KAJIMAエコプラザ


KAJIMA ECO PLAZA

工場を環境創造の出発点に
「工場」からどんなイメージを連想されますか。「生産性至上の空間」,「汚染や騒音の発生源」等でしょうか。これまで工場の環境配慮と言えば公害防止に主眼が置かれてきましたが,最近は違った試みも行われています。今月は工場の中に身近な動植物の生息空間を創出する「工場ビオトープ」の取組みをご紹介します。

工場ビオトープ


工場ビオトープ  工場における環境配慮については,排気ガスや排水による公害の防止,生産ラインにおける使用エネルギーの削減等,様々なアプローチが考えられますが,最近では生産活動に直結しない,動植物など自然環境への配慮も行われるようになっています。そこで注目されるのが「工場におけるビオトープの創出」です。
 ビオトープは「生物(ビオ)」と「場所(トープ)」を合成した造語で,「生物の生息する空間」を意味します。身近な自然環境の喪失が問題視されるようになり,各地で様々な規模のビオトープ創出の取組みが行われています。
 ビオトープ創出のための場所として「工場を見ると,いくつかのメリットがあります。まず,敷地の規模が大きいため広いビオトープが確保できること,加えて,資材置場や拡張用地として利用頻度の低い場所がある場合が多いこと。また,敷地周囲に緩衝緑地を持っていることが多く,外部の影響を受けにくいなど,工場はビオトープを創出しやすい環境にあると言えます。
 一方,ビオトープに取り組む工場側のメリットとしては,社内外に環境配慮の企業姿勢をPRできるだけでなく,創出されたビオトープは,従業員の寛ぎの場となります。また,ビオトープに生息する動植物を観察することで,工場が環境に与える影響を把握することができます。更に,環境保全活動の成果を示すアイテムのひとつとなり,ISO14000シリーズの取組みにも有効です。
 これらの効果を期待して,一般客の工場見学ルートにビオトープエリアを含めたり,さらに,ビオトープ管理を近隣の住民と一緒に行っている事業者もあります。
 当社では,これまでに環境影響評価で培った自然環境調査のノウハウや環境保全技術の蓄積を活かして,各地で様々な規模のビオトープを作っています。中には,竣工後の環境モニタリングを継続して管理手法やビオトープを利用した観察会・イベントのお手伝いをさせていただいている施設もあります。
富士通小山工場のビオトープ
キリンビール栃木工場のビオトープ 富士通小山工場のビオトープ
キリンビール栃木工場のビオトープ
約30haの敷地に作られた2,700m2のビオトープ。鳥が水遊びをするような深さ数cmの池と,水生植物が繁茂する深さ数10cmの池を水路で結び,多様な水辺環境を創出している
富士通小山工場のビオトープ
工場用水の放流量を調節する貯留池と魚類による水質監視池を兼ねている