間もなくサッカーワールドカップが開幕します。今大会の日本代表は史上最強と言われ、優勝も夢ではないでしょう。日本のサッカーは世界有数のレベルになりました。 高いレベルの選手が集まるチームでは、個人の能力は秀でているのにもかかわらず、層の厚さや戦術とのミスマッチなど環境的な要因のためにベンチ入りすらできていない選手がいます。些細なきっかけひとつで、ポテンシャルをもった選手は活躍できる。それは僕が選手時代に感じてきたことでした。僕はいまJリーグで真価を発揮できていない選手に声を掛け、シンガポールに呼んでいます。 僕は2023年に選手としてのキャリアを終えた後、シンガポールで投資会社を立ち上げ、昨年4月にはプロサッカーチームの共同オーナーになりました。会社では一貫して日本のバリュー株を対象にファンダメンタル投資を行っており、ポテンシャルが顕在化していない株に伸びしろを見出すことに面白みを感じています。サッカーチーム経営も僕のなかでは投資と一緒で、﹁現在は活躍していない選手を獲得し、価値を顕在化させる﹂ことを理念のひとつに置いています。 現在、僕のチームには7人の日本人選手が所属しています。東南アジアのサッカーは東アジアや中東諸国と比べまだ発展途上にありますが、そこでの日本人選手の活躍は、東南アジアと日本の双方にプラスの効果をもたらすと信じています。実際、チームは昨シーズンを1945年の創設以来過去最高の結果で終えました。日本から来てチームの躍進をリードした選手たちには、この先さらに高いパフォーマンスを見せて、より上の舞台へ羽ばたいていってほしいと思っています。目下最大の目標は、チームから国代表選手を輩出することです。 僕は20歳の時に帰化することを決めてから、李忠成としての生き方を自分自身でつくってきました。日本代表選手になり、アジアカップ優勝を決めたシュートをいまも覚えてくれている人もいます。かっこいい選手だったねで終わらず、これからもずっとかっこよく生きていきたい。そのためには、つねにベストなパフォーマンスをしていかなくてはいけません。いまのチームでは、オーナーであり、練習時にはピッチ上で指導するコーチであり、日本から選手を引っ張ってくるエージェントでもあり、マネジメントもするし、監督と戦術も決める。これまでやってきた経験や人脈というポテンシャルを生かし、李忠成だからできる仕事に、120%の力で取り組んでいます。30KAJIMA202606り・ただなり 元プロサッカー選手、個人投資家、経営者FC東京ユースからトップチームへ昇格。その後、柏レイソル、サンフレッチェ広島、浦和レッズなどでプレーし、J1リーグを中心に通算528試合132ゴールを記録。イングランドのサウサンプトンFCにも所属した。2011年のAFCアジアカップで日本代表として決勝ゴールを決め、優勝に大きく貢献。過去にはU-23日本代表にも選出され北京五輪に出場。2023年に現役を引退した。現役時代より整骨院の経営に着手。引退後は子どもたちに向けたFWに特化した育成プロジェクト「TENTORIYA」を立ち上げ日本全国を回っている。また、2025年にはシンガポールプレミアリーグのBGタンピネス・ローバーズFCのViceChairman(副会長)およびSportingDirectorに就任。サッカーの裾野を拡げるべく活動している。vol.258