新しい年を迎え,世界中で活躍している鹿島グループの役員,社員とそのご家族の皆さまに年頭のご挨拶を申し上げます。 私は社長就任以来,鹿島グループの生業である建設業とは何かを問い続けてきました。建設業の本分は,顧客,さらには広く世の中のために良質な社会的資産を形成し,その価値を維持・向上させることにあります。私は,その過程においてどういうサービスを顧客に提供できたかということの積み重ねが,今日に至る“鹿島という名の信用”につながってきたと思います。最前線で顧客と直に接する現場,設計,営業,開発などの社員が,顧客も気づいていないニーズを捉えて具現化すること,すなわち顧客の課題・要望に寄り添う誠実な姿勢にこそ,鹿島のモノづくりの神髄が最も表れるのではないでしょうか。完成した建設物だけではなく,完成に至るまでのプロセスや完成後のプロセスも含めて顧客に評価いただきたいというのが私の思いです。“鹿島という名の信用”について考えるとき,私たちの絶対的な基盤となるのが品質です。技術的に裏付けされた「鹿島品質」の建設物を顧客そして社会に提供し,その経済活動や生活を守ることが鹿島グループの使命であり,経営の生命線であることを十二分に認識しなければなりません。私たちの根底に流れている品質管理の要諦の一つひとつを実直に守る,言い古された言葉ではありますが,「基本に忠実に」「正しいことを徹底する」が品質管理の原点です。特に,現場,設計の社員には,社会的資産に「鹿島品質」を体現するという矜持を常に持っていただきたいと思います。 私たちが将来にわたって顧客に選ばれるためには,毎回異なる現場条件の中で,必要な場所に必要な人とモノと技術をアセンブルし,それらを組み合わせることで課題を解決する基礎力を鍛えておくことが大事です。この基礎力は他産業にはない建設業ならではの強みであり,最前線で地道に実績を積み上げている現場へのリスペクトを忘れてはなりません。この基礎力を言語化するために進めているのがナレッジの整備です。社員一人ひとりが試行錯誤した過程,すなわち苦労したこと,失敗したこと,成功したことを蓄積し共有することがナレッジ活動の土台です。これらを鹿島グループの組織知とした上で,皆さんからの意見を取り入れて日々改良を続ける自律的なサイクルにより,技術立社としての持続可能性をさらに高めていきたいと考えています。 最後に,昨年4月にスタートした『鹿島グループ中期経営計画(2024∼2026)』は,間もなく1年目を終えようとしています。業績は順調に進捗していますが,私たちはこの先も物価上昇や労働力不足といった問題に加え,政治・経済動向や自然災害といった予測が難しい問題にも向き合わなければなりません。そうした中でも,生産性向上と働き方改革をさらに進めるため,緒に就いたDX活動の歩みを加速させていきたいと思います。「鹿島グループのありたい姿」の実現に向け,一丸となって挑戦を続ける一年にしていただきたいと思います。04KAJIMA202501新年を迎えて社長 天野裕正
新年あけましておめでとうございます。 昨年は一昨年に引き続き,物価・資材価格の高騰や人員不足等により見積価格や工期など,お客様のご期待に沿えないことも多々あり,重苦しさを感じた一年でした。そのような状況になんとか知恵を絞って立ち向かっている鹿島グループの皆さま一人ひとりに改めて感謝申し上げる次第です。 今年も先の読みづらい政治・経済状況が続きそうですが,まずは初心に立ち返り,安全・品質の基本を見つめ直し,誠実な物づくりに専心していただきたいと思います。「決心せよ!今日一日の無災害」「ひとつひとつ心を込めた物づくり」です。 さて,年々危機感が強まる建設業の担い手不足に関して,私が副会長を務める業界団体(日建連)では,国や他団体とも協力して,建設業を魅力的な産業とすべく「新4K」を掲げて取り組んでいます。給与(K),休暇(K),希望(K),そしてカッコいい(K)の4つの“K”です。 このうち建設業における「希望」とはなんでしょうか。成果を上げれば高い評価を得られリーダーになれる,安心した退職金制度がある,独立起業が目指せる,等々があるかもしれませんが,私は次のように考えます。日々積み重ねた経験や知識,高めた技能・技術力,習得したノウハウなどが,必ず自分の大きな財産となり,中長期的に社会で活躍でき,世の中に価値を提供し続けられる,そう確信して仕事に取り組めることが「希望」なのではないかと思います。昨今は若い世代を中心に短期成果を求める“タイパ重視”の傾向がありますが,建設業は人材の成長にも建造物の構築にもある程度の時間が必要です。決して焦らず,日々の努力がきっと実を結ぶ,そう信じて,腰を据えて地道に取り組むことが大事だと思います。 ところで,3年前の起工式に参列した「ハイパーカミオカンデ」については毎年の年頭所感でも触れていますが,現状は,巨大な実験水槽の掘削が進み,円筒部下方の難しい施工局面に来ています。こちらも焦ることなく,この世界最大規模の地下水槽の完成が,必ずや日本の科学技術の発展につながると信じて,鹿島の技術力を総動員し慎重に施工を進めていただきたいと思います。 さて,今年の干支は「乙巳(きのと・み)」です。「乙」は,発展途上の状態,「巳」は極限まで成長した状態を示し,すなわち「乙巳」はこれまでの努力や研鑽が実を結び始める時期を示唆しているようです。つまり,鹿島グループのこれまでの取組みが発展途上のまま持ち越すか,成果となって現れるのかは,まさに今年の皆さんの努力にかかっていると思いますので,この年始に改めてそれぞれの新年の決意をしていただければと思います。 最後になりましたが,鹿島グループの皆さまとご家族のご健勝とご多幸,ならびに世界中の現場で働く方々の安全を祈念し,新年の挨拶といたします。05KAJIMA202501年頭所感会長 押味至一