技術は反復練習でしか身につかない。私の持論です。あらゆる技術は繰り返し練習することで身につく。反復練習こそが唯一にして絶対の技術習得方法だと考えています。 私は投手として重要な投球フォームを作り上げる為に、様々なトレーニングによって必要な筋肉を鍛え、それを投げる動作へと連動させてきました。 今では、球速150キロを超えるスピードボールを投げる投手も珍しくありません。アメリカのメジャーリーグには160キロ超えの投手もたくさんいます。しかしスピードというのは大きな武器の一つではありますが、ただ速いだけではプロでは通用しません。重要なのは再現性です。先発投手であれば、一試合に登板して100球か、さらにそれ以上の球数を一定のフォームで投げ続けなければいけません。投球フォームにバラつきがあるとコントロールが定まらない。球種ごとにフォームが違えばプロの打者には読まれて打たれる確率が高くなってしまいます。故障の原因にもなりかねない。毎試合、同じフォームで投げ続け、一年間ローテーションを守り、それを何年も続けていかなくてはならないのがプロ野球の投手です。 私は29年間現役生活を続けることができました。それを支えたのは、高校を卒業してすぐに入団した球団で当時監督をしていた広岡達朗さんによって鍛えられた4年間があったからです。 まだキャンプにも入っていない新人だけの自主トレの段階から、投手と内野手の連携プレー練習、いわゆる投内練習だけでも2時間。ウォーミングアップで100メートル走を100本など。ボールを投げるわけでもなく、当時はなぜこんなことを延々とやらなければいけないのかがわかりませんでした。しかし、気がつけば、私はどんなに練習しても壊れない身体と、投球技術を習得する為に必要な反復練習を長年やり続けられるだけの体力を身につけていたのです。 一見無駄で投球に直結しない練習でも、それを積み上げたことで自分を作り上げ、マウンド上での自信にもつながっていきました。 最近の人なら、やり方が古いとか効率が悪いとか、印象だけで判断して無駄だと決めつけてしまうかもしれません。しかし、私は現在の自分を作ったのは、現代では省かれてしまっていたかもしれないそれらの練習のおかげだと思っています。現役生活が長かった分、たくさんの野球を経験できました。監督として必要な勝負勘も磨かれ、何度もかつての経験に助けられました。 インターネット上に溢れている情報から取捨選択することは効率が良いかもしれません。同時にそれで全てを知った気になってしまうコワさも感じています。 技術とは頭で理解するものではなく、身体に染み込ませるもの。実際にやったことの積み重ねでしか自分自身を作ることはできないのです。 無駄かどうかなんてやってみないとわからない、まずはやってみようよ!と、これからも言い続けていきたいと思っています。30KAJIMA202601くどう・きみやす 元プロ野球選手・監督1963年愛知県生まれ。名古屋電気高等学校(現:愛知工業大学名電高等学校)を卒業後、西武ライオンズに入団。以降、2011年正式に引退を表明するまで、4球団29年間にわたる現役中に14度のリーグ優勝、11度の日本一に輝く。通算224勝。15年から21年まで福岡ソフトバンクホークス監督を務め、5度の日本シリーズを制覇。正力松太郎賞を歴代最多の5回受賞、16年に野球殿堂入りを果たす。20年、監督在任中ながら筑波大学大学院体育学修士取得。22年4月より同大学院博士課程に進学、スポーツ医学博士取得に向け研究を続けている。vol.253