新しい年を迎え,世界各所で活躍している鹿島グループの役員,社員とそのご家族の皆様に年頭のご挨拶を申し上げます。 社会経済の構造変化が進む中,各企業は提供するモノやサービスだけではなく,財務戦略や資本効率,さらには働き方や社員エンゲージメント,環境への対応など幅広い視点から評価される時代になっています。鹿島グループも持続可能な成長を実現するためには,社員はもとより,顧客や社会,株主や投資家,協力会社,あるいは就職を志す学生から「選ばれる企業」であり続けなければなりません。 近年,人々の消費に対する価値観は「モノ消費」から「コト消費」へと重心が移りつつあります。さらに,コロナ禍による行動制約を経て,モノを購入・所有することよりも,商品やサービスを通じて,「驚き」や「感動」,あるいは「心地良さ」や「安心感」といった,人間が根源的に持つ欲求を満たす「体験型消費」に,人生の質を高める行為としての価値を感じる傾向がより強まっています。鹿島グループの事業も,単にモノを売ることではありません。施工を核としながら,建設バリューチェーンの上流から下流までを一貫して担い,長期的なサービスを提供しています。つまり,「建設物をつくり,はぐくむ」という一連のプロセスを通じて,顧客や社会に寄り添いながら,「鹿島に頼んで良かった」という「体験」も価値として提供しているのです。 この価値は,鹿島グループだけではなく,協力会社との協働によって生み出されるものですが,安全,品質,そして技術への妥協を許さないこだわりを共有し,ともに誇れる成果物を築きあげていくプロセスは,協力会社や技能者の皆様にとって「鹿島と仕事をしてよかった」という「体験」として心に刻まれ,また鹿島と仕事をしたいという動機づけにもなると思います。 さらには,鹿島グループが長きにわたって改良を重ね,進化させてきた技術を礎として,創意工夫を加えつつ建物や構造物として具現化していくことは,当社グループの価値創造の源であると同時に,社員一人ひとりが,そこに自身の足跡を残すというかけがえのない「体験」であり,仕事への手応えや達成感を得るとともに,人生の糧ともなるはずです。 AIの進化に象徴されるように,技術革新が加速度的に進む現代においては,変化そのもの,さらには変化の先に目を奪われがちです。もちろん,変化に柔軟に対応することは必要ですが,同時に「変わらないもの」に目を凝らし,根源的な価値を見失わないことも極めて重要です。これまで私たちが提供してきた本質的な価値を大切にし,基本に忠実に,正しいことを徹底し,技術力をもって顧客や社会の期待に応えていく。この一貫した姿勢こそが我々の原点であり,鹿島らしい強み,すなわち「鹿島ブランド」としての差別化に繋がるものだと確信しています。 鹿島グループが「選ばれる企業」であり続けるために,役員・社員一人ひとりが原点を見つめ,挑戦と成長を重ねていくことを強く願っています。 04KAJIMA202601新年を迎えて社長 天野裕正

 新年あけましておめでとうございます。 本年2026年は,昭和元年(1926年)から起算して満100年を迎える節目にあたります。社史によりますと,100年前は鹿島組社員200名程度で,そこから激動・苦難・復興の時代を逞しく生き抜き,現在の当社グループの土台を築きました。先人達の努力への感謝の思いと,それを引き継ぎ,この令和の時代に生きる我々が一層社業を発展させていく責務をあらためて強く感じる次第です。 一昨年(2024年)の年頭所感で,生成AIの登場と可能性について述べました。ChatGPTブームから2年以上が経ち,生成AIの性能や活用範囲が目覚ましい進展を遂げる中,当社もKajimaChatAIの開発・普及に相当量の力を入れてAIの世界に挑んでおり,建設業の生産性向上へ一歩一歩進んでいるように感じます。一方,世界中の企業が競うようにAI投資を加速させ,仮想空間だけではなく物理空間にも作用する「フィジカルAI」分野の急速な進歩や,最近では人が細かく指示しなくても自律的に仕事をこなす「AIエージェント」も登場するなど,組織のあり方,経営のあり方,人間の働き方に大きな変革をもたらす,まさに昭和に匹敵する「激動の時代」の到来も予感させます。このAIの大波が真の革命なのか,期待先行のバブルなのか,果たして結末は私には分かりませんが,この機会に,ゼネコン技術者の付加価値とは何か,人間にしかできないことは何か,どうAIを使い何をAIに任せ,我々人間は何をもって世の中に貢献するのか,常に考え続け,問い続けることが重要ではないかと思います。 ところで,2022年の年頭所感から推移を見守ってきた「ハイパーカミオカンデ」が,昨年,地下空洞の掘削を完了し,無事引き渡しを終えました。岐阜の山中,地下600mに直径69m,高さ94mの空間を掘り切るのは大変だったと思います。工事に関わった現場の皆様,大変お疲れ様でした。この後,実際にニュートリノの観測が始まるのは2028年と聞いていますが,令和新時代を象徴する科学技術の発展となることを願うばかりです。 さて,今年の干支は「丙午(ひのえ・うま)」です。前回(1966年)の丙午では,迷信により出生数が大幅に減少したようですが,「丙」も「午」も「火」を表し「強さ,明るさ,情熱,行動力,エネルギー」等を表すようで,日本の少子・高齢化を力強く切り開いて進んで行くには縁起の良い干支なのではと思います。鹿島グループにおいても,皆さんのこれまでの取組みの成果が,強く,明るく,希望に満ちたものとなることを心から願っております。 結びとなりましたが,鹿島グループの皆さんとご家族のご健勝とご多幸,ならびに世界中の現場で働く方々の安全を祈念し,新年の挨拶といたします。05KAJIMA202601年頭所感会長 押味至一