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水曜会:社内講演会の記録

812015年9月9日(水)

岸 和郎K.ASSOCIATES/Architects

デッドエンド・モダニズム

水曜会としては92年の「ダイハード・モダニズム」以来、23年振りとなるプロフェッサー・アーキテクト岸和郎の講演会。
私の恩師でもあり、当時の講義内容を思い出しつつ聴講した。当初用意されていたという「山野井の家」や、アジアでのプロジェクト等いくつかの近作紹介をすることなくタイムアップとなったが、その分、設計活動の原点となり、建築家としての「立ち位置」を決めるきっかけとなった、古今東西のさまざまな建築への深い造詣や想いが存分に語られることになった。
質疑応答では、この23年間の「素材の扱い方」、そして自身が活動する「京都との距離感」に対する考えの変化が語られた。92年頃は抽象を志向していたが、その後、紫野和久傳において中村外二工務店との協働により、それまで避けようとしていた「京都を引き受け」「意識的に素材感を出す」ようになったという。その辺りを、来年のギャラリー間で開催されるという展覧会「京都へ還る」でも目にすることができるのでは、と楽しみである。
講演会を通して感じたことは、尽きることのない建築への興味であった。デッド・エンド=行き詰まりといいながらも、かなたに、建築の可能性を確かに信じているように感じられた。私が学生だった2000年当時、ある授業の中で「建築家の寿命は10年」と仰っていた恩師が、15年経った「今」も一寸もぶれずに建築作品をつくり続け、疾走する。その背中にあらためて勇気づけられた。

(三木 貴│KAJIMA DESIGN)

写真:岸 和郎
岸 和郎
1950年
横浜市生まれ。
1975年
京都大学工学部
建築学科卒業
1978年
同大学院修士課程
建築学専攻修了
1981年
岸和郎建築設計事務所を設立
1981年
京都芸術短期大学、京都工芸繊維大学、京都大学、京都造形芸術大学にて教鞭をとる

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