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水曜会:社内講演会の記録

832016年2月24日(水)

内田 祥哉東京大学名誉教授

もっと、造ったり考えたり

47年に逓信省で設計活動を開始してから、現在でも設計を続けておられる内田祥哉氏の講演会。氏の作品を年表でまとめてみると50年近く2~3年に1作品のスパンでコンスタントに発表されているのに驚いた。半世紀以上も設計活動を継続しているのだ。
当日の会場は満員で出席者は若手から50代までと幅広く、氏への関心の高さが伺えた。戦後の復興、近代建築、ポストモダン、2000年代と建築を造り続けている御年90歳になる大建築家の言葉に、尊敬の念を覚えながらも、笑いを織り交ぜ建築を無邪気に語る姿に若年ながら元気をいただいた。

私は恥ずかしながら水曜会の講演が決まるまで、氏を構法に寄った建築家だと思っていた。大学講義の教材「建築構法」を取り纏めていたからだ。講演を通して、構法の研究に留まらず、氏の思考が建築のディーテールから社会全体へと一貫してつながっている射程の広いものだと思い知った。

講演では自身の建築家としてのスタンスを工学と科学の違いを引き合いに出し、説明されていた。工学は「その時点で役に立つか」が問われ、科学は「未来永劫で普遍的なもの」かが問われるという。建築家は「社会の現実に即応する建築」を造ることを命題とし、時代に沿うように建築を造る必要があると語っていた。
構法やモデュールの研究をされていたのも建築家の眼や経験を通して、質を伴った構法を確立し、広く社会に流通させることで社会全体が豊かになることを目指していたのだ。
みんなが集まる建築をつくることが社会にコミットするひとつのアプローチであるが、もっと上流の建築の仕組みからアプローチする氏への現代社会への底知れない貢献に感服した。

(栗間 敬之│KAJIMA DESIGN)

写真:内田 祥哉
内田 祥哉
1925年
東京生まれ
1947年
東京帝国大学第一工学部建築学科卒業
1947年
逓信省入省、電気通信省を経て、日本電信電話公社建築部
1956年
東京大学にて教鞭をとる(1986年退官)
1986年
東京大学名誉教授
1986年
明治大学教授、金沢美術工芸大学、工学院大学にて教鞭をとる

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