあと、2段の濾過式集塵装置(バグフィルタ)で放射性物質が吸着したばいじん等の有害物を除去した上で煙突から排出します。また、煙突に放射性物質連続監視装置などを設置し、施設に異常が生じていないことを確認しています。焼却灰は薬剤等を添加し、安定化させたうえでフレキシブルコンテナに封入します。

焼却施設も施設全体を密閉性の高い大型テントで覆い、テント内を負圧に保つことで、処理過程で発生する粉じんの外部への飛散を防止します。

図版:焼却施設見取り図

焼却施設見取り図

建設の様子

図版:2014年11月撮影

2014年11月撮影

図版:2014年12月撮影

2014年12月撮影

図版:2015年1月撮影

2015年1月撮影

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焼却処理の流れ

図版:焼却処理の流れ

焼却処理施設内部の様子

図版:可燃物の破砕

可燃物の破砕

図版:ごみピットへの投入

ごみピットへの投入

図版:焼却炉

焼却炉

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処理完了

また、焼却施設においても、2015年4月から処理を開始し、破砕選別処理施設からの可燃物やその他家屋解体廃棄物や除染廃棄物の可燃物等、約16万トンの焼却処理を2018年8月までに完了しました。焼却施設も解体工事が進んでおり、日本最大級である6m3クラスの解体重機を用いて解体作業を行っています。高さ30mの焼却炉の解体もこの重機により高所作業がなくなり、安全性向上に貢献しています。

図版:超大型の6.0㎥級の解体用重機

超大型の6.0m3級の解体用重機

図版:焼却炉解体作業の様子

焼却炉解体作業の様子

図版:焼却完了時の記念写真(2018年9月28日)

焼却完了時の記念写真(2018年9月28日)

富岡町廃棄物処理業務では、2017年8月に100万時間の無災害記録を達成していますが、2019年2月末時点で130万時間の無災害記録を更新しています。2019年7月の業務完了まで記録を更新すべく所員一丸となり、業務を行っています。

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保管施設

選別物保管施設では、破砕選別施設で選別された不燃物(金属くず、コンクリートがら、土砂類等)を保管します。床面に遮水シートを設置することで、放射性物質等の有害物質の地下への浸透を防止します。

灰保管施設では、焼却灰を封入したフレキシブルコンテナを大型テント内で保管します。床面はコンクリートで平滑に舗装し、雨水の浸入や汚水の地下への浸透を防止する構造としています。

両施設とも、敷地境界の空間線量率と地下水の放射性物質濃度を監視し、異常がないことを確認します。

図版:灰保管施設の断面イメージ

灰保管施設の断面イメージ

建設の様子

図版:選別物保管施設 2015年2月撮影

選別物保管施設 2015年2月撮影

図版:灰保管施設 2015年2月撮影

灰保管施設 2015年2月撮影

保管施設の様子

図版:選別物保管ヤード

選別物保管ヤード

図版:灰保管施設

灰保管施設

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放射性物質の管理

本施設で処理を行う廃棄物は放射性物質を含むため、処理にあたっては、各工程において放射性物質の適正な監視と管理が求められます。

用地内と周辺の8箇所で空間線量率を常時モニタリングし、周辺環境や作業員への放射線の影響を監視するとともに、施設から搬出する車両等は表面に付着した放射性物質を測定し、基準値以下であることを確認します。また、焼却に伴って排出される排ガスも、バグフィルタなどで放射性物質を除去した上で、排ガス中の放射性物質濃度を連続監視し、異常がないことを確認します。焼却灰も放射性物質濃度を測定した上で、施設外部に飛散することのないよう厳重に保管します。

また、各種モニタリングデータは環境省のHPで公開しており、周辺住民の皆様に安心していただくよう配慮しています。

図版:放射性物質に関するモニタリング

放射性物質に関するモニタリング

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Column 富岡町廃棄物処理業務、100万時間無災害記録を達成

鹿島が参画する共同企業体が福島県富岡町で進めている「富岡町対策地域内廃棄物処理業務」において、2017年8月31日、100万時間無災害記録が達成されました。

本業務は、福島県富岡町の津波がれきや家屋解体廃棄物、除染作業に伴って発生した廃棄物等を破砕選別処理、焼却処理するもので、仮設廃棄物処理施設の建設、運営(処理)、施設解体までが含まれています。2014年4月に仮設廃棄物処理施設の建設が開始され、約1年間の建設期間ののち、2015年3月から処理が開始されました。建設期間と処理期間の合計で、2017年8月31日に延100万時間の無災害記録を達成しました。本記録は、作業員延10万3,494名、鹿島職員延17,268名で達成したものです。

現場を統括する射場学所長は、「この業務は通常の工事と違い、建設期間と廃棄物処理期間という全く異なるフェーズがあり、作業員はもちろん作業内容も大きく異なります。その中で、作業員一人ひとりが、『富岡町の復興』という強い決意と誇りを持って業務にあたってくれたことを心から感謝しています。また、初の放射能に汚染された廃棄物処理業務であり、周辺環境、作業員への健康被害への配慮に細心の注意を払って業務を行っています。今後、あと約1年間、廃棄物処理が継続したのち、施設の解体撤去工事という新たなフェーズが待っていますが、最後まで無災害で業務を完了させたいと思います」と語っています。

図版:処理メンバーによる100万時間達成の記念写真

処理メンバーによる100万時間達成の記念写真

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Column 焼却施設が完成、「火入れ式」が行われました

2015年3月19日、建設中の焼却施設が完成し、現地で「火入れ式」が行われました。式典には、環境省や福島県、富岡町をはじめ工事関係者ら約70名が出席し、JVを代表して田代副社長が火入れに参加しました。火入れは関係者9名によって執り行われ、スタートボタンを押し焼却炉に点火されると盛大な拍手が沸き起こりました。

完成した焼却施設は、汚染廃棄物対策地域内においては最大規模で、一日あたり約500tの可燃物を焼却できる施設となっています。今後は、試験運転を経て4月下旬から本格稼働し、2017年3月末までの約2年間で処理を行う計画です。この火入れにより、いよいよ廃棄物処理が本格的に開始されることになります。

図版:完成した焼却設備

完成した焼却設備

図版:田代副社長(一番右)が参加した火入れの様子

田代副社長(一番右)が参加した火入れの様子

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