新年を迎えて 社長 天野裕正 新しい年を迎え , 鹿島グループの役員 , 社員とご家族の皆さまに年頭のご挨拶を申し上げます。鹿島グループ中期経営計画 (2021~ 2023) は , 本年 3 月をもって区切りを迎えます。計画に定めた経営目標に対してほぼ順調に進捗しており , 国内外で活躍している社員の皆さんの尽力に感謝したいと思います。本計画には『未来につなぐ投資』という副題を付けていますが , R&D( 研究技術開発 ) やデジタル関係の投資 , 不動産開発投資 , 事業領域の拡大に向けた投資 , さらには事業の基盤となる人材への投資など , 持続的な成長に向けての種まきが進んでおり , その成果の一部が既に現れてきていると評価しています 。そして現在 , 本年 4 月からスタートする次の中期経営計画を検討中です。世界的なインフレの進行や地政学リスクの増大など , 不透明な経営環境に留意する必要はあるものの , 順調に進んできた現中期経営計画の路線を基本的には継続することを考えています。計画の骨子としては ,1 国内建設事業の深耕 ,2 成長領域の伸長 ( バリューチェーン拡充 , 不動産開発事業 , 海外事業 ),3 技術立社としての価値創造 (R&D・イノベーションの推進 ), そして 4サステナビリティ ( 人的資本経営 , 地球環境への貢献 ) の4 つを考えています。このうち , 私が鹿島グループの共通基盤と位置付けたいのが技術とサステナビリティです 。技術という視点では , 全社規模での R&Dも勿論大切ですが , 私が特に大事にしたいのは , 現場の最前線における , 社員の皆さんの気づきや知的好奇心 , 探求心から生まれる技術です。このような挑戦の積み重ねが鹿島グループの競争力の源泉となり , 技術立社としての持続可能性が高まると考えています。こうした取組みを互いに評価し , 楽しみ , 刺激し合えるような風土となれば , 一人ひとりが主体的に仕事に向き合い , 充実した生活を送ることができるようになると思います。本年 4 月から働き方改革関連法が建設業に適用されますが , 現場を支える協力会社の技能者の方々も含むすべての人が , 働きがいとやりがいを持って , 自己の能力を最大限に活か す環境を作り出すことが , 我々の人的資本経営の根幹になると考えます。地球環境への貢献については , 我々建設業は , 地球環境に少なからず影響を与えていますが , これを逆に脱炭素化などに貢献できるチャンスと捉えて , 技術開発や設計・施工面の工夫を進めていきます。鹿島グループの前向きな姿勢を社内外に示すために , 次期中期経営計画とあわせて ,『鹿島環境ビジョン : トリプルゼロ 2050 』の見直しも行う予定です。次期中期経営計画においては ,「どういう会社を目指すのか」を示したいと考えています。社員の皆さんに加え , 鹿島グループへの就職を志す方々を含むあらゆるステークホルダーに会社の方向性を共有していただくことが , 鹿島グループの持続的な成長につながると思います。顧客・社会からの信用によって支えられてきた鹿島グループが , 将来にわたって「良い会社」であるために , 一丸となって取り組む年にしたいと思います。 04 KAJIMA 202401
年頭所感 会長 押味至一 新年あけましておめでとうございます 。昨年は , 物価・資材価格が高値で推移する中 , 好調な企業業績や大幅な賃上げの動きなど , 長年続いたデフレから経済の好循環への兆候が見られたように感じます。建設業においては , 年々深刻化する担い手の減少や高齢化に加え , 民間建設投資の時期集中・局所大型化など , 厳しく難しい経営環境が続くものと思います。今年もまずは初心に立ち返り , 現場第一主義をモットーに全社一丸となって , 安全・品質を始めとするあらゆる課題に果敢に取り組んでいただきたいと思います。また , 昨年は , 世界で生成 AIの話題が大きく盛り上がった年でした。実用に耐えうる生成 AIの登場・発達によって , 従来の製品やサービスなどのビジネス面に加え , 職業や働き方も , 既存の仕組みが大きく変わろうとしています 。もちろん建設業も例外でなはく , 当社でもKajima ChatAIの運用を始めており , 積極的に生成 AIの活用を進めることで ,AIによる淘汰に立ち向かっていく必要があります。しかしながら , 多様な地形・土地条件における単品受注生産という事業活動の中で , 感情のある生身の人間が , その信用・信頼に基づき , 物理的な物質・物体を扱う建設生産において , 我々が長年培ってきた技術力は一朝一夕に生成 AIに代替されるものではありません … という私の考えも数年後には笑われているかもしれません。それくらい先の見えない時代だからこそ ,『事業成功の秘訣二十ヵ条・第十四条 “ 新しい考え , 新しい方法の採用を怠るな ”』を今一度思い起こし , 様々な変化に柔軟に対応していくことが大切だと思います。ところで , 一昨年の起工式に参加した「ハイパーカミオカンデ」については昨年の年頭所感でも触れましたが , 昨年末に再び訪れました。アプローチ坑道とその先の巨大な実験水槽の上部掘削が進み , 直径 69m・高さ21mのドーム部が姿を現しており , そのスケールに圧倒されました 。今後 , さらにその下に高さ73mの円筒水槽部が出来上がると , 世界最大規模の地下水槽となるそうで , 現場はまだまだ息を抜くことのできない状況でした 。また , 近傍では , 当社の研究開発の一環として , トンネル施工の自動化に向けた試験坑道の掘削が進んでいます。こうし た土木工事以外にも , 建築工事での自動墨出しロボットや溶接ロボットによるスマート生産技術など , 自動化や施工合理化においてもハイパーカミオカンデ工事とともに着実な進展を期待しています。さて , 今年の干支は「甲辰 ( きのえ・たつ ) 」です 。「甲」は , 物事の始まり・一番・優勢である様子 ,「辰」は活気・躍動・勢いのある様子で , すなわち「甲辰」は成長が成果として現れることを意味するようです 。鹿島グループ内の研究テーマや取組み課題に , 成長が成果として現れることを期待したいと思います 。そして社員のみなさん自身の成長や成果がどのように現れたか , その成功要因は何で , 至らない点はどうだったか , それを踏まえて今後どうするか , 改めて検証し決意を新たにする年にしてはいかがでしょうか。最後になりましたが , 鹿島グループの皆さんとご家族のご健勝とご多幸 , ならびに世界中の現場で働く方々の安全を祈念し , 新年の挨拶といたします。 05 KAJIMA 202401