10KAJIMA202607竣工!生成AIや自動運転などに欠かせない次世代半導体の量産を目指すRapidus。その第一工場であるIIM-1が北海道千歳市で竣工した。一刻も早く稼働させるために当社グループで臨んだ,国家的プロジェクトの裏側に迫る。半導体工場の建設を担う鹿島の総合力RapidusIIM-1特集-2

最先端ロジック半導体製造を目指して Rapidusは2022年8月10日に設立されました。当社は最先端のロジック半導体製造技術を日本に取り戻す,という目標を掲げています。それは単に半導体産業にとどまらず,日本の様々な産業の発展に影響し,ひいては技術立国としての日本復活や,世界に向けて製品を供給することによるグローバルな経済の安定にもつながっていくものと認識しています。 日本が20年以上遠ざかっていた状況から,最先端技術を取り戻すことは並大抵のことではありません。そのためにRapidusは設立直後から国からの多大なるご支援をいただき,また国際連携によるパートナーシップを積極的に行うなどし,目標達成に向けて着実に歩を進めています。スピード&チャレンジ このプロジェクトを遂行するうえで最初に取り組んだことは,しっかりとした製造拠点を準備することでした。当社は2023年2月に北海道千歳市の美々ワールドへの工場設立を発表し,同年9月1日に起工式を行った直後から,鹿島建設さんに工場建設を進めていただきました。 私たちはこの製造拠点をIIMと名付けました。これは「InnovativeIntegrationforManufacturing」の頭文字をとった造語であり,イノベーションを起こすものづくりの場所,という意味を込めています。第一号工場となるIIM-1の建設にあたり,鹿島建設さんには当社の「スピード感を持って取り組む」「常識にとらわれず新たなことにチャレンジする」というビジョンをしっかりと受け止めていただき,建設を着実に進めていただきました。 そのいくつかを紹介したいと思います。一刻も早く工場を完成させ,パイロット製造を計画通り開始するためには,工事着手message私たちの想いを形にRapidus代表取締役社長兼CEO小池淳義こいけ・あつよし1978年,日立製作所入社。トレセンティテクノロジーズ取締役社長,サンディスク代表取締役社長を歴任の後,2022年,Rapidus代表取締役社長に就任。現在,同社代表取締役社長兼CEO,国立大学法人東北大学特任教授(客員),同大学未来科学技術共同研究センター特別顧問。直後のコンクリート基礎工事を真冬の時期に進めていただく必要がありました。そのために,採暖養生工法を前例のない大きな規模で完遂していただきました。これは大手ならではのノウハウやマネジメント能力,そして何としてもやり遂げる,という想いを結集していただいたからにほかなりません。 工事現場に隣接する地域の皆さんに対する配慮も格別なものでした。様々な環境負荷低減の取組みにくわえ,交通渋滞・交通災害防止のための所員・技能者の皆さんの大型シャトルバスでの通勤,さらには関係車両すべての右折を極力回避した運行など,きめ細かな施策も展開していただきました。 しかし一番大きな成果は,通常よりも速く進める必要のあったこの大規模建設プロジェクトにおいて,大事故が一切なかった,ということです。安全第一で取り組んで下さったことは本当に素晴らしいことであり,Rapidusを代表し改めて感謝申し上げる次第です。最後に このIIM-1建設プロジェクトは,今年1月23日に逝去された鹿島建設の天野裕正元代表取締役社長なしに語ることはできません。天野元社長も私たちの想いに大きな共感を寄せていただき,陣頭指揮を執っていただきました。 世界に誇るIIM-1は,確かに受け取りました。この工場から最先端技術の粋を集めた半導体を世界に向けて供給していくことを,ここにお約束したいと思います。11KAJIMA202607

12KAJIMA202607次世代半導体の量産化に向けて Rapidusは,日本国内での次世代半導体の量産化を目指す半導体製造会社。その第一工場であるRapidusIIM-1が2026年4月に完成した。当社はIIM-1建設計画の設計施工業者に選定され,グループ会社とともに最先端の技術を駆使して,この大規模プロジェクトを完成に導いた。 Rapidusのプロジェクトは,日本の半導体産業が復権するチャンスとして,当初から国内外で注目を集めた。かつて世界を席巻した「日の丸半導体」は,1980年代後半に世界シェア首位に立ち,頂点を極めながらも,その後,貿易協定の影響などを受けて国際競争力が急落。現在ではアメリカや1990年代に台頭した韓国・台湾の企業が世界シェアのほとんどを占めている。今回のRapidusの挑戦は,日本が再び世界市場に参入し,競争力を高めることを目指したものである。半導体の設計・製造工程の効率化 IIM-1で製造されるのは,2nm※1級の微細な半導体。それを可能にする最先端の製造機器として,国内初導入となるEUV露光装置(13ページ)が設置された。 最先端の半導体製造には,数百ものステップが不可欠であり,その設計も含めると年単位の時間を要する。しかし,Rapidusは通常なら複数の会社で分担する設計から製造までの工程を一貫して行うことで(RUMS※2),製造工程から得られる膨大なデータを設計にフィードバックする方法(MFD※3)を採用して,高精度化と歩留まりの向上を目指す。顧客の要望に合わせて,高品質の半導体を極めて短い期間で提供するというビジネスモデルで,他社との差別化を図る。 実際に,IIM-1での試作段階でも製造時間の短縮化に成功し,通常なら数ヵ月かかるところ,「12日18時間44分32秒」という,業界では驚異の速さを達成した。8月Rapidus設立11月経済産業省がNEDOを通じた最初の公的支援を発表2月千歳市での工場建設を公表,業者入札4月当社が設計施工業者に決定9月起工式実施,本工事(杭打設)着工RapidusIIM計画を巡る主な出来事※11nm(ナノメートル)=1mの10億分の1※2RUMS:RapidandUnifiedManufacturingService※3MFD:ManufacturingForDesign(設計のための製造)参考:Rapidusウェブサイト(https://www.rapidus.inc/about/)新千歳空港からRapidusIIMを望む(写真:エスエス島尾望)RapidusIIM-1建設計画場所:北海道千歳市発注者:Rapidus規模:S造(免震構造) 4F 延べ207,392m2工期:2023年9月∼2026年4月(北海道支店施工)1.AboutRapidusIIMとは何かなぜRapidusIIMは世界で注目を集めているのか。次世代半導体生産施設の背景や経緯に迫る。NEDOの研究開発プロジェクト採択の記者会見*起工式で鍬入れするRapidus小池社長Rapidusの設立から,当社の参画決定,そしてIIM-1の竣工まで,主な出来事を振り返る。Timeline20222023

13KAJIMA202607特集-2 RapidusIIM-1竣工! 2nm半導体 昨今,世界的なAI利用に伴うAI半導体の消費電力の増加に対処するため,半導体の微細化による電力効率の向上が求められている。 その需要に応えるべく,Rapidusは2025年7月,2nm世代のGAA(Gate-All-Around)トランジスタの試作に成功。2nm半導体の量産化を目指し,世界的なシェアを狙う。EUV露光装置 極端に波長が短い紫外線(ExtremeUltraviolet:波長13.5nm)によって,半導体の基盤であるシリコンウェーハにnm単位の微細回路を転写する装置。オランダのASML社のみが製造している装置のため,現地から10万点以上の部品を3回に分けて空輸し,建設中のIIM-1に搬入された。国内外から経験豊富な技術者を集めて,30~40人の体制で組み立てられた。Keyword2024.09初めて試作したウェーハで2nm世代GAAトランジスタ動作を確認*                    EUV露光装置のイメージ(写真:ASML)北海道という立地 この最先端生産拠点の敷地として選ばれたのが,北海道千歳市の工業団地「美々ワールド」である。広大な土地や大らかな自然環境といった利点が決め手となった。くわえて,新千歳空港の近くに位置することから,世界の半導体産業とつながるポテンシャルもある。 敷地の周辺には豊かな自然が広がり,IIM-1の施設自体も屋上緑化や敷地内の植栽計画によって,周囲と融和するランドスケープを目指している。IIM-1棟を中心に計13棟の施設が並ぶ。敷地の周辺には豊かな自然が広がり,新千歳空港やJR千歳線に隣接する1月Rapidus千歳事務所を開所6月北海道大学と包括連携協定を締結10月後工程研究開発拠点(千歳市)を開設12月EUV露光装置「NXE:3800E」を搬入4月試作ライン立上げ開始  国会でRapidusの支援策を含む法改正6月最初の試作品が完成7月2nmノードGAAトランジスタの動作を確認4月IIM-1竣工解析センター・RCS※4開所式EUV露光装置を前に,Rapidus社員とASML担当者*2nm世代のGAAトランジスタのお披露目*解析センター・RCS開所式*             写真:Rapidus(*)202420252026JR千歳線◀新千歳空港※4RCS:RapidusChipletSolutions。セイコーエプソン千歳事業所内に設置した後工程研究開発拠点

14KAJIMA202607次世代の半導体工場を設計する自然に連続する「環境装置」 IIM-1棟は鉄骨造4階建てで,工場の雰囲気を感じさせないダイナミックな大屋根が特徴的である。これは建築とランドスケープが一体となった「環境装置」をコンセプトに設計された。グリーンルーフと呼ばれる緑化された曲面の大屋根や,北海道の大地の隆起をイメージしたファサード,屋根側面のステンレス板金による鏡面壁は,周辺の豊かな自然となじみ,景観が連続した印象を与える。また,新千歳空港に面した全面ガラスの透明なファサードは,周辺の自然や空を映し出す。標準的な箱型の工場とは異なる,次世代の半導体工場である。 意匠設計を主導した奥原健吾グループリーダーは「グリーンルーフが当社を業者選定に導く鍵となった」と振り返る。 当初,設計のプロポーザル仕様書には,Rapidus小池社長のアイデアだという,ファブ(製造工場)の上に緑化された大屋根が架かっているイメージが描かれていた。その発想を実現するため大屋根とファブを一体化した施設を当社が提案。イメージを具現化できたことが高く評価された。大規模なクリーンルーム Rapidusからの要望には,前述のEUV露光装置を中心に据えた,大規模なクリーンルームが含まれていた。 半導体の製造にはμm※単位の微粒子も除去するクリーンルームが必要だが,過去の電子部品や半導体関連施設の設計施工によって蓄積されたノウハウを活かして,高い要求性能を満たすことを目指した。設計と施工の一体化 プロポーザルでは約1ヵ月で提案の骨子をまとめ上げ,入手後5.5ヵ月で着工,約17ヵ月という短期間で装置を受け入れた。奥原グループリーダーも「これほどの大規模な施設では過去最短の設計期間だった」と語る。北海道の大地の隆起をイメージしたファサード*大屋根の屋上緑化であるグリーンルーフ**IIM-1棟(左)と水処理棟(右)の間。分棟形式ながら連続した造形となっている*設計施工一体で超短工期を実現2.Process半導体工場としては異例の短工期で建設されたIIM-1。当社はプロポーザルを経て設計施工業者に選定された。設計者と施工者が一体となって臨んだ大規模プロジェクトの建設過程について,各担当者に話を聞いた。意匠設計奥原健吾建築設計本部建築・生産統括グループグループリーダー1993年入社。主に生産施設を担当し,フラットパネル・エネルギーデバイスの電子部品や半導体関連施設の設計も多数。近年はJASM第一工場1期工事などに関わる※1μm(マイクロメートル)=1mの100万分の1

15KAJIMA202607 当社は過去に数多くの電子部品工場や半導体工場を設計施工してきた。 世界の半導体メーカーの隆盛により一時は国内の建設件数が減少したが,近年,キオクシア四日市工場新製造棟(三重県四日市市),TDK北上工場新製造棟(岩手県北上市),JASM第一工場(熊本県菊池郡菊陽町)などを当社が担当。半導体工場に要求される高性能で精度の高い工事を経験してきた。 IIM-1建設計画では,ベテランから若手まで,こうしたプロジェクトで経験を積んだ社員の総力を結集した。「半導体の鹿島」の実績column特集-2 RapidusIIM-1竣工!  高い品質を確保しながら超短工期を実現するために,入手直後から施工チームと密なコミュニケーションを取り,調達や施工性を考慮したありとあらゆるフロントローディングを行った。工事が始まると設計者も週のほとんどは現場に常駐しながら,もの決めと設計変更対応を行った。 今回のプロジェクトは,過去に半導体工場の設計を多数手がけた経験豊富な各リーダーが主導し若手と上手くチームワークがとれたからこそ,短工期で高品質な設計につながった。高性能の免震建屋 設計チームでは意匠・構造・設備の知見が結集された。構造設計を主導した服部恭典グループリーダーは「最先端の半導体製造に適した免震建屋を設計した」と言う。 線幅2nmという極めて小さい半導体をつくる工場は,躯体を重くて堅い構造とし微振動に対して揺れないようにすることが重要である。一方で,大地震時のリスクを最小化するための免震は地震の揺れを吸収するために建物の免震層を柔らかい構造とする必要がある。「今回はこの相反する二つの要求に対し,微振動から大地震まで幅広い振動に対応できる免震建屋を実現した」(服部グループリーダー)。このような高性能な構造によってIIM-1は支えられている。BIMで設備設計の効率化 実施設計の段階ではBIMが効果的に活用された。設計チームは,基本設計後から早急に建屋のモデリングを構築し,鉄骨製作や施工図作成を迅速に進めた。 IIM-1は電気や空調以外にも生産施設特有の設備機器の量も膨大で,8社にも及ぶ設備会社の機器が入る。そこで,各社が干渉しないように,共通データ環境(CDE)を用いて,クラウド上のBIMで調整を行った。事前に問題を解決することで,スムーズな施工につながった。最先端の設計経験を次につなげる 半導体の市場では常に需要が変化する。半導体工場においても,建築設計の途中で製造する半導体とその製造ラインの仕様が変わり,それに伴う設計変更が発生することも多い。「そうした半導体工場特有の臨機応変な進め方を延べ50名以上もの設計者が経験できたことは,大きな知見になった」(奥原グループリーダー)。 さらに,通常であればゼネコン側で設計施工することの少ない,クリーンルーム実装やEUV露光装置をはじめとする嫌震架台などの二次工事を受注したことも大きな実績となった。「IIM-1の心臓部に触れながら設計を進めた経験を,次の半導体工場のプロジェクトにもつなげていきたい」と両グループリーダーは語る。解析センターのエントランス側のファサード**キオクシア四日市工場新製造棟(Y7棟)場所:三重県四日市市 発注者:キオクシア竣工:2022年(中部支店施工)構造設計服部恭典建築設計本部構造設計統括グループグループリーダー2008年入社。商業施設,生産施設,東南アジアの日系企業の施設の構造設計を経て,JASM第一工場1期工事なども担当した写真:川澄・小林研二写真事務所(*),エスエス島尾望(**)

16KAJIMA2026072024年5月,繁忙期には50基以上のクレーンが同時に稼働していたフェイズを分けて生産をスタート 設計と同様に,施工にも短工期が求められていた。建屋の約半分を占めるクリーンルームにおいて重要な役割を担うEUV露光装置の搬入日というマイルストーンが早くから決定していたため,工事を大きく二つのフェイズに分けた。 2023年9月に着工後,フェイズ1として,1年半後の2025年3月までにクリーンルームを完成させ,まずは半導体の試作ライン(量産化の前段階としての小規模な製造)を稼働させた。現場を率いた高野貢一統括所長は「重要な装置であるEUV露光装置が設置されたときには,ホッとした」と振り返る。 その後,残りの工事エリアとの間に仮設で緩衝帯を設置。振動など半導体製造への影響を最小限に抑える工夫をしながら工事を進め,フェイズ2として,1年後の2026年4月に建物全体の竣工となった。 IIM-1建設計画は2年7ヵ月という異例の短工期で施工が進んだ。「鹿島にとっても日本にとっても重要なプロジェクトだった」(高野統括所長)。全社の力を結集 今回の工事にあたっては,当社は北海道支店を中心に,7支店からなる全社体制を組織。ほかにも,グループ会社の大興物産や鹿島建物総合管理,鹿島リース,イリアなどが関わり,グループの力を結集して幅広い業務を行った。 ピーク時には総勢5,000人以上が作業にあたった。高野統括所長は「社内やグループ間での連携があってこそ,工期の最短化が可能になった」と語る。複数の工程を同時進行で進める 今回,工期を最短化するために,設計・施工・材料調達などの各工程を同時進行で行う「コンカレント・エンジニアリング」という手法が採用された。 実施設計が本格化した着工前の2023年4月から,設計者と施工を担当するコアメンバーで定期的に会議を行い,各支店や当社建築管理本部とも連携して早期から資材と技能者の確保を始めた。また,現場事務所の運営や宿舎の確保といった社員や技能者が働くためのインフラ整備も,過去の半導体工場での経験を活かしながら,この場所に合ったかたちで進められた。 通常なら施主側が行うことの多い設備CM(ConstructionManagement)も当社が担当。実施設計の開始時には,既に決まっていた別途設備8社との調整を先行させるなど,設備設計もスムーズに進めることができた。寒冷地での工事 北海道という立地も工事の難易度を高めた。寒冷地では,12∼2月頃の厳冬期に躯体工事を一時中断するのが一般的。しかし,今回は一刻を争うプロジェクトであり,厳冬期も継続する必要があったことから,寒冷地特有のノウハウを北海道支店や東北支店から集めた。高野貢一統括所長1987年入社。中部地方を中心に,電子部品工場や液晶ディスプレイ工場,医薬品工場などの所長を務める。近年はキオクシア四日市工場新製造棟(Y7棟)などにも関わる寒冷地での大規模工事を短工期で写真:大村拓也

17KAJIMA202607特集-2 RapidusIIM-1竣工! 仮設屋根とシートで覆われた建物2024年1月,積雪の多い厳冬期にも工事は続けられた建設中の建屋にヒーターから温風を送り込む積雪のなかで作業にあたる技能者 特に,コンクリート打設の際,低温下では品質強度を確保できないため,打設箇所を仮設屋根とシートで覆うとともに,ジェットファーネス(温風ヒーター)から温風を送り込む採暖養生工法を採用し,短工期での施工を実現した。半導体施設の建設を担う次世代の育成 IIM-1のプロジェクトは,日本の半導体が世界を席巻していた1980年代に活躍し,ノウハウを持っている世代(現在60∼70代)が現役として関わり,次世代を育てることのできる最後のチャンスだと期待されている。 このような状況は建設会社である当社にもあてはまる,と高野統括所長。「当社で半導体施設に関わるメンバーは,設計施工ともに20年以上ほとんど変わらず,IIM-1建設計画も同じメンバーです。近年,案件が増えてきたこともあり,当社としても半導体の設計施工の実績を積むとともに,若手社員の育成にも力を入れています」。半導体工場は大規模かつ短工期で,特殊な専門用語も多いため,初めて現場に配属された人は慣れるまでに時間がかかる。特に今回は関係する支店も多いため,若手社員が混乱しないよう,朝礼のやり方などをルール化し,部署を越えて横のつながりができる場を設けていた。 高野統括所長は「半導体工場の建設を担っていく次世代を育成し,今後も当社がRapidusさんの期待に応えていけるようにしたいです」と結んだ。 IIM-1建設計画では,グループ会社の協力が大きな支えとなった。例えば,大興物産は,過去の半導体工場で仮設材の管理を行った経験を活かし,主に仮設材の調達計画や出庫管理を進めた。特に道内で不足していた鉄骨仮設・支保工材は,本州からフェリーで海上輸送し,新千歳空港敷地内の仮設資材ヤードで管理。現場への搬出入もタイムリーかつスムーズに実施した。 ほかにも,鹿島建物総合管理が現場事務所や社員宿舎の管理,事務所の受付での来客対応,事務所・詰所の清掃を行い,イリアが解析センターの什器・備品を担当し,鹿島リースが同什器備品のリースを行っている。各所で活躍したグループ会社column大興物産が管理する仮設材の仕分けヤード鹿島建物総合管理が管理する現場事務所群

18KAJIMA202607注目度の高い大規模現場瀬川 IIM-1建設計画は,おそらく当社としても過去最大規模の建築プロジェクトです。7支店の社内JVかつ別途設備元請8社,現場入場者は1日あたり最大5,000人以上と関係者が非常に多い現場でした。事務担当としても業務内容が多岐にわたり,現場周辺の渋滞を防止するためのシャトルバス運行や最大で約900室の宿舎の運営・管理,国内外の要人による視察の対応なども担当しました。また,国家的プロジェクトとして社内外の注目度が高いうえに,経済安全保障面から厳重な情報セキュリティが求められることから,徹底した現場管理が必要とされました。中村 工事を管理する立場としては,上空から報道撮影されるなど,「見られる」機会の多い現場でしたので,毎日工事を終える際にはクレーンや資材などの向きを平行直角に揃えて,常に整然とした現場を維持していました。また,新千歳空港に隣接しているため,資材の飛散防止など,周りの環境に気を付けながら進めていました。喜多 設備CMとして別途設備8社の取りまとめを担当しました。施工図の段階ではBIMを用いて建築・設備各社の納まり調整と品質の統一化をフォローしました。短工期でしたので,各社との工程の調整に尽力しました。片倉 クレーンの数も多く,繁忙期にはクレーンが50基以上も同時に稼働していました。工場の生産ラインのようにクレーンを配置して体制を組んでいました。北海道内に何社かクレーン会社があるのですが,それだけでは賄いきれず,一部のクレーンは本州から確保しました。クレーンのほかにも,水中ポンプや送風機などのレンタル品の管理も機電の業務として行っており,膨大な物量でしたので,協力会社に毎月棚卸しを行ってもらい,貸出・返却の管理を徹底していました。半導体製造への配慮小川 今回,二つのフェイズに分けて工事を行いましたが,フェイズ2の工事は,フェイ若手社員座談会最先端施設の最前線で3.Voice寒冷地での大規模かつ短工期を求められた本工事は,分野を越えた連携なくしては成し遂げられなかった。本プロジェクトの最前線で活躍した,職種の異なる若手社員5名による座談会を開催。当社の総合力を支える次世代の声を聞いた。現場周辺の渋滞を避けるためシャトルバスを運行。社員および技能者が出退勤に利用していた*入退場ゲートでは,電子機器や金属などの持ち込みを取り締まるため,厳重な検査が行われた*瀬川翔せがわ・かける2018年入社IIM-1建設計画事務主任キオクシア四日市工場新製造棟(Y7棟)などを経て,2023年に着任。経理や事務所運営,シャトルバスの運行管理などを担当小川由希子おがわ・ゆきこ2022年入社同工事担当JASM第一工場2期工事などを経て,2025年に着任。クリーンルームの内装工事などを担当中村圭佑なかむら・けいすけ2015年入社同工事主任北海道支店,JASM第一工場1期工事などを経て,2023年に着任。杭工事,躯体工事,外装工事などを担当片倉耀佑かたくら・ようすけ2024年入社同機電担当渋谷駅桜丘口地区再開発(A街区)新築工事などを経て着任。機械や備品の計画・管理・手配などを担当喜多大地きた・だいち2017年入社同設備主任TDK成田工場などを経て,2023年に着任。設備CMとして別途設備8社との工程や図面の調整を担当役職は取材時写真:大村拓也(*)