18KAJIMA202610大きな窓の向こうに森が広がるラウンジ。カーペットやソファ,クッションを更新し,既存の暖炉と木の温もりを生かしたくつろぎの空間に整えた鳥害対策として軒天を木材からガルバリウム鋼板へ更新。周囲の木部になじむ木目調を採用し,建物の景観との調和を図った洋室は,従来,3人以上で宿泊する際に使用していたソファベッドを見直し,親子ベッドに変更。最大4人がベッドで休める客室へとアップデートした 7月18日,長野県茅野市の蓼科高原に「KX-FORESTTATESHINA鹿島グループ蓼科保養所」がリニューアルオープンした。この建物は,グループ会社である大興物産の創立50周年記念事業として1996年に竣工し,長年にわたり同社の保養所「大興蓼科山荘」として利用されてきた。2025年3月,当社が同施設を取得し,グループ事業推進部および開発事業本部資産運用部主導のもと,設計をアルモ設計,インテリアデザイン・FFE(家具・什器など)をイリア,施工を鹿島建物総合管理が担当。設計から施工までをグループ各社が担い,鹿島グループ約1万人の社員を対象とする保養施設として再整備した。 蓼科高原の豊かな自然に包まれた同施設では,都会の喧騒を離れ,ゆったりとした時間を過ごすことができる。一人での滞在はもちろん,家族や友人とも利用でき,心身を休めリフレッシュできる快適な空間となっている。【所在地】長野県茅野市豊平7695-523チェルトの森柳川地区5-1-7鹿島グループは,グループ各社との連携を強化し,バリューチェーン拡充による顧客への提供価値の向上と,新たな価値創出を目指していく。鹿島グループの新たな保養所が蓼科に誕生KX-FORESTTATESHINA 鹿島グループ蓼科保養所KX-FORESTTATESHINA鹿島グループ蓼科保養所発注者:当社開発事業本部資産運用部設計:アルモ設計 インテリアデザイン・FFE:イリア 設計監修:当社建築設計本部 規模:木・RC造 B1,1F 延べ1,205m2 客室7室(和室4,洋室2,和洋室1)工期:2025年5月∼6月(I期工事・建物修繕),2026年4月∼6月(II期工事・設備更新)(鹿島建物総合管理施工)
19KAJIMA202610 7月9~10日,リニューアルオープンに先駆け,鹿島グループの交流イベント「写真撮影講座」が開催された。熱海インフラマネジメントやケミカルグラウト,ランドスケープデザインなど,事業領域の異なるグループ会社10社から広報業務に携わる若手・中堅社員14名が参加した。 1泊2日の講座では,カメラマンの椎名トモミ氏を講師に迎え,写真の構図やスマートフォンとカメラによる撮影表現の違いなど,広報活動に生かせる撮影技術を学んだ。その後,施設内外で撮影実習を行い,学んだ技術を実践。参加者自身が施設の魅力を写真に収め,後日発信し,「KX-FORESTTATESHINA」の認知度向上につなげることも講座の目的の一つである。 滞在中は,講座以外の時間にも参加者同士の交流が生まれた。寝食をともにしながら互いの仕事や経験を語り合い,新たな関係を築けることも,宿泊型施設ならではの特徴である。参加者からは,「自身と同じく広報業務を担う方と写真や業務について情報交換ができ,良い刺激になった」との声も聞かれ,今後の交流を広げるきっかけとなった。蓼科の自然にカメラを向け,施設の魅力を写真に収める参加者 今回のリニューアルは,鹿島グループ各社の福利厚生の充実に加え,各社間の連携強化とグループ全体のエンゲージメント向上につなげることを目的としている。その施策の一つとして,計画段階からグループ各社の社員で構成するワーキンググループを設置し,施設のあり方や活用方法について検討を重ねた。そこで出された意見の一部は,改修内容にも反映されている。 こうして生まれた施設コンセプトが「inspiredX」。「保養」「交流」「創造」の場を目指し,蓼科の自然のなかで出会う未知の体験,人と人,会社と会社の交流,そしてより魅力ある鹿島グループへの変革という意味が込められている。 今後は,グループ各社が主体となってイベントや連携プログラムを企画・実施する予定だ。グループ各社の社員が集い,新たな交流や発想を生み出す(inspire)場として,さまざまな活用が期待されている。focusグループ交流イベント「写真撮影講座」を開催!保養と交流を兼ねた新たな拠点グループ会社のKプロビジョンがデザインした施設コンセプトロゴ。2つの「i」を2人の「人」に見立て,出会いや交流の場であることを表現。また3つの円は,右上に「開き」を設けることで,既存の枠に収まらない新たな使い方の可能性を示すワーキングでの議論や施設コンセプトを踏まえ,従来の「研修室」を「クロスルーム」として再整備した。可動式家具や利用場面に応じて明るさを調整できる照明を採用し,研修やグループワークなど多様な目的に対応する。使用しない時間帯は,キッズルームとしても利用できる(右)
20KAJIMA202610現地で広がった施設の可能性加藤 施設のあり方を検討するワーキングは,2025年4月に始まりました。完成後,グループ連携の拠点として活用するには,実際に利用するグループ各社の社員に計画段階から関わってもらうことが大切だと考えたからです。そこで,「蓼科でどのように過ごしたいか」「この施設をどう使いたいか」と問いかけ,皆さんから自由にアイデアを出してもらいました。安村 私は設計者として参加する一方,メンバーの一人として意見も出しました。設計者の立場では,そこで出された多様な意見を,どのように空間へ落とし込むかが重要でした。予算や様々な条件のなかで,すべての意見を実現することはできません。しかし,皆さんが蓼科での過ごし方や施設の使い方を自由に語ったことで,施設の可能性は大きく広がりました。林 ワーキングには,グループ会社9社から総勢18人が参加し,全3回のうち,1回は2025年5月に現地で開催しました。グループ各社の社員が一堂に会し,一つのテーマに向き合う姿を見て,グループ全体で活用する施設のイメージがより具体的になりましたね。キーワードは「あえて蓼科」久保 まず蓼科まで足を運ぶ魅力を,どのようにつくるかが課題でした。そこで,「あえて蓼科に行くなら何をするか」「あえて蓼科でグループ連携に取り組むなら何ができるか」を考え,さらに「グループ各社の社員と“会える”施設」という意味も重ね「あえて蓼科」をワーキングのキーワードにしました。と声をかける方が参加しやすい。また,ここで会えば,普段は接点のない社員とも自然に言葉を交わせますし,会社で再会したときの会話のきっかけにもなりました。蓼科へ足を運ぶからこそ得られる価値だと思います。久保 検討では「グループの強みと弱み」など,グループの現状を根本から見つめ直しました。ブランディングを得意とする当社のメンバーが,参加者の意見を基にコンセプト案を示し,フィードバックを受けながら練り上げました。対話を重ねながら段階的に形にしたことで,方向性が大きくぶれることなく検討を進められました。「inspiredX」からクロスルームへ加藤 ワーキングを通じて「inspiredX」というコンセプトが生まれたとき,安村さんが「研修室をクロスルームにしようと思っている」と,そっと口にされました。安村 当時,研修室をどのように活用するか,意見がまとまっていませんでした。そのようなときに「inspiredX」というコン市原 私が初めて訪れたとき,しばらく自然に触れる機会がなかったことに気付きました。緑に囲まれるなかで,朝,鳥の鳴き声で目覚める体験がとても新鮮でした。実際に泊まってみてわかるこの施設ならではの魅力だと思います。林 「あえて蓼科」という言葉には,この場所の本質が表れていると思います。大興蓼科山荘の利用経験から言うと,「みんなで旅行しようよ」と誘うより,「蓼科に行こう」安村希美やすむら・のぞみ(アルモ設計)施設の改修設計を担当。ワーキングで出された意見を反映し,既存の木造建築と周辺環境を生かした交流空間を形にした久保有理子くぼ・ゆりこ(Kプロビジョン)グループ連携に関する広報とワーキングの運営を担当。各社の意見をまとめ,施設コンセプトの検討を支えた市原智也いちはら・ともや(鹿島リース)入社3年目でワーキングに参加した最年少メンバー。厨房機器や自動販売機へのリース方式導入を提案し,改修コストの低減に貢献した蓼科で交わる,5人のXクロストーク異なる会社,職種,経験を持つメンバーが集まり,一つの施設のあり方を考えた。「KX-FORESTTATESHINA」のコンセプトづくりに携わった5人が,約4ヵ月にわたるワーキングでの議論や施設に込めた思い,蓼科から広がる新たなつながりについて語り合った。
21KAJIMA202610セプトを聞き,方向性が見えたように感じました。林 私たちメンバーは普段の業務では接点が少なく,意識しなければ簡単につながりが途絶えてしまう関係性にありました。だからこそ,ワーキングでは意識的に「連携」の機会をつくろうとしたのかもしれません。その象徴が「クロスルーム」です。名前のとおり,人と人,知見と知見が交わる場になればと考えています。安村 以前は利用機会が減っていた部屋ですが,建物内で唯一,屋外へ直接出られます。その特徴を生かし,建物の中から外へ人の動きを生み出すことを意識しました。森や自然とより深く触れ合える施設になれば,保養所としての利用価値も高まると思います。つながりを,新たな連携へ市原 若いうちにこの経験ができたことを,ありがたく感じています。20代の社員がグループ各社の社員とつながり,自分の考えが形になる過程に関われることは貴KX-FORESTTATESHINA鹿島グループ蓼科保養所加藤悠記子かとう・ゆきこ(鹿島建物総合管理)事務局としてワーキングの企画・運営を担当。実務者同士の交流や協働の機会をつくり,新たな連携の可能性を探る林達也はやし・たつや(大興物産)大興蓼科山荘の時代から施設を利用してきたリピーター。利用者の視点から,施設の魅力や蓼科ならではの価値を伝えた重です。すぐに仕事へ直結するかどうかにかかわらず,この経験そのものに価値があると思います。加藤 グループ連携は,まだ具体的なビジネスにつながっているわけではありません。しかし,参加した社員が経験を重ね,将来責任ある立場になったときに「あの会社と一緒にできる」「あの会社に知っている人がいる」と思えるだけでも,大きなアドバンテージになるのではないでしょうか。私は今後も,このようなグループ連携活動を継続していきたいと思います。久保 「写真撮影講座」の参加者からは,「今後も他のグループ交流イベントに参加したい」という声を多くいただきました。グループ各社の社員が,会社を越えた交流の機会を求めていることを改めて実感しています。ワーキングやこの施設での出会いを通じて,つながりをつくる場がさらに広がってほしいと思います。現地ワーキングの一コマ。感じたことを付箋に書き出して共有,グループ連携につながる具体的なプログラムや施設の利用イメージを検討した改修前は眺めるだけだった森へ,気軽に足を運べるよう整備したウッドデッキ現地ワーキングでもらった「あえて蓼科」のステッカーを,今も手帳に挟んでいるという市原さん。「このステッカーを見ると,皆さんとの楽しい思い出がよみがえる」と振り返るXトークのワンシーン