14KAJIMA202506社会情勢や働き方,家族のあり方に対する価値観の変化に対応するため,状況に合わせて必要なサポートを受けられるよう,人事制度の見直しを行った。育児・介護休業法の改正施行(2025年4月1日)に伴い,育児期の柔軟な働き方を実現するため,育児との両立支援の制度を拡充した。 内容配偶者の転勤などに伴い転居し,その地に同行し生活するために勤務の継続が困難な場合,本人の申請により自主的に休職することができるいわゆる事実婚や同性婚のパートナーシップを法的な婚姻関係と同等とみなし,手当などの支給や制度適用の対象とする 改定箇所左記に「感染症に伴う学級閉鎖」,「入園(入学)式・卒園式への出席」を追加小学校3年生修了までの子小学校就学前の子を養育する者30日 改定箇所左記に加え,配偶者の就労場所などの事情により結婚時点で別居となる場合や,家族の介護,病気,子の修学など,配慮すべき事情により別居となる場合についても支給対象とする制度対象者を,退職時に3年以上在籍していた社員とする勤続満30年勤務者へ付与する15日間の休暇は,2回まで分割取得できる 新規制定◦配偶者同行休職制度取扱規則◦パートナーシップ制度規程 拡充内容◦子の看護休暇の見直し 取得事由拡大             対象となる子の            範囲拡大◦所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大◦育児休業に充てられる積立休暇の 上限日数拡大 改定◦別居手当関連規程◦カムバック制度取扱規則 ◦リフレッシュ休暇取扱規則DE&Iを推進する人事制度仕事と育児の両立支援の制度※制度の制定・改定については,誌面の都合上,一部省略しているため対象者は必ず実際の規程を確認してください第1回DE&Iを推進する制度と取組み多様性をチカラに,次の100年をつくる! 改定前家族と同居中の社員が,社命による転勤により,通勤できない地に赴任する場合,別居手当・別居者帰宅旅費を支給する制度対象者を,退職時に5年以上在籍していた社員とする勤続満30年勤務者へ付与する本休暇は,連続15日間以内で取得できる 改定前「病気」,「けが」,「予防接種」,「健康診断」小学校就学の始期に達するまで3歳に満たない子を養育する者20日

15KAJIMA202506までに行う。 当初の懸念は“発注者の理解”が得られるかだったが,一昨年の年末に,『鹿島働き方改革3つの宣言※』の説明に行ったところ,快く協力してもらえた。今では発注者の社内会議も9時から16時までに行われるようになったという。強まる連帯感 当現場で施工管理を担当する西川由依工事課長代理は,育児フレックスで8時半から16時半までの勤務。この取組み前は,朝と夕方の打合せには参加できなかった。しかし,今では「会議途中に,『フレックス勤務なので失礼します』と退席しなくてよくなりました。また,参加者の意見をより深く聞いたり,自分の意見も聞いてもらと話すのは現場の指揮を執る石本健夫所長。9時から16時に会議を設定し始めたことで,早く帰れる雰囲気になったと変化を感じている。実感するメリット 従前16時半開始の定例会議終了後に,現場の最終確認や翌日の段取り作業が残るため,残業せざるを得なかったが,現在はその状況が改善された。若手の中核を担う上野拓斗工事担当は,「全員が決められた時間内でやるという意識をもつことで,自分の仕事も計画的にでき,効率化に大きくつながっています。確実に事務所全体が早く帰れるようになっていると思います」と取組みのメリットを実感している。合理的な会議時間と発注者の理解 「フレックスタイムで働く育児中の社員も支障なく会議に出席できるだけではなく,合理的かつ柔軟な働き方に適応しています。労働時間への意識も高まり残業時間の削減に直結します」と富木卓所長は取組み推進の意図を語る。朝はメールの確認や現場の段取りを済ませてから会議に参加できる。作業間連絡調整会議はもちろん,緊急を要する場合を除いて,発注者との会議も原則9時から16時時間を決めることが重要 当現場では当初,16時半から行っていた日々の所内定例会議を,施工担当ごとの分科会も含め15時半から16時には終わらせることにした。あわせて,毎月の発注者や設計者との会議も夕方ではなく,昼間の時間帯に変更した。 「労働時間を短くする,あるいは社員が楽しく仕事をするためには,会議の時間が決まっていることが重要」(仮称)瓜生堂車両基地整備工事場所:大阪府東大阪市発注者:大阪モノレール設計:(土木)当社土木設計本部・関西支店土木部,(建築)関西支店建築設計部用途:車両基地 規模:軌道施設工(橋脚・基礎),流出抑制施設工(雨水貯留槽),建築工事ほか工期:2020年9月∼2028年2月(関西支店施工)三会堂ビル新築工事場所:東京都港区発注者:農林水産奨励会,当社開発事業本部設計:当社建築設計本部用途:事務所,店舗,集会場,駐車場規模:S(CFT)造一部SRC・RC造 B2,19F,PH1F 延べ約35,000m2工期:2024年7月∼2027年9月(東京建築支店施工)重要な会議は9時から16時に終わらせます!現場の働き方2023年から働き方改革の取組みの一環として,打合せは“9時から16時まで”に行うよう会社として取り組んでいる。これは,時間外労働の削減だけではなく,フレックス勤務者の働きやすさに大きく寄与する施策となる。実際に取り組んでいる土木・建築現場の声を届ける。所内会議の様子,左側の奥が富木所長石本所長(左から2番目)と所員柿木工事課長(左)と上野工事担当(右)フレックス勤務の西川工事課長代理※鹿島働き方改革3つの宣言えたりする時間ができて連帯感も強くなったと感じています」と育児と仕事の両立のしやすさを話す。当現場では,さらにLINEWORKSを導入し,夕方以降に発生した連絡事項も共有できるように変えるなど,環境に左右されない働き方に向け現場が一体となって取り組んでいる。 フレックス勤務を活用している柿木祐希工事課長は,「効率化にもつながり,残業時間が減ったことで,家族と過ごせる時間が増えて,妻や子どもが喜んでくれています」と笑顔を浮かべる。最後に,「これから現場が繁忙になるにつれて,集まりにくくなるなどの課題は出てくるかもしれませんが,ITツールを活用するなどして継続できるように工夫していきたいです」と2人は声を揃えて語った。当社は「多様性をチカラに,次の100年をつくる!」をキャッチフレーズに,DE&Iを強く推進している。本誌4月号の特集に続き,このコンテンツを通じて,DE&Iへの理解をさらに深めていこう。第1回は,今年4月に改定および新たに制定した人事制度と,働きやすさ向上を後押しする取組みを紹介する。