14KAJIMA202609当社は,造成工事の施工・品質管理における各種データを一元管理し,三次元で可視化する「土工総合管理システム」の開発を進めている。 その仕組みと現時点での成果について紹介する。#kajima#土工総合管理システム造成工事の施工状況を三次元で見える化建設現場のオートメーション化 国土交通省は「i-Construction2.0」を打ち出し,「施工」「データ連携」「施工管理」のオートメーション化を通じて,少ない人数で,安全に,快適な環境で働く生産性の高い建設現場の実現を目指している。これを受け,建設関連各社では,デジタル技術を最大限に活用した技術開発に取り組んでいる。 こうしたなか,当社は造成工事の施工・品質管理におけるデータ連携基盤「土工総合管理システム」を開発した。造成工事の課題解決に貢献 土地区画整備や道路建設などの際に行われる造成工事。計画地内の土砂を切り崩し(切土),それを盛り立てる(盛土)作業は,現場発生土の土質や性状が均一でないため,安定した品質の盛土を構築することが課題となる。また,品質管理においては,施工データや出来形情報などを速やかに確認し,関係者と共有しながら既定の品質を確保する必要がある。当社では,こうした造成工事の品質管理を迅速かつ確実に実行するため,各種計測で取得したデータの連携と可視化を実現する「土工総合管理システム」の開発を進めてきた。 本システムは,造成工事の現場で計測したデータを一元管理するサーバと三次元描画ソフトで構成され,計画図や現地形(測量結果)に施工・品質データを重ねて,盛土のデジタルツインを構築する。三次元上の現場モデル内で,座標・時刻歴に紐づいたデータをリアルタイムに表示するとともに,過去のデータを修正・確認することもできる。 今回,北海道三笠市で施工中の「三笠ぽんべつダム堤体建設第1期工事」の堤体締固め品質管理や出来形情報などの管理に本システムを導入した。また,堤体のCSG※打設には,自動化施工システム「A4CSEL®」を採用し,施工のオートメーション化も推進。両者の情報は管制室で一元管理する。※CementedSandandGravel:現地発生材(石や砂れき)とセメント,水を混合して製造する材料土工総合管理システムを基盤とした造成工事のPDCAサイクルのイメージ

15KAJIMA202609「土工総合管理システム」の性能実証——「三笠ぽんべつダム堤体建設第1期工事」 本工事では,堤高53m,堤頂長173.5m,堤体積約21万4,200m3の国内初となる流水型台形CSGダムを構築する。幾春別川総合開発事業の一環として,幾春別川の支川である奔別川に新設され,当社JV施工でリニューアルした新桂沢ダム(2024年3月竣工)とともに,流域の治水安全度向上と広域への安定的な水供給を担う。 2025年4月に堤体打設工事に着手,2026年7月からCSG打設が開始されている。 台形CSGダムは,石や砂れきなどの現地発生材とセメント,水を混合したCSGを主材料とする。堤体構築の作業は,材料の運搬,撒き出し,転圧という一連の施工手順が造成工事の盛土構築と類似し,品質管理事項も共通点が多いことから,「土工総合管理システム」の実証現場に選定した。 ここでは,本システムで堤体の出来形情報,CSGの製造・品質管理情報を一元化し,可視化した。これにより,堤体の施工進捗(計画と現況の比較)や品質を任意の時刻歴と断面から視覚的に把握することで,出来形の状況確認や発注者と速やかに情報共有することが可能になった。また,A4CSELによる自動振動ローラの転圧回数などの施工情報も一元管理されている。 現場を率いる上本勝広所長に,本システムの導入に対する期待と今後の課題について聞いた。三笠ぽんべつダム堤体建設第1期工事場所:北海道三笠市発注者:国土交通省北海道開発局規模:流水型台形CSGダム 堤高53.0m 堤頂長173.5m堤体積約214,200m3工期:2023年3月∼2027年3月(北海道支店JV施工)堤体打設工事が進む三笠ぽんべつダム(2026年7月)  台形CSGダムは品質管理項目の数と確認の頻度が多く,日々発生するデータ量が膨大であるため,その管理に労力を要しており,これらの管理業務の合理化,一元化が課題でした。この課題に対して,当社のICT関連技術を結集した土工総合管理システムを導入することで,各種データの集約,蓄積,分析および見える化が可能となり,効率的な現場管理につながっています。 CSG材の品質管理では,成瀬ダム(秋田県雄勝郡東成瀬村)の施工で高度化されたAI画像粒度モニタリングや近赤外線水分計によるリアルタイム全量監視技術を採用し,転圧後の評価には締固め密度を面的に評価可能なGeo-DXCompactionを導入しました。また,施工においてはA4CSELの自動振動ローラ,出来形管理には自動ドローンの採用など,施工の合理化・省力化に挑戦しています。(16〜17ページ参照) 土工総合管理システムの導入によって,品質管理データだけでなく,日々の堤体打設数量などの出来高が自動的に一元管理できるため,職員の省力化と,発注者との速やかな情報共有につながっています。また,材料のトレーサビリティの確保が期待できます。将来的には,全量管理データを発注者の維持管理にも活用いただくため,竣工時の納品方法を検討していきたいと考えています。voice三笠ぽんべつダムJV工事事務所上本勝広所長土工総合管理システムを核に,施工の合理化・省力化に挑戦取得した各データは土工総合管理システムのデータサーバに格納され,一元管理した情報を三次元で見える化する

16KAJIMA202609 ドローン測量は土木工事において一般的になりつつあるが,測量データの整理における省人化・効率化という課題があった。ここでは,自動離着陸装置(ドック)を備えた常設型ドローンとクラウド処理システムを連携させ,測量およびデータ処理の自動化を実現した。 事前に動作設定しておくことで,自動制御されたドローンが設定時刻に決められた場所を飛行・測量し,計測したデータはクラウド上で高精度(誤差±5cm)に解析したうえで点群生成までを一括して自動化するこ自動離着陸装置(ドック)を備えた常設型ドローンCSG材ストックヤード。この上空をドローンが自動飛行し,CSG材の残量を自動計測する土工総合管理システムを活かす要素技術三笠ぽんべつダムのCSG堤体打設の施工・品質管理を司る当社のICT関連技術の数々——これらの技術によって収集されたデータは自動的に「土工総合管理システム」に集約,三次元で見える化される。とが可能になった。 また,ドローン管制を行うだけでストックされたCSG材の残量が自動計測でき,使用量の把握が容易になった。自動離発着ドローンによる土量・出来形計測 CSG堤体打設の締固め品質管理は,地表を無作為に削孔して検査する手法が主流であったが,人力作業が多いことから,省人化・効率化および安全面の課題があった。「Geo-DXCompaction」は,4つの電極を取り付けた測定装置をA4CSELAGV(AutomatedGeoVehicle)※で自動牽引し,地盤の電気抵抗を連続測定することで転圧完了箇所の密度を算出する。これによって,従来法では点の情報であった計A4CSELAGVがGeo-DXCompactionを牽引し,締固めの品質管理を行う締固め品質の三次元可視化イメージ。密度の測定結果を数値ごとに色分けして表示測結果を面的な密度分布情報としてリアルタイムに取得することが可能となり,施工面全域を網羅した締固め品質管理を実現した。Geo-DXCompaction®による締固め密度の面的測定・管理※自動振動ローラが転圧したエリアをもとに測定装置を牽引して自律・自動走行が可能

 17KAJIMA202609 多くの屋外作業で構成される土木工事は,工程や品質が気候などの自然条件に大きく左右されます。そのなかでも造成工事(土工事)は,現場発生土で盛土を構築するため,土質性状の変化が盛土品質に直結します。これらの不確定要素は数値化することが難しいものもあり,現在でも技術者の経験と勘が重要になる場面が多々あります。 しかし今後,省人化や技能者減少の流れのなかで,計画・管理を経験に頼り続けることには限界があります。そこで,まず,現場の管理を可能な限り「データ化」「見える化」することで経験知を可視化し,共有できるようにしたいと考えたことが「土工総合管理システム」の開発の発端です。 今回,盛土工事と共通点が多い台形CSGダム工事に本システムを適用して,その有効性を確認しました。今後,造成工事に本システムを実装することで,盛土の施工,品質に関するデータの一元管理と「見える化」が実現できます。また,施工過程を「見える化」することで施工上の課題を早期に把握し,迅速な計画の修正変更が可能となります。将来的には,本システムに土工計画シミュレーションを組み込み,経験が浅い現場担当者が施工計画を立案する際の一助となるような機能向上も図ります。 本システムの実装は,「i-Construction2.0」にも貢献すると考えています。施工過程(過去から現在)と施工計画(未来)をつなぐことができるようシステムを進化させ,経験に頼らずに施工計画,施工管理を実施できるような支援ツールに育てていきます。#三次元的見える化 #省力化と生産性向上 #建設現場のオートメーション化message土木管理本部土木工務部環境緑化造成グループ小澤一喜担当部長 2009年に開発着手したA4CSELは,2015年の五ケ山ダム堤体建設工事(福岡県那珂川市)への初適用から機種を増やし,精度を高めながら着実に進化を続けている。成瀬ダム堤体打設工事(2020∼2024年適用)では,自動のダンプトラック・ブルドーザ・振動ローラの3機種でCSG打設を行い,月間打設量国内最高を記録した。5件目の適用となる三笠ぽんべつダムの工事では,A4CSELの自動振動ローラから取得した走行軌跡と転圧回数を「締固め管理システム」を通してリアルタイムに可視化し,締固め作業の進捗状況を確認できる。 現場に設置された管制室では,A4CSELの管制が行われるとともに,土工総合管理システムの品質管理情報とA4CSELから得られる自動振動ローラの転圧回数などの施工情報を総合管理する。土工総合管理システムの情報は,三次元描画ソフトによって可視化され,リアルタイムに情報をチェックできる。自動振動ローラ転圧イメージ(成瀬ダム堤体打設工事)締固め管理システムの可視化画面イメージ#KAJIMA#kajima#土工総合管理システムA4CSELの取得データが施工管理に直結施工・品質情報を統合管理する管制室管制室では管制員が各種情報を監視する土工総合管理システムで三次元見える化したダム堤体の出来形イメージ(左)とCSG品質管理データシートのイメージ(下)土工施工管理データシート技術者の経験知をデータ化・可視化し,共有できる支援ツールを目指す