ホーム > 技術とサービス > 土木技術 > 臨海・港湾技術 > 耐津波・耐震

アスファルトマット工法

海岸構造物等の滑動抵抗性、洗掘・吸出し防止性を高める

アスファルトマットは防波堤・離岸堤等の海岸構造物の建設・保全に多大な効果を発揮するものです。

摩擦増大用アスファルトマットは、ケーソンや護岸などの重力式構造物の底板に取付けることにより堤体の滑動抵抗力を増大させることができます。

洗掘防止用アスファルトマットは、海岸構造物の捨石マウンドや消波ブロックの前後面に生じる洗掘孔斜面にたわみ込み、洗掘の進行を止める事ができます。また本アスファルトマットは吸出し防止用としても適用され、捨石マウンド及び消波ブロックなどの底面に敷設し、底質の吸出しを防止できます。

本工法は東日本大震災でも、その有効性が確認されました。

NETIS HRK-110003-A
NETIS SK-010001-V
(財)沿岸技術研究センター評価書取得

図版:使用例① 防波堤使用例

使用例① 防波堤使用例

図版:使用例② 護岸使用例

使用例② 護岸使用例

キーワード
アスファルトマット、摩擦増大マット、洗掘防止、吸出し防止、大津波、ケーソン、工費削減
改ページ

各アスファルトマット工法の概要

摩擦増大用アスファルトマット

摩擦増大用アスファルトマットはアスファルト合材の中に補強芯材、取付金具、吊上げ用ワイヤー等を埋め込んで8cm(標準厚さ)の版状に成形したものです。

ケーソン式混成堤等の重力式構造物の底版に取付けることによりケーソン堤体の滑動に対する抵抗力を増大することができます。

使用方法により2つの種類があり、ケーソン堤体の製作時にアンカーボルト等の金具によりアスファルトマットを底版に取付ける「ケーソン取付タイプ」と、捨石マウンド上にアスファルトマットを直接敷設しその上にケーソン堤体を設置する「捨石マウンド敷設タイプ」があります。

図版:摩擦増大用アスファルトマット模式構造図(ケーソン取付タイプ)

摩擦増大用アスファルトマット模式構造図
(ケーソン取付タイプ)

洗掘防止用アスファルトマット

洗掘防止用アスファルトマットはアスファルト合材の中に補強芯材、吊上げ用ワイヤー等を埋め込んで5~20cm程度の版状に成形したものです。

捨石マウンドや消波ブロックの下に敷設することにより、アスファルトマット先端が自重により法先の洗掘孔(洗掘され発生した孔)にたわみ込み、捨石マウンドや消波ブロックの下の地盤を抱え込み、洗掘の進行を抑制する海底面被覆工です。

波浪条件に応じた設計が可能で、先端に適度な間隙率の孔を設けることで厚さを節約でき、荒天時の高波に対して安定性が向上します。

図版:洗掘防止用アスファルトマット模式構造図

洗掘防止用アスファルトマット模式構造図

改ページ

特長・メリットココがポイント

摩擦増大用アスファルトマット

工事費の削減

  • アスファルトマットを使用した場合、アスファルトと捨石の摩擦係数f=0.8(コンクリートと捨石では摩擦係数f=0.6)を使用でき、ケーソン堤体の幅を33%縮小でき、全体の工事費として最大20%程度削減できます。

高い長期耐久性・環境性

  • アスファルトマットは長期耐久性を有しており、30年暴露した供試体及び26年経過した実構造物から採取した試料より、耐久性(滑動抵抗は0.8以上、曲げ強度、圧縮強度は基準値以上)を有することが確認されました。
  • アスファルトマットは化学的に安定しており、有害物質等の溶出量は基準値を満たします。(食品分析センターにて試験)

図版:ケーソン堤体幅の縮小模式図

ケーソン堤体幅の縮小模式図

洗掘防止用アスファルトマット

洗掘・吸出し防止の効果

  • アスファルトマットは、粘弾性体のため海底地盤の形状変化への追随性が良く、アスファルトマット先端がたわみ込むことで、下の地盤を抱え込み、洗掘の進行を抑制します。
  • アスファルトマットは、不透水性のため海底地盤の底質の吸出し防止効果があります。

優れた耐久性・環境性

  • 洗掘防止用アスファルトマットは、捨石投入時の衝撃や消波ブロック上載時の押し抜きに対する耐久性に優れています。
  • アスファルトマットは有害物質の溶質が基準値を満たすもので、海中でのマット表面に海藻類の植生が確認されています。

図版:洗掘防止用アスファルトマットの敷設状況

洗掘防止用アスファルトマットの敷設状況

図版:洗掘防止用アスファルトマットの撓み込み状況

洗掘防止用アスファルトマットのたわみ込み状況

改ページ

適用実績

図版:清水港新興津地区岸壁

清水港新興津地区岸壁

場所:静岡県

竣工年:2000年8月

発注者:運輸省第五港湾建設局

規模:摩擦増大用アスファルトマット製作・敷設(ハイブリットケーソン) 9,454m2

図版:洋上風況観測システム

洋上風況観測システム

場所:千葉県

竣工年:2013年1月

発注者:東京電力(新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と東京電力の共同事業)

規模:摩擦増大用アスファルトマット製作・敷設 600m2

図版:諫早湾干拓事業小江土捨場

諫早湾干拓事業小江土捨場

場所:長崎県

竣工年:1992年9月

発注者:農林水産省九州農政局

規模:洗掘防止用アスファルトマット製作(透水層付) 2,493m2

学会論文発表実績

  • 「大波浪に耐える孔あきアスファルトマット ─洗掘防止用アスファルトマットの水理機能と設計法─」,電力土木,No.232別刷,1991年5月
  • 「洗掘実験における底質の粒径効果と有意な法先洗掘をもたらすふきそく波の代表波」,電力土木,No.273別刷,1998年1月
  • 「海中における摩擦増大用アスファルトマットの長期耐久性(30年)について」,土木学会,海岸工学論文集,第48巻,2001年
  • 「混成防波堤の滑動時における捨石マウンドの挙動に関する基礎実験」,土木学会,海岸工学論文集,第48巻,2001年
  • 「マット型海底面被覆工の耐波安定性能評価法」,土木学会,海岸工学論文集,第52巻,2005年

既設岸壁の耐震補強工法

可塑状グラウトとジェットクリート、杭による
ケーソン式岸壁補強工法

港湾施設等の荷揚岸壁は、通常時は資機材などの荷揚げに使用しますが、災害時においては緊急資機材の搬入拠点としての機能も担う重要設備です。

ケーソン式岸壁は、ケーソンと背面の裏込栗石で構成されていますが、大地震時にはケーソンの変状(沈下または海側への移動)やケーソン背面地盤の地盤変状などが生じ、その機能を喪失することが懸念されます。

このため、ケーソン式岸壁の耐震性向上を目的として、ケーソン背面土の地盤改良(可塑状グラウトとジェットクリートの組合せ)およびケーソンへの補強杭による補強工法を愛媛県の岸壁に採用しました。

図版:施工状況

施工状況

図版:ケーソン式岸壁補強工法 標準断面図

ケーソン式岸壁補強工法 標準断面図

キーワード

岸壁、ケーソン、耐震性向上、地盤改良、補強杭
改ページ

施工ステップ

  • 1. 高圧噴射撹拌工施工時の海域への固化材などの流出防止を目的に可塑状グラウトで遮蔽壁を造成します。
  • 2. ケーソン背面土を対象に高圧噴射撹拌工による地盤改良(ジェットクリート工法)を行います。
  • 3. 既設ケーソンと補強杭を一体化し、ケーソンに作用する外力の補強杭への伝達を目的とした高強度可塑状グラウトをケーソン隔壁内に注入します。
  • 4. 既設ケーソンを貫通する補強杭を施工します(オールケーシング工法)。

図版:施工手順図

施工手順図

図版:施工手順図

改ページ

特長・メリットココがポイント

本工法は、以下に示す3つの技術で成立しています。

1. 可塑状グラウトによる巨礫の空隙充填、改良材の海域への流出防止

可塑性グラウトは、シールドトンネルの裏込め材やトンネル空洞充填材などに活用されてきました。しかしながら、地下水位以下の巨礫地盤中の空隙充填への適用事例が少ないため、室内試験と現場施工試験により目標品質を確認した結果、良好な充填状況が確認できました。また、地盤改良材(ジェットクリート工)の海域への流出防止として、遮蔽壁の機能も果たしています。

図版:可塑状グラウト充填後コアの一例

可塑状グラウト充填後コアの一例

2. ジェットクリート工による巨礫を含む地盤改良

ケーソン背面土は巨礫を含む地盤(最大粒径700mm)であり、通常の地盤改良が困難でした。このため、現場施工試験により改良出来形、改良品質を確認しました。その結果、未改良部はなく、巨礫を含む地盤でも良好に改良できることを確認しています。

図版:改良体ボーリングコアの一例

改良体ボーリングコアの一例

3. ケーソン隔室内グラウト工と補強杭の施工

ケーソン隔室内は中詰栗石が詰まっていて、補強杭施工のための削孔時、孔壁が崩壊して中詰栗石の緩み(ジャ-ミング)が生じ、ケーソンの変位が懸念されました。これに加えて、ケーソンと補強杭を一体化しケーソンに作用する外力を補強杭に伝達させることが必要です。このため、グラウト充填により孔壁崩壊を防止して施工中のケーソンの変位を抑制するとともに、ケーソンと補強杭を確実に一体化させました。

ハーバ・ステージパイリング工法

既設岸壁の大水深化・耐震補強を陸上からの施工で実現

ハーバ・ステージパイリング工法は、岸壁から海側へ張出して走行できる架台に、工種に対応した各種の施工機械を搭載して工事を行います。張出し架台の先端に設けた昇降装置は、レグ(脚)を海底に降ろして張出し架台を水平に安定させます。レグ及び昇降装置は鹿島のSEP(自己昇降式作業台船)の技術を応用した確実性の高い方法を使用しています。

次の施工場所への移動は、岸壁上に敷設したレールに沿って最短距離を正確にすばやく移動し、位置修正もほとんど必要としません。

特許登録済

図版:ハーバ・ステージパイリング工法(全景)

ハーバ・ステージパイリング工法(全景)

キーワード
ハーバ・ステージパイリング工法、既設岸壁、大水深化、耐震補強、走行架台、レール、レグ、昇降装置、カウンターウエイト、
油圧ユニット、ケーシング回転掘削機、クローラクレーン、グラブハンマ
改ページ

施工手順、機械構造

右記に重力式岸壁の震災復旧時の工事全体における、ハーバー・ステージパイリング工法の適用と施工手順を示します。

  • 1. 走行式張出架台の設置を行います。
  • 2. ケーシングを建込みます。
  • 3. 捨石層の置換掘削を行います。
  • 4. 置換の砂を投入します。
  • 5. 鋼管矢板の打込みを行います。

図版:重力式岸壁震災復旧時の本工法の適用

重力式岸壁震災復旧時の本工法の適用

図版:施工手順

施工手順

改ページ

特長・メリットココがポイント

工法の特長

  • 大掛かりな工事用桟橋の架設、大型の作業船が不要で、ほとんど陸上作業と同様の条件での施工であり、足場・通路の確保が容易であり、安全性に優れています。
  • 作業船を使用しないので、工事海域占有の必要がありません。また、波浪や潮流、船体の動揺の影響を受けないので、高い稼働率を確保できます。
  • 複数の機械設備編成を組むこと、並びに、昼夜作業体制も特に制約なく実施できることなどから、経済性、工期短縮の面で大きなメリットがあります。
  • 既設岸壁上に敷設したレール上を走行させることで広い施工範囲に適応できます。

図版:機械の構成

機械の構成

  • ハーバ・ステージ架台:走行架台、レール、レグ、昇降装置、カウンターウェイト、油圧ユニット
  • 施工機械(障害物撤去工):ケーシング回転掘削機、クローラクレーン、グラブハンマ
  • 施工機械(鋼材打設工):クローラクレーン、バイブロハンマ

適用実績

図版:神戸市 ポートアイランドL6.L7岸壁

ポートアイランドL6.L7岸壁

場所:兵庫県神戸市 

竣工年:1996年6月

発注者:(財)神戸港埠頭公社

規模:鋼管矢板+控鋼管杭式岸壁工(400m)

学会論文発表実績

  • 「走行式張出架台による被災岸壁復旧工事 ─ハーバ・ステージ・パイリング工法─」,建設の機械化,1997年6月号
  • 「甦れ!マザーポート 阪神・淡路大震災 港湾施設復旧技術事例」,ポートアイランドL6,7バース復旧工事《控え杭式鋼管矢板岸壁》,(社)日本海洋開発建設協会関西支部,1997年12月

臨海・港湾技術 インデックス

ホーム > 技術とサービス > 土木技術 > 臨海・港湾技術 > 耐津波・耐震

ページの先頭へ