16KAJIMA202512切磋琢磨し鹿島品質をつくる北福島医療センター新築移転工事2026年度も約450人の新入社員を迎えた当社。働き方改革が進むなか,建設現場での若手の働き方や育成のあり方も変化の最中にある。今月の特集では,福島県内の建築現場で,仲間たちと切磋琢磨し成長する若手の姿と,彼ら彼女らを指導する先輩社員の取組みを紹介する。特集042606

17KAJIMA202512コミュニケーションの積み重ね「若手には,まずは技能者と雑談をしなさいと教えています。相手がロボットなら指示を出すだけでいいかもしれないが,現場で働く人は自分と同じモノづくりを志す人。共に働く人に敬意を払い,対話することで信頼関係は生まれます。技能者とのこまめなコミュニケーションは,品質にも安全にもつながります」と語るのは,北福島医療センター新築移転工事の赤石達彦所長だ。北福島医療センターは,2011年の東日本大震災および2021年と翌年に発生した福島県沖地震で,最大震度6弱の揺れを3度経験した福島県伊達市に位置する。本工事は地震でダメージを受けた既存センターの建て替えとして,隣接する敷地にRC造4階建て免震構造の病棟と,S造2階建て制震構造の外来棟を新築するもの。取材に訪れた3月は,病棟の上棟を前に,社員,技能者など総勢約300人が働いていた。この現場の最大の特徴は,所属する11人の施工管理を行う社員のうち,入社2年目までの若手が5人を占める点にある。若手の育成について尋ねると,赤石所長はまずこう答えた。「若手を育てるといっても,工事の安全,環境への配慮,品質,工期などあらゆる面で鹿島レベルを担保することは必須です。現場の最終的な責任は所長である自分が取るという気持ちを常に持っています」。そして,若手への指導内容として,冒頭に書いたコミュニケーションの重要性を挙げた。これは,所長自身の若手育成に対する心構えでもある。「誰もがミスを経験して成長していくものです。私が入社した頃は,ミスをしたら頭ごなしに叱られていましたが,いまは『どうしてそうなったのか』『どうしてそう考えたのか』を聞くことから始め,考え方が間違っていたらそこを指摘するようにしています。052606

06KAJIMA202606躯体コンクリートの打設日は,朝から夕方まで切れ目なく作業が続く結果だけで判断せず,相手の話に耳を傾け,問題の根本を共に探し,解決することが育成だと考えています」。成長を実感できる担当制RC造は様々な建築物に用いられる基本的かつ汎用性の高い構法だが,近年は人件費上昇などの影響を受け,数が少なくなってきている。この現場に若手が集められた理由のひとつがこのRC造にある。工事のメインとなるRC造躯体のポイントについて,中堅として現場を支える柳沼一輝工事課長代理に話を聞いた。「RC造は下階から一層ずつ建物をつくっていくので,複数階を短期間で建てられるS造に比べて躯体工事に時間がかかります。工事の遅延を防ぎ,また,躯体の品質を保つためにも,工種ごとの進把握と各工程の確認が重要です」。若手にとっては貴重な学びの場ともなるこの現場で,彼ら彼女らにどのように持ち場を与えているのか,赤石所長はこう話す。「若手は工種別の担当制にしています。これには『今回は前よりもうまくできた』など自ら比較して成長を実感できるよさがあります。ここで担当した工種は一人前と胸を張って次の現場に行ってほしいですね」。2年次の佐藤恵太郎工事担当はこの現場が初配属。着工前から従事している。「私は主にコンクリート工事を担当しています。打設に必要な計画書づくりでは,土工,圧送,型枠を担当する技能者各々に意見を聞きつつ,品質担保と時間管理を考慮して計画していきます」。取材日もコンクリート打設の指揮を執っていた佐藤工事担当。作業中に,土工技能者と図面を覗き込みながら,言葉を交わしている場面が何度も見られ,所長の教えであるコミュニケーションが現場に浸透している様子が感じられた。「コンクリート工事は関係者が多く,確北福島医療センター新築移転工事場所:福島県伊達市発注者:仁泉会設計:佐藤総合計画用途:医療・福祉施設規模:病棟―RC造(免震構造) 4F,PH1F 220床外来棟―S造(付加制震構造) 2F 総延べ15,350m2工期:2024年12月∼2026年10月(東北支店施工)外来棟1階完成予想パース外観パース。手前が外来棟,奥が病棟郡山仙台白石蔵王福島伊達東北新幹線

07KAJIMA202606特集KEYPERSON赤石達彦所長。国内支店のほかタイ・カジマとカジマ・インディアで様々な価値観を持つ人との協働を経験し,若手育成に活かす。所長としての初現場柳沼一輝工事課長代理。現場の三方を囲む桃畑を前に,福島の美味しいものは桃とラーメンと言う。おすすめのラーメン屋は地元郡山の正月屋認事項がたくさんあり大変ですが,そのぶん型枠を外したときにきれいに出来上がっていると嬉しいですし,やりがいを感じます。計画書通りに打ち切れると達成感がありますね。また,残コン(アジテータ車に余ってしまう生コンクリート)がなくぴったり打ち終えたときは『やった!』という気持ちになります」。そう話す佐藤工事担当は,すでに頼もしさを感じさせた。仲間との毎日の情報共有他工種については,仲間が直面する課題や経験に耳を傾けることで学び,仕事の経験領域を広げてほしいという赤石所長。所長の発案による工事チーム打合せが現場事務所の日常風景のひとつだ。打合せを主導する柳沼工事課長代理に詳細を聞いた。「工事チーム打合せは毎日15時開始とし,急ぎの事案が発生しても当日中に対応できるようにしています。事務所内の所員のデスクが並ぶ部屋で,画面に資料を映して行います。若手も発言しやすい雰囲気になるようスタンディングにしていますが,これには打合せが長引かない効果もあると感じています」。毎日の短時間の打合せが,コミュニケーション活性化と,疑問や課題の早期把握,早期解決につながる。時代に合った会議スタイルの好事例と言えそうだ。先輩から学び,後輩に教える経験工事チーム打合せのほか,ビジネスチャットツールや工事管理アプリ内でも質疑応答が日々飛び交う。鉄筋と外装工事を担当する4年次の大黒谷悠汰工事担当は,よく新人の相談役になっている。「歳の近い先輩として後輩に質問されることが多いですが,正直,自分もまだわからないことばかり。そういうときは自分で調べたり,先輩の柳沼さんや平塚さんに聞いたりして解決します。後輩の疑断面図。RC造4階建ての病棟には基礎免震を採用し,入院患者の病室や手術室,救急外来などが入る。一方,S造2階建ての外来棟は,耐震・制振用ブレースを付加した制震構造。揺れ方の異なる2棟をエキスパンションジョイントでつなぐ(単位:mm)現場全景。写真上半分が外来棟,下半分が病棟。搬入口の敷鉄板に当社のシンボルマークを描いている

08KAJIMA202606KEYPERSON問は自分の勉強の機会。自分で理解してから,それを後輩に噛み砕いて教えるよう意識しています」。名前の挙がった平塚倫也工事担当は,大黒谷工事担当の憧れの先輩だ。「平塚さんは前職で20代前半で現場の責任者を務めたこともあるそうで,RC造も含めて現場経験が豊富です。知識量はもちろんのこと,技能者への指示の出し方や人の動かし方など,現場を回すのがとにかく上手。年齢は私と3つ程しか変わらないのに,自分が3年後こうなれるだろうかと思いながら背中を見ています」。先輩社員の存在について大黒谷工事担当はこう続ける。「若手の手が回らない点や,見きれていない点を含め,工事全体を把握してくれています。外来棟の基礎梁配筋時に,私が間違った構造図でチェックしてしまったために,鉄筋の定佐藤恵太郎工事担当。同期入社の11人組で行く,年に数回の旅行が楽しみな24歳。昨年はKX-FORESTKARUIZAWAを訪れた大黒谷悠汰工事担当。北海道出身の25歳。北海道支店で改修工事の現場を2件担当し,東北支店へと異動。ここで初めての新築に挑む工事チーム打合せの様子。翌日の工事予定,注意箇所などの情報共有を行う。左手前に後ろ姿が見える大黒谷悠汰工事担当がPCを操作し,資料の投影と検討結果の即時反映をしていた。後列中央が目標とする平塚倫也工事担当病棟屋上階でコンクリート打設を管理する佐藤恵太郎工事担当(上左,2年次)と松井煌芽工事担当(下左,1年次)。一層下の階で,型枠を木で叩きながら,屋上階から流し込んだコンクリートの量を確認する松原佑樹工事担当(上右,1年次)と千葉智夏工事担当(下右,2年次)。全技能者を前に話す石井利弥工事担当(上中央,6年次)

09KAJIMA202606*年次・役職などは取材時点写真撮影:大村拓也(2026年3月撮影)着長さ不足を先輩に指摘されたことがありました。後戻りできなくなる前のタイミングでミスに気付いてフォローし,指導してくれます」。現場の一角に,敷地内で製作したプレキャストのコンクリートピースが並んでいる。これはあらかじめ鉄筋と型枠を組んでおき,躯体打設時に残コンが発生した際に,その受け皿となるように計画されたもの。後で,外構フェンスの基礎として活用される。これも当現場におけるフォロー体制の一例だ。一人前の技術者になるべく,持ち場を任せられ,現場を動かすことに全力で挑戦する若手社員。その背後には,信頼できる先輩たちがいる。自己研鑽と,仲間との切磋琢磨大黒谷工事担当は昨年,一級建築士試験に合格した。若手が多忙な業務の傍らで自己研鑽に励むのは,所長の影響もあるだろう。「一級建築士や1級建築施工管理技士などの資格は早く取ったほうがいい。たとえ若くても,資格を持っている相手には技能者も真に向き合ってくれます。それはおのずと品質にも影響します」。そう話す所長は,自習場所として現場事務所内に製図板を置けるスペースを設けた。昨年も資格試験前は所内の若手が集い,勉強していたそうだ。また若手間でも,それぞれの試験直前は業務分担を調整するなどして,切磋琢磨しているという。「会社のこれからを担う若手には,発注者,同僚,技能者から信頼され,あの人とまた仕事をしたいと言われるような技術者になってほしいと思っています」。その所長の期待を背に受け,彼ら彼女らは自らの仕事に精一杯取り組んでいる。担当工事の管理に就く際の真剣な表情と,集合写真撮影時のハツラツとした笑顔が印象的な現場だった。所員集合写真。青い空のように明るく風通しのよい現場。安全靴は所長の名前にちなんで赤特集発生した残コンを有効活用し製作した外構用プレキャストコンクリート病棟ペントハウスの足場から,現場に目を配る赤石所長