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洋上風力発電所の構築技術

波浪条件の厳しい外洋における洋上風車と風車基礎の施工技術

再生可能エネルギーのなかでも注目されている洋上風力発電所は、風が強く波の高い外洋に設置されることが多くなります。風車や風車基礎の設置工事にとって外洋は作業条件が厳しく、工期が長くなり工事コストの増加をもたらします。鹿島では、日本最初の外洋における洋上風力発電所の設置にあたり、外洋での基礎設置工程の短縮と耐久性の向上を目指してPCコンクリート重力式基礎を採用しました。また、風車組立工事では高波浪条件でも施工可能な自己昇降式作業台船(SEP)を使って、国内最大級の2,400kW風車の設置を行いました。

なお、本事業は独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と東京電力の共同事業です。

特許登録済

図版:洋上風車の組立状況

洋上風車の組立状況

キーワード
再生可能エネルギー、風力発電、洋上風力、重力式基礎、風車組立、SEP、自己昇降式作業台船

耐久性の高いPC重力式基礎と高波浪条件での風車施工

洋上風車の基礎形式のひとつである重力式基礎は、海底が岩盤などで杭が打てない場所に適用されます。このたび波浪条件の厳しいことで知られる銚子沖の岩盤上に設置した洋上風車の基礎は、基礎に受ける波力をできる限り小さく抑え安定した基礎形状とするため、三角フラスコのような形状を採用しました。基礎は鉄筋コンクリート製ですが、ひび割れが発生しにくくコンクリートの壁厚を薄くできるプレストレストコンクリート(PC)構造とすることにより、大型洋上風車にも適用できる耐久性のたかい重力式基礎ができました。また、直径92mの大型風車の施工には、波浪の影響を受けにくい自己昇降式作業台船(SEP)を用いて無事施工を完了しました。

図版:陸上で完成した洋上風車の基礎(手前)と風況観測タワー基礎(ともにPC重力式を採用、この後現地へ運搬)

陸上で完成した洋上風車の基礎(手前)と風況観測タワー基礎(ともにPC重力式を採用、この後現地へ運搬)

図版:自己昇降式作業台船(SEP)による洋上風車の組立

自己昇降式作業台船(SEP)による洋上風車の組立

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特長・メリットココがポイント

PC重力式基礎

基礎ケーソンの側壁をプレストレストコンクリート(PC)としました。

  • ひび割れが発生しにくく耐久性が高い。
  • 基礎の壁厚を比較的薄くすることができる。
  • 構造物を軽量化して、外洋での作業を簡素化できる。

図版:施工中のPC重力式基礎

施工中のPC重力式基礎

SEPによる洋上風車の組立

大型風車の施工には、自己昇降式作業台船(SEP)を用いました。

  • 波浪条件が厳しいところでも施工可能。
  • 精密機械である風車の確実な組立。

図版:風車組立作業

風車組立作業

適用実績

図版:NEDO洋上風力発電システム実証研究施設

NEDO洋上風力発電システム 
実証研究施設

場所:千葉県銚子市沖

竣工年:2013年2月

発注者:東京電力((独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と東京電力の共同事業)

規模:2,400kW風車1基(ローター径92m、ハブ高さ80m)

学会論文発表実績

  • 「洋上風力発電実証研究の取組事例」,土木学会誌,2013年4月

LNG地下タンク設計・施工技術

大容量化・工期短縮を実現する鹿島のLNG地下タンク設計・施工技術

LNG(液化天然ガス)は輸送や貯蔵が便利なクリーンエネルギーとして注目されています。鹿島はLNG貯槽の可能性を探り、これまでに国内のLNG地下式貯槽の約半数を建設。その間、凍結土圧や地震に対する安全性、大深度地中連壁、超高性能コンクリート、施工管理等の技術開発を進め、より安全で機能的な構造、効率的で工期短縮につながる設計・施工技術を常に追求してきました。

LNGの新たな可能性、大容量タンク化に向け、今後も技術開発の研鑽につとめ高度なノウハウを提供していきます。

特許出願中
平成7年度土木学会 技術賞
2001年6月日本ガス協会 論文賞

図版:LNG地下タンク

LNG地下タンク

キーワード
LNG、液化天然ガス、大容量化、急速施工、凍結土圧、耐震性、大深度地中連壁、高性能コンクリート、エネルギー、低温タンク
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LNG地下タンクの設計技術 ~低温技術

低温特性の研究に積極的な取組み

コンクリート構造に関する低温試験

極低温の地下タンクでは使用される材料の低温特性を把握し、これを設計に反映させることが重要となります。

このため1960年台からコンクリート・鉄筋・PC鋼材の低温特性や、鉄筋コンクリート・プレストレストコンクリートの低温特性の研究に積極的に取り組んできました。

図版:鉄筋の低温引張試験

鉄筋の低温引張試験

図版:RC梁の低温曲げ試験

RC梁の低温曲げ試験

凍土の力学的特性、メカニズムを解明

凍土に関する試験

タンク周辺の地盤の凍結時に発生する凍結膨張量や凍結膨張圧の把握は重要です。

このため、凍土の力学的性質や凍結膨張のメカニズムに関する研究を行い、タンクの設計・施工に反映させています。

図版:2次元モデルによる凍土試験

2次元モデルによる凍土試験

図版:3次元モデルによる凍土試験

3次元モデルによる凍土試験

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LNG地下タンクの設計技術 ~解析技術

構造物の安定性を評価

3次元ソリッドモデルによる一体解析

LNG地下タンクでは、低温荷重や地震力等の特殊な荷重を考慮し、それらを適切に評価した高度な解析・設計技術が必要となります。

そのため、側壁及び底版を3次元ソリッド要素でモデル化したFEM解析を行い、合理的な構造設計を実現しています。

図版:3次元ソリッド要素による解析モデル図

3次元ソリッド要素による解析モデル図

多角的な解析技術で安全を設計

地震観測と解析

LNG地下タンクの耐震設計は、豊富な地震観測データをベースにした多角的な解析に基づき、貯槽や周辺地盤の地震時の挙動特性や、地震力の算定などを明確にしてきました。これらの解析データはより高度な耐震構造設計に活かされています。

地表と貯槽頂部の加速度

  • 地表の加速度は基盤の加速度に対し、小さな地震で3~5倍、大きな地震で2~3倍となります。(地盤のひずみ依存性)
  • 貯槽頂部の加速度は、離れた地表の加速度の半分以下となります。(貯槽の剛性が大きく、貯槽下部が支持層に入っているため、地表と同じ程度には動きません)

図版:地盤と貯槽各部の加速度波形

地盤と貯槽各部の加速度波形

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LNG地下タンクの設計技術 ~「大容量化」「急速施工」

天候に影響されずに工期を短縮化

全天候型急速施工法

従来の地下タンクの建設では、土木工事を先行した後、内槽工事の施工を行ってきました。本工法は側壁躯体構築前に屋根構造の組立を完了し、側壁構築と保冷・メンブレン工事を並行作業することで、工期短縮・急速施工を図るものです。また底版工事は先行構築した屋根により、全天候方式の施工が可能となります。

図版:天候に影響されずに工期を短縮化

地下空間と地上空間を有効利用

地下+PC金属地上型

従来の地下タンクの側壁上部にPC金属地上タンクを構築し、一体化します。地下と地上の両方を活用できることから、同じスペースでより大容量タンクの建設が可能となります。

図版:地下空間と地上空間を有効利用

内径拡大に対応

鋼+コンクリート製屋根型式

タンクの大容量化にともなって内部のガス圧が大きくなることから、鋼製屋根で対応できるタンクの内径は80m程度までとなります。本形式は、鋼製屋根の外周部に鉄筋コンクリート製屋根を設けタンク内径を大きくすることで、内径100mクラスの大容量化を図るものです。

図版:内径拡大に対応

直接地盤にタンク本体を建設

自動化大型ニューマチックケーソン工法

LNG地下タンクの建設において、山留め・止水壁を施工することなしに、躯体を構築できる形式です。適切な不透水層がない地盤にも建設が可能です。沈設作業はリモートコントロールの全自動掘削システムで施工します。

図版:直接地盤にタンク本体を建設

LNG地下タンクの施工技術

LNG地下タンクにおける安全で快適な作業環境の確保は、省力化、施工の効率化を図る上で重要なポイントです。鹿島は、これまでのノウハウと技術をもとに、新しい発想の自動化技術を開発。LNG地下タンク建設の随所で自動化ロボットを有効に活用し、安全かつ効率的な施工を行います。更に、これまで開発した数々の開発技術(エアサポート工法、スーパークリート工法、薄型連壁掘削機、昇降足場、鉄筋組立・建込装置)を結集させることで、近年大容量化しているLNG地下タンク建設を、『安全に、より早く、より経済的に』建設することを可能にします。

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適用実績

鹿島では、地上式PCタンクの設計・施工に対しても、満足いただけるソリューションを提供しています。

図版:知多緑浜工場No.2LNGタンク

知多緑浜工場No.2LNGタンク

場所:愛知県知多市

竣工年:2009年11月

発注者:東邦ガス

規模:20万kl

図版:扇島工場TL21LNG地下式貯槽

扇島工場TL21LNG地下式貯槽

場所:神奈川県横浜市

竣工年:2000年9月

発注者:東京ガス

規模:20万kl

図版:根岸工場TL42LNG地下式貯槽

根岸工場TL42LNG地下式貯槽

場所:神奈川県横浜市

竣工年:1996年7月

発注者:東京ガス

規模:20万kl

図版:袖ケ浦工場LNG地下タンク

袖ケ浦工場LNG地下タンク

場所:千葉県袖ケ浦市

竣工年:1985年7月

発注者:東京ガス

規模:5.8万kl~13.0万kl(5基)

図版:川越火力発電所LNG設備LNG基礎

川越火力発電所 LNG設備LNG基礎

場所:三重県

竣工年:1997年1月

発注者:中部電力

規模:12万kl(高床式二重LNG地上タンク)

図版:大分油化興産(昭電)LPG貯槽

大分油化興産(昭電)LPG貯槽

場所:大分県

竣工年:1981年10月

発注者:大分油化興産

規模:6.7万kl 6.8万kl(PC低温地上タンク)

学会論文発表実績

  • 「20万KlLNG地下式貯槽の水圧試験」第55回土木学会年次学術講演会,2000年9月
  • 「高炉スラグ粗骨材を用いたコンクリートの火力発電所設備への適用について(その1~その6)」,第55回土木学会年次学術講演会,2000年9月
  • 「高強度コンクリート連続地中壁のカッティング工法による施工」,土木施工,2000年1月号
  • 「東京電力富津火力発電所LNG地下式貯槽建設工事」,基礎工,1999年12月号
  • 「大規模円形地中連続壁の設計・施工実績及び計測管理」,地盤工学会中部支部,第17回調査・設計・施工技術報告会, 2008年6月 

LNGタンク防液堤のPCa化
「P3wall®(ピースリーウォール)」

PCLNGタンク防液堤のオールプレキャスト化による工期短縮の実現

LNG受入基地の建設プロジェクトにおいては、その早期稼働のため、建設工期の中でクリティカルとなるPCLNGタンクの建設工期短縮が求められます。このタンクの工期短縮には、防液堤へのプレキャスト(PCa)工法の適用が有効です。一方で、建設業界では担い手不足への対応策としての生産性向上も叫ばれています。

P3wall®は、これらの課題を解決するため、PCLNG地上式タンクの防液堤をオールプレキャスト化することで、タンク本体の建設工期を大幅に短縮し、同時に生産性向上を実現する技術です。

※P3wall:Precast Prestressed Concrete Wall Panels for LNG Storage Tank

令和2年度土木学会 技術賞(Ⅰグループ)
令和2年度プレストレストコンクリート工学会 技術開発賞
2023年日本コンクリート工学会 技術賞
特許登録済
商標登録 5885823

図版:プレキャストパネル設置の様子

プレキャストパネル設置の様子

図版:P3wallを適用したPCLNG地上式タンク(容量23万kL)

P3wallを適用したPCLNG地上式タンク(容量23万kL)

キーワード
LNG、地上式タンク、プレキャスト、大型PCa、プレキャスト継手、工期短縮、生産性向上
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P3wallの概要

P3wallは、LNGタンク防液堤をPCa化し生産性向上を図る技術です。LNG容量23万kLの大規模タンクは、高さ2.4m×幅6.3m×奥行き0.65m、重量約24tのPCaコンクリートパネル740枚で構成されます。防液堤はLNG(-162℃極低温)漏液時に液密性の必要があります。そのため、PCa継手部には、従来の場所打ち工法(打継目)と同等の性能を持たせるため、場所打ち構造を設けることとしました。円周鉄筋の継手には従来技術のモルタル充填式機械継手を採用し、鉛直鉄筋の継手にはその架設効率性から新型継手を採用しました。また、PCa継手の場所打ち部分の防液堤内側型枠として打設用ライナーをPCa架設前に装着・架設することで、内側型枠の設置・脱型作業が無くなり、防液堤構築当初から防液堤内側の作業空間を開放することができます。

図版:PCa架設状況イメージ

PCa架設状況イメージ

図版:PCaパネル構造図

PCaパネル構造図

図版:LNGPC地上タンク施工状況図(プレキャスト)

LNGPC地上タンク施工状況図(プレキャスト)

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特長・メリットココがポイント

①防液堤の早期構築

新型継手は上下PCa間の効率的な接合を可能にする重ね継手の一種です。予めモルタルを充填した下側PCaの継手孔に上側PCaの突出継手筋を挿入し、上下PCa間の隙間にもモルタルを充填する継手です。この継手により、防液堤としての必要性能を満足しつつPCa架設速度を保つことが可能となり、防液堤の構築を4か月(23万kLの場合)短縮することができます。

図版:PCa新型継手の施工ステップ

PCa新型継手の施工ステップ

②機械工事との同時着工

PCaに打設ライナーを装着・架設することで、PCa接続作業等の土木工事を防液堤内側で作業することが無くなります。通常タンクの機械工事は、防液堤の構築がある程度進んでからの着手となりますが、P3wallでは、この打設ライナー装着により防液堤構築当初から防液堤内側の作業空間を開放でき、機械工事が防液堤構築開始と同時に着工可能(3か月工期短縮,機械工事の前倒し)となります。

図版:P3wall適用のPCLNG地上式タンク(容量23万kL)

P3wall適用のPCLNG地上式タンク(容量23万kL)

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図版:防液堤構築時の従来工法とP3wallの比較

防液堤構築時の従来工法とP3wallの比較

③全体工期短縮

上記の①+②による相乗効果として、下記の観点からタンク全体工期を10か月短縮(23万kLの場合従来40か月⇒30か月)することが可能となります(※下表参照)。

  • 土木側の防液堤内側作業が無いことによる並行作業機械工事の効率化
  • 防液堤早期構築完了によって機械単独作業期間をより多く確保可能
  • 従来より大幅な防液堤構築完了により機械側も従来工法ではなく特殊工法採用可能
  • プレキャスト化により防液堤の高精度な出来形(埋設金物設置の高精度化)が確保でき、機械工事の能率が向上

図版:従来工法とP3wallの工程比較

従来工法とP3wallの工程比較 ※本表は標準的な工程の比較

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適用実績

図版:東京ガス 日立LNG基地 TL2 LNGタンク

東京ガス 日立LNG基地 
TL2 LNGタンク

場所:茨城県日立市

運転開始:2021年3月

原発注者:東京ガス

発注者:東京ガスエンジニアリングソリューションズ

規模:PCLNG地上式タンク工事(1基・23万kL) 防液堤PCa版740枚(B6.3m×H2.4m×T0.65m・W24t/枚)

学会論文発表実績

  • 「施工性に優れたプレキャスト部材接合継手 その1(部材実験)」,土木学会,第72回年次学術講演会,2017年9月
  • 「施工性に優れたプレキャスト部材接合継手 その2(両引き実験)」,土木学会,第72回年次学術講演会,2017年9月
  • 「プレキャスト工法を適用した地上式PCLNGタンクの設計」,土木学会,第75回年次学術講演会,2020年9月
  • 「プレキャスト工法を適用した地上式PCLNGタンクのプレキャスト版の製作」,土木学会,第75回年次学術講演会,2020年9月
  • 「プレキャスト工法を適用した地上式PCLNGタンクの防液堤の構築」,土木学会,第75回年次学術講演会,2020年9月

臨海・港湾技術 インデックス

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