20KAJIMA202502新たなランドマークを目指し若手社員が大奮闘「札幌4丁目プレイス」(仮称)4丁目プロジェクト新築工事札幌市内屈指の繁華街に位置する南1西4スクランブル交差点。この一角に面し,地域のランドマークとして親しまれてきたファッションビル「4丁目プラザ」を解体し,新たに当社が開発するオフィス・商業施設の複合ビル「札幌4丁目プレイス」が誕生する。現在,当社の先端技術を使いながら若手社員が現場を牽引し,施工を進めている。知恵を絞り未経験の課題へ立ち向かう,彼らのエネルギー溢れる挑戦をレポートする。鹿島が手掛けるオフィス・商業複合ビル 札幌市にある南1西4スクランブル交差点(4丁目十字街)は,札幌市営地下鉄南北線,東西線,東豊線の全てが乗り入れる「大通」駅と,札幌市電「西4丁目」の両駅がすぐそばに位置し,商業施設が立ち並ぶ。 本事業は,商業の中心地で若者文化を牽引し,札幌大通地区のランドマークとして親しまれてきた「4丁目プラザ(通称,4pla)」跡地の開発事業。当社の企画・開発・設計・施工により,地上13階,地下2階建て,延床面積約1万8,905m2のオフィス・商業複合ビル「札幌4丁目プレイス(商業施設名称,4PLA)」に生まれ変わる。 長年,地元に愛されてきた4plaの歴史を継承し,多くの人々に「新しさ」と「特別感」のある生活を提供する商業施設でありたいという想いを,施設コンセプトである「Sapporo4thplace∼自由な価値観・ライフスタイルを育む新しい活動の場へ∼」に込め,大文字で「4PLA」と名付けた。現場一丸で誇りある仕事を! 本工事は4plaの解体から始まった。着工時に現場所長としてプロジェクトを率いてきた北海道支店の柳詰俊也前所長(現,建築工事部長)は,「1972年札幌オリンピックに向け,地下鉄開通,道路拡幅などとともに整備されたこの近辺の建物も徐々に更新されつつあります。札幌を代表してきたこの地で,改めて新たな施設の建設に携われることに,現場で働く一人ひとりが誇りを持って各々が使命を果たし,胸を張れる建物にしたいです」と工事への想いを語る。これは“誇りある仕事にしよう!”の現場スローガンにも込められている。「生産性向上を目指し,型枠一本締め®工法※などの新技術や二段打ち工法な地下鉄東西線札幌市電大通西4丁目南地区第一種市街地再開発事業旧ホテルオークラ札幌札幌三越札幌PARCO西4丁目駅狸小路駅札幌22スクエア旧ダイビルPIVOTmoyukSAPPORO南1条通狸小路商店街丸井今井ル・トロワザロイヤルパークキャンパス札幌大通公園(仮称)桂和大通西ビルほくほく札幌ビルIKEUCHIGATE大通駅大通公園さっぽろテレビ塔PIVOTCROSS(旧IKEUCHIZONE)地下鉄南北線地下鉄東豊線札幌駅前通どを採用した挑戦と学びの多い現場です」。所員にとっては未経験の施工方法が多いため,情報共有を徹底し,工事に関わる全員が同じ方向を目指して進んでいけるよう,現場の統括者として常に意識してきたという。受け継いだ計画をカタチに 昨年3月,柳詰前所長から奥田尚充所長にバトンが引き継がれた。奥田所長は,当現場着任前に建築管理本部に在籍していた経験から,生産性向上に貢献する技術や取組みに精通している。「前所長時代から,当社の新技術や工法を取り入れ,今はこれまで着実に積み上げてきた計画を,いかにカタチにするかを考えています。特に鹿島式ストレート梁工法と当社が開発した現場溶接ロボットを用いた梁下フランジの上向き溶接は,高い溶接品質と生産性向上効果を兼ね備えているため,非常に効果的でした」と説明する。「鹿島式ストレート梁工法」奥田所長柳詰建築工事部長市民・来街者・ワーカーが思い思いに過ごせる空間まちのリビング「4PLAPARK」(イメージ)photo:takuyaomuraphoto:takuyaomura完成予想パース【工事概要】(仮称)4丁目プロジェクト新築工事場所:札幌市中央区事業主体:当社開発事業本部設計:当社建築設計本部用途:商業施設,オフィス規模:S造一部SRC造 B2,13F,PH1F 延べ18,905m2工期:2022年3月∼2025年3月(北海道支店施工)※当社,岡部,丸久,楠工務店との共同開発
てきた。また人通りの多い地下街と直結しているため,解体工事でも工夫を凝らした。狭い敷地や,施工時の安全性を考慮し,既存地下外壁を山留壁として利用する方法を採用したが,既存地下外壁と新築躯体との隙間が最小10cmほどの箇所もあり,人が入るスペースがない。そのため,解体工事期間中にこの隙間をコンクリートで充填し,地下躯体構築後の作業を先行して施工することで,地下工事の21KAJIMA202502では,CFT柱と鉄骨梁の接合部に,孔あき鋼板ジベルを用いて,接合部を補強する技術を活用する。梁端フランジを水平ハンチ※で補強しないで済むため,高い構造性能を確保しながら,柱周りの有効面積が拡大する。さらに当現場では,梁下フランジをロボットによる上向き溶接としたことで,溶接品質と構造性能がより一層向上するとともに,現場での溶接作業量も削減できたなど,生産性向上の効果も高かったという。◀︎従来工法施工を進める鍵となる工務 取材に訪れた昨年11月下旬,現場は,今年3月末の竣工に向け,新築各階の内装,設備工事を進めていた。解体工事着手時に着任し,現在は工務を取り仕切る堀泰健工事課長は,解体工事を担当した後,新築工事では,施工計画やモノ決めといった工務の中核を担う。「現場は敷地のほとんどを建物が占め,隣の建物と近接しています。現場周辺は市電の電線が張り巡らされているため,車両の搬出入は南側ゲートのたった1箇所のみです」と話す。外部足場を組むスペースが確保できず,立ち上がった2階の本体鉄骨から仮設の鉄骨を張り出し,その上部に足場を組むこともあったほど,難しい施工条件と日々向き合っ※フランジ破断を防止するために,梁端のフランジを拡幅したもの南側の搬出入ゲート(2024年11月撮影)鹿島式ストレート梁工法▶孔あき鋼板ジベルをCFT柱に内蔵することで,水平ハンチをなくし,有効面積を拡大CFT柱と下フランジ下部の接続部分を,現場溶接ロボットにより上向き溶接する水平ハンチなし全景写真(2024年11月撮影)汎用可搬型溶接ロボットを使用した上向き溶接(2024年4月撮影)photo:takuyaomura堀工事課長photo:takuyaomuraphoto:takuyaomura本体鉄骨から仮設の鉄骨を張り出し,その上に足場(白点線内)を構築した(2024年4月撮影)地下1階の山留壁配筋の状況(2022年7月撮影)
22KAJIMA202502生産性向上を図った。 堀工事課長は,これまでは主に,図面通りに施工する工事部隊として現場に携わってきたが,初めて本格的に工務を経験し,施工を進めるためにいかに工務が鍵を握るかを実感したという。「工事も工務も,建物が出来上がっていく過程で非常に醍醐味を感じます。チームで建設する楽しみを味わいながら,竣工に向け邁進しています」。生産性向上を実現した2つの工法 新築工事全般を束ねる石丸時大工事課長代理は,堀工事課長とともに現場を牽引する工事部隊のキーマンだ。その石丸工事課長代理が最も苦労したと語るのは,厳冬期にぶつかる「二段打ち工法の1階先行床打設」だった。地上鉄骨と地下躯体を並行して構築するために,基礎打設,0節鉄骨建方後に,1階床を先行打設した際,マイルストーン遵守のため「寒中屋根」を設けてひたすらに進めたという。「降雪の中で作業を進めるため,寒中屋根をかけたものの,ヤードの狭さと搬出入の調整で大きな苦労を伴いました。他現場での知見を参考にしながら,本社・支店各部署と連携を図り,なんとか完了させることができました」と胸をなでおろす。 また,当現場の生産性向上に貢献した技術は他にもあったと話す。新築躯体構築で採用した「型枠一本締め工法」は,“軽い・簡単・早い”を実現する型枠工事を省力化する新工法だ。本工法で使用する新型アルミパイプは,在来工法の鋼製パイプと比べ大幅な軽量化と高強度化を実現。これ現場出入り口にある仮囲いのデザイン赤く塗られた鉄骨(現場撮影) 現場の仮囲いには,ヘラルボニー(岩手県盛岡市)と協働して,主に知的障がいのある北海道在住アーティストの作品を展示した。 仮囲いの撤去に伴い,展示作品はパネル化し,4PLA館内に展示される予定となっている。工事現場の仮囲いを「ミュージアム」に~SOCIALARTMUSEUM~columnによりパイプの本数も2本1組から1本に半減できる。施工時も,新開発のパイプジョイントと新型フォームタイを用いることで,かぶせて嵌め込むだけの簡単で安全な施工が可能だ。石丸工事課長代理は本工法について「型枠工の作業効率が格段に上がり,かつ,狭い現場の中で型枠資材が半減したことも搬出入とヤード問題の解消に繋がり,効果大でした」と現場への貢献度の大きさを語る。 ここまで進んだ現場を振り返り,感慨深さを感じると同時に,組織づくりの難しさも痛感したという。「皆が同じ方向を向いて工事を進めるため,情報共有と展開しやすい二段打ち工法による1階先行床の施工。上部に見えるのは寒中屋根(2023年12月撮影)クレーンの周囲には寒中屋根が設置されている(2023年12月撮影)石丸工事課長代理photo:takuyaomura街に溶け込むSOCIALARTMUSEUM仮囲いに個性溢れるアートが登場Shun「大通公園」ドローン全景(2024年11月撮影)南側ゲート
23KAJIMA202502フラットな組織を意識してきました。今後は情報展開が不得意な人からの引き出し方を課題に,組織づくりにより力を注いでいきます」(石丸工事課長代理)。周りを巻き込み,施工を進めていく彼らの姿を見て奥田所長は「これだけの規模の現場の次席とし壁工事における型枠工法の比較パイプ重量:5.46kg/m=2.73kg/m×2本パイプ重量:1.62kg/m使用材料が軽量化され,簡単で早く安全に施工が可能に地下2階の壁工事を型枠一本締め工法で施工(2024年3月撮影)型枠一本締め工法在来工法鉄骨建方は,南側の道路を全面封鎖し,夜間作業で施工した(2024年5月撮影)型枠一本締め工法の紹介動画は,鹿島公式YouTubeチャンネルから集合写真て,工事と工務を担う堀工事課長と石丸工事課長代理は,全国でも最若手コンビだと思います。竣工に向け,より一層力が入る中,時間外労働規制の遵守と,皆が日々気持ちよく働ける環境づくりを心掛けていきます」と語る。新たなランドマーク誕生を目photo:takuyaomura新型アルミパイプ新型フォームタイパイプジョイント指し,現場はラストスパートをかける。