津波シミュレーション技術
津波の伝播・変形・遡上・氾濫・作用波圧を再現
海底地震が発生し、断層上の海域(波源)において形成された水位の変動は、周囲に伝播し津波となります。そして津波は大洋を渡り、海底地形の影響を受けて変形し、沿岸に来襲します。津波シミュレーション技術は、波源から遡上までの広域な津波の運動を解析する「津波伝播解析※1」、沿岸陸域への津波氾濫を詳細に解析する「津波氾濫解析※2」、構造物周辺での津波の変形や構造物への波圧波力などの作用を解析する「数値波動水路/水槽※3」から構成されます。鹿島では、これらのシミュレーション技術と津波水理実験技術を組み合わせ、津波による被害を推定し、被害を低減するための対策を提案します。
- キーワード
- 津波、津波伝播解析、津波氾濫解析、数値波動水路/水槽、津波波圧・波力、数値シミュレーション、津波対策
特長・メリットココがポイント
津波伝播解析により広域の津波変形を解析
- 海底地震発生直後における波源の水位変動量を初期条件に、津波の伝播を数値モデルにより解析します。
- 海底地形データ・地震断層データなどの入力条件を用いて実行します。
- 広い領域を粗い計算格子で解き、対象とする領域を詳細な計算格子で解くネスティング計算により、効率の良い解析が可能です。
- 対象とする海域における最高津波水位、津波の到達時間を得ることができます。
- 津波の陸上への遡上を考慮することができるため、遡上範囲の変化、浸水深の変化などを得ることができます。
- CGを用いて、解析結果をわかりやすく動画として表示することが可能です。
津波氾濫解析システムにより、沿岸地域、沿岸域の工場敷地の氾濫状況の評価が可能
- 対象とする地域における、水位変化、流速の変化を知ることができます。
- 防潮堤の越水や取放水施設、排水施設を通した水の運動を評価することができます。
- 津波波圧評価式により波圧の評価も可能です。
- CGを用いて、解析結果をわかりやすく動画として表示することが可能です。
数値波動水路/水槽技術により、構造物周辺の津波変形・作用波圧の評価が可能
- 構造物や建物の詳細な形状データを用いて、数値実験を実施します。
- 構造物や建物周辺の津波の変形や作用波圧を評価可能です。
- 津波水理模型実験と組み合わせことにより信頼性の高い評価が可能です。水理模型実験結果の解釈、補間にも用いることができます。
- CGを用いて、解析結果をわかりやすく動画として表示することが可能です。
学会論文発表実績
- 「数値波動水路の段波実験への適用」,海洋開発論文集,第17巻,2001年
- 「津波伝播シミュレーション」,鹿島技術研究所年報,第56号,2008年
- 「津波氾濫解析の水理模型実験による検証」,鹿島技術研究所年報,第60号,2012年
- 「津波氾濫シミュレーションの水理模型実験による検証」,土木学会論文集B3(海洋開発),2013年
建設業界最大規模の海洋・水理実験施設
実海域の波浪・津波を室内で精度良く再現
技術研究所の海洋・水理実験場棟は、大水深化、高度化する水理構造物の設計、施工支援のために使用されています。自然に近い波を再現して、海岸・海洋開発に必要な建設技術を確立するための様々な実験を行っています。本実験棟は1975年に建設され、多方向不規則波造波装置・津波造波装置をはじめとする最新鋭の装置を随時導入して充実を図っており、国内建設業界では随一の規模のものです。
主な実験施設として、平面水槽、マルチ造波水路、不規則波造波水路があります。
特許登録済
- キーワード
- 水理実験、波浪、津波、多方向不規則波、港湾
特長・メリットココがポイント
平面水槽:
実海域の波浪・津波を精度良く再現
- 長さ58m×幅20m×深さ1.6m。
- 2種類の造波装置(多方向不規則波造波装置、津波造波装置)が備わっており、実海域の波浪・津波を室内で精度良く再現することができます。
- 多方向不規則波造波装置は、36枚の造波板を独立して動かすことにより、一方向不規則波、多方向不規則波など様々な種類の波を起こすことができます。
- 津波造波装置は、軸流ポンプ式で流量と流向をコンピュータ制御することにより、任意の波高・周期の津波を造波できます。
平面水槽(動画)
マルチ造波水路:
よりコストを抑えた二次元実験が可能
- 長さ60m×幅1.2m×深さ1.5m。
- 2種類の造波装置(不規則波造波装置、津波造波・環流装置)が備わっており、波浪・津波・流れを室内で精度良く再現することができます。
- 構造物に作用する波力の計測や、越波量の計測など、二次元実験の幅広い実績があります。
- 幅が1.2mですので、実験に用いる材料の数量、工期を抑え、比較的安価に二次元実験を行うことができます。
不規則波造波水路:
二次元実験で豊富な実績、三次元実験も可能
- 長さ62m×幅2m×深さ2m。
- 消波ブロックの安定性確認実験や、構造物に作用する波力、変位量の計測など、二次元実験の幅広い実績があります。
- 水路幅が2mあるので、小規模の構造物に対しては三次元実験を行うこともできます。
- 造波板を変位制御でゆっくりと動かすことにより、任意の長周期の波を造波することができるので、津波実験を実施することも可能です。
適用実績
港内静穏度の計測
平面水槽・多方向不規則波造波装置を使用
沈埋函の水中曳航
平面水槽・多方向不規則波造波装置を使用
円筒構造物周辺の流況計測
平面水槽・津波造波装置を使用
消波ブロックの安定性評価
不規則波造波水路を使用
津波により
陸上に遡上する漂流物
不規則波造波水路を使用
スリット護岸に作用する波力
マルチ造波水路を使用
消波ブロック被覆護岸の越波
マルチ造波水路を使用
学会論文発表実績
- 「側壁反射を利用した斜め規則波の造波方法」,海岸工学論文集,vol 38,1991年
- 「多方向不規則波の吸収造波理論」,海岸工学論文集,Vol.39,1992年
- 「斜面上の不規則波造波理論の検証」,土木学会年次学術講演会,第55回Ⅱ部門,2000年
- 「ポンプ式津波造波装置の開発」,土木学会年次学術講演会,第56回Ⅱ部門,2001年
- 「津波の水理実験と被害予測法」,電力土木,321号,2006年
- 「マルチ(波浪・津波)造波水路の更新・増強」,土木学会年次学術講演会,第71回Ⅱ部門,2016年