16KAJIMA202506コンクリート構造物の施工に欠かせない型枠工事※1では,上下2本1組の鋼製パイプを手で支えながら締め付け作業を行う在来工法が70年以上利用され続けていた。そのようななか,新たに当社らが開発※2した「型枠一本締め®工法」は,使用部材の軽量化とパイプの1本化など施工を簡素化し,工事の省力化と安全性の向上を実現。使いやすさが評判を呼び,適用現場と適用量は着々と拡大している。型枠工事の“当たり前”を70年ぶりに覆した新工法。その全容を紹介する。社内外で各賞を受賞特長はズバリ!“軽い・簡単・早い”#KAJIMA#kajimaステキシェアいいね!#型枠一本締め工法Topic※1コンクリートを所定の形に成形するための枠を構築する。建物の品質に大きく影響し,躯体工事の中でも重要な工事 ※2当社,岡部,丸久,楠工務店との共同開発(特許第7653682号,NETIS:CB-240022-A)70年ぶりの新工法誕生型枠工事は一本締めだ!2本だったパイプが1本に?! 型枠工事は,長さ3.5m,重さ約2.73kg/mの鋼製パイプを2本1組として型枠を組んでいく在来工法が一般的で,手作業で行われることから,重労働であり,かつ熟練の技術を必要とする。しかし昨今,技能◆第54回(2025年)日本産業技術大賞審査委員会特別賞(主催:日刊工業新聞社)◆2025年日本コンクリート工学会賞技術賞(主催:日本コンクリート工学会)◆令和6年度日本アルミニウム協会賞開発賞(主催:日本アルミニウム協会)◆令和3年第42回協力会社改善事例全国発表会鹿栄会会長賞◆2023年度社長賞(2024年度期首表彰)技術開発表彰開発スタートから約7年,現場への実適用が進むとともに様々な賞を受賞し,注目度はさらに上昇中!・鋼製パイプを新型アルミパイプに変更 さらに,本数を2本から1本にしたことで, 約1/3の軽量化を実現する・本数の半減により,運搬車両台数が減少 CO2排出量の削減など環境への負荷も 低減する・かぶせてはめ込むだけのU字型パイプ ジョイントが,パイプ同士をつなげる・型枠としての強度を担保する 新型フォームタイは,下のボルトにパイプを 預けられ,両手での締め付け作業を 可能にする者の高齢化や若年入職者の減少,外国人労働者の増加が課題となり,身体的負担の軽減に加え,誰でも簡単・確実に施工ができる工法が求められていた。そこで当社らは,2本1組の鋼製パイプと同等強度の新型アルミパイプを考案し,本数を2本1組か新開発のパイプジョイントで,簡単に1本化できる第54回日本産業技術大賞贈賞式。表彰状を受領する竹川専務(提供:日刊工業新聞社)型枠一本締め工法の紹介動画は,鹿島公式YouTubeチャンネルから(ショート版約3分)(通常版約7分)新型アルミパイプ新型フォームタイパイプジョイント❶新型アルミパイプ❷パイプジョイント❸新型フォームタイ7m2/人655.8618%UP6.924在来工法型枠一本締め工法※RC5階建における型枠組立の場合社外社内▼▼鋼製パイプ:2本1組(約2.73kg/m×2本)新型アルミパイプ:1本(約1.62kg/m×1本)在来工法型枠一本締め工法2本の重い鋼製パイプを手で支えながら,フォームタイで締め付ける在来工法型枠一本締め工法新型フォームタイに軽いアルミパイプを預けて両手で締め付けるため,安全に作業ができるら1本へ半減。さらに,施工も簡素化し「軽い・簡単・早い」を実現する型枠一本締め工法を開発した。3つの部材で構成軽い簡単・早い重量約1/3歩掛りの比較
17KAJIMA202506#北は北海道帯広市,南は沖縄県石垣島まで展開中 #土木工事でも導入中 #まずは使ってみて! #リースもできますユーザーファーストの新工法。「まずは使ってみて」voice2voice1いざ,現場に導入。「これからも使いたい」設計・製品実験・施工品質:東京建築支店建築工事管理部工務グループ小野寺利之グループ長施工性検証・施工要領・知的財産:建築管理本部建築工務部工事グループ佐藤貴弘次長全体推進・技術開発工程・予算管理・学会対応:建築管理本部建築技術部技術企画グループ掛谷誠課長2018年,都心大規模再開発の基礎躯体工事における合理化施工の検討をきっかけに,型枠一本締め工法の開発がスタート。当初から開発に携わり,この工法を成功に導いた,中核メンバーに想いを聞いた。掛谷 開発当初,実はパイプを「2→1.5本に減らす」方向で検討が進んでいました。しかし,技能者の「1本にできたらマジですごいよ!」というひと声で,一気に熱が入りました。ユーザーからの率直な意見が当工法誕生への道しるべとなりました。佐藤 しかし当時は,コロナ禍の影響もあり,予算削減など課題が山積みでした。それでも「なんとかして1本となる新工法の開発を続けたい」という開発メンバーの強い気持ちと団結力が当工法を誕生へ導いた原動力だったと思います。小野寺 型枠一本締めが完成し現場への普及活動を始めたものの,最初は特に熟練技能者の当工法への抵抗感は強かったです。現在はプレスリリースや口コミもあって認知度が上がり,建築・土木問わず,着実に適用現場数が増加し,既に建築19現場,土木2現場で適用されています。また当工法は,使い勝手の良さからリピート率が高く,技能者から「使いやすくていいね!」などと笑顔44で言われると苦労が実を結んだと実感します。佐藤 そうですね。現場から「次も使いたい」と反響があった時は,嬉しいですね。掛谷 私は,パートナー会社を含む開発メンバーが,イキイキとした顔つきで開発に打ち込んでいる瞬間が好きです。それに,数々の賞をいただくことで,みんなのやる気がさらに高まっています。これからも改良を重ね,普及展開を進めていければと思います。全員 当工法を「派手さはなくとも画期的!」と思ってもらえたら本望です。まずは型枠工事の一部への適用でもいいので,リース・購入など現場に合わせた形で導入し,使いやすさを体感してほしいです。型枠一本締め工法の紹介用モックアップ(中央)と第54回日本産業技術大賞審査委員会特別賞の盾と賞状(左右)を手にする当社開発メンバー。左から佐藤次長,小野寺グループ長,掛谷課長建築土木千葉市立新病院整備工事新名神田たなかみえだ上枝工事 当工法を初めて知った時,鹿島スマート生産のようなデジタル化とは真逆のアナログな感じがして「地味で面白い」印象でした。支店からの推薦もあり,部材をリースして基礎免震階の擁壁部分に導入しました。 当初,私も技能者も,耐久性や安全性に不安を感じていましたが,想像以上に強度が高く簡単に施工ができ,安全性の向上を実感しました。 また,導入をきっかけに,関係者一丸で作業効率を高めるための議論を行い,現場がさらに明るくなったと思いま 土木工事では,自動化施工やICT・ドローン技術を活用した施工などが次々と誕生するなか,当工法は,THEアナログです。支店土木部からの情報提供のほか,建築現場での実績や評判も高かったので,社内の建築技術ニュースの記事などで情報収集をしており,「見た目がスッキリしていてかっこいい」という印象を持っていました。現場所長からの熱く,優しいサポートもあり,YouTube動画を見た結果,建築,土木関係なくコンクリート構造物全般に使用できるシンプルな型枠工法であるこ工事概要場所:千葉市美浜区発注者:千葉市病院事業管理者基本設計:日建設計・システム環境研究所共同企業体実施設計:日建設計 用途:病院,保育所規模:SRC造 5F,PH1F 延べ38,832m2工期:2023年12月∼2026年3月(東京建築支店JV施工)工事概要場所:滋賀県大津市発注者:西日本高速道路基本設計:NEXCO西日本コンサルタンツ詳細設計:当社土木設計本部規模:施工延長1,440m(うち,橋長552m※)工期:2019年5月∼2027年7月(関西支店施工)※新名神田上枝工事は大津JCT(滋賀県大津市)∼城陽JCT(京都府城陽市)の開通に向け,施工延長1,440mのうち橋長552mの天神川橋(仮称)の建設をメインとするす。当工法は,当社と協力会社の連帯感を高めるとともに,型枠業界を活性化し,建設業界の魅力向上につながると感じました。 これから導入を考えている方には,迷わずにお勧めする画期的な工法です。(山田和臣工事課長)とが分かり,まずは試験的に導入。部材を購入し,鉛直で施工延長が長く,繰返し転用可能な渓流工事の垂直壁に採用しました。 当初,部材の強度や固定方法に不安がありましたが,問題ないことが確認できました。部材が軽量で資材も少なくなることから,運搬のしやすさ,仮置きヤードが小さくできたことなどメリットが大きく,技能者からは「これからも使用していきたい」と要望が上がるほどでした。 当工法は,特に狭い箇所や人力での運搬が必要な作業,また躯体形状が鉛直で施工延長が長い場合に有効だと思います。今後も積極的に活用し,他現場にも推奨したいです。(松本健太郎工事課長代理)松本工事課長代理当工法を担当した山田工事課長(左)と鳥井翔太工事課長代理(右)新型フォームタイでパイプジョイントを締め付ける様子渓流工事の垂直壁に適用工事全景写真(5月撮影)完成予想パース