特集:これからの建築生産システム![]() |
Chapter3 適用事例にみる担当者の声 |
銀座電算本社ビル建築工事 プロダクションセンターの取組みは,実際の工事ではどのように捉えられているのだろう。建築生産情報統合システムの適用第一号である(株)電算本社ビル建築工事の事例をもとに,設計,施工の担当者からの声を届ける。 |
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銀座電算本社ビル建築工事 場所:東京都中央区銀座8-10-5 規模:S造 地上10階,塔屋1階 延べ1,176m2 工期:2001年7月〜2002年8月 |
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設計者から 建築設計エンジニアリング本部 建築設計グループ チーフ 稲森孝二 |
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施工との連携により設計品質も向上 海外の有名ブランドの直営店が軒を並べる東京・銀座。工事は表通りから一歩入ったところで進められている。建築設計エンジニアリング本部の稲森チーフは,当社の提案について振り返る。「銀座電算本社ビルは発注者の意向を踏まえ,銀座というハイソなイメージで,しかもシンボリックなデザインとなるようにしました。昨年,周辺の銀座地区では建物の高さ制限が大幅に緩和されました。高層化が実現するなかで階高にも余裕を持たせ,IT化への対応も十分行っています」 正式に発注が決まってからは,由里グループリーダーを中心にフロア構成などを決めていった。稲森チーフは,当社の建築生産システムの効果が最大限発揮されるためには,特に基本設計での詰めが重要であると訴える。「設計者は発注者の要望を正確に捉え,建物の機能,デザインなどに盛り込む必要があります。しかも,電気機器の型番や扉の位置といった細部に至るまできっちりと検討しなければなりません」この工事では,基本設計の段階で発注者とのすり合わせが10数回に及んだ。 「また,設計者は常にコスト意識を持って設計にあたらなければなりません。ここでは,金額的にも発注者の要望にあうように,基本設計時に東京支店の見積部とも連携して何回も調整をしました。そういった過程を通して,お客さんから信頼される設計ができたのです」 今回,プロダクションセンターが間に入ることで,設計と施工が繋がる機会が持てた。施工を担当することが既に決まっていた蓮見所長も設計段階から検討に加わり,施工サイドのノウハウを取り入れた。「設計だけではなかなか判断できないことも,プロダクションセンターを仲介として,より施工に即した提案ができます。その結果,設計図書の品質がより向上するのです」 |
工事は既存の電算本社ビルの隣で行われている | ![]() |
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設計,施工のレベルの高さに感心 | ||
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株式会社電算 副社長 河野 純 氏 |
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見積の際に提案事項が細部にわたってきっちりと検討されていたことなどから御社への発注を決めました。たまたまITを利用した生産システムの取組みを始められたということを聞きました。当社がIT関連の事業を行っていることもあり,これもご縁なのかと思っております。 設計が始まってからは,建物のコンセプトをより分かりやすく示していただいたので,細かいところもスムーズに決まりました。室内のレイアウトなど,パースで確認しながら擦り合わせを頻繁に行ったことで,当初の予想を上回るものになりそうです。 大抵,設計は設計事務所に,施工は建設会社にお願いしますが,今回は一括で御社にお願いしました。こちらから見ますと,設計,施工の両方が連携して効率よく進んでいるようです。同じ会社でも,もたれあいのようなマイナス部分は見受けられません。それは御社のしっかりとした検査体制からも分かります。 工事が隣の敷地で行われているため,現場の様子がよく分かります。非常に高い技術を用いて建てられているのを間近で見て,御社に任せて本当に良かったと思います。今年8月の竣工が楽しみです。 |
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施工者から 銀座電算本社ビル工事 所長 蓮見洋司 |
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一人現場で大きな効果が期待 「当社の新しい建築生産システムは,現場を変える可能性を秘めています」 工事を担当する蓮見所長は,プロダクションセンターの取組みに期待を寄せる。現場を担当する所長は約40年間,都内で様々な建築工事を手がけてきたベテランだ。そんな中,ますます厳しくなる状況を目のあたりにしていて,当社が生き残るためには,現場だけでの努力では限界だと感じていた。 蓮見所長は,銀座電算本社ビル工事のほか,都内で3ヵ所の工事を兼務している。支店や現場,協力会社との打合せで飛び回る毎日だ。そのため日常の施工管理は稲村工事課長が中心となって進めている。 「当社の社員は,現場で非常に多くの業務をこなさなければなりません。工事管理や調整,作業員の安全,予算管理など,Q(品質),C(コスト),D(工期),S(安全)に関わること全てです。大現場であれば,複数の社員で分担すればいいのですが,中小の現場では限られた人数で対応しなければなりません」 そういう意味において,新しいシステムは非常に効果が上がっているという。「着工前に施工図など約30枚の図面をプロダクションセンターから受け取りました。整合性がとれた施工図が早くから手許に入ったことが,工事を進めるのに非常に役立ちました」 現場では施工図をもとに工事が進められる。協力会社は,この施工図をもとにサッシュなど様々な工種に分かれた製作図をつくっていく。しかし,施工図の内容が着工してもなかなか確定していないのが現状だ。元になる施工図が完成していないと,川下の全ての専門工事に影響を与えてしまう。 「現場では図面の調整作業に莫大な時間と労力を取られてしまいます。そういったことがなくなれば,現場担当者は工事管理などに集中できます。整合性のある図面があることで,更なる工期短縮や品質の向上にもつながります」 実際,鉄骨工事については,着工前にプロダクションセンターから製作図160枚分のデータを協力会社に流し,鉄骨製作の際にダクトの貫通孔まで反映させることができたという。配管ダクトなど設備との取り合いも,きっちりと納まることが着工前から確認できていた。このように,プロダクションセンターが設計段階から積極的に関わることにより,工事もスムーズに運んでいるという。その結果,現時点で予定の工期を3週間短縮している。 |
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![]() |Chapter1 建築生産の新しいビジネスモデル |Chapter2 建築生産情報統合システムのしくみ |Chapter3 適用事例にみる担当者の声 |Chapter4 次世代の建築生産を担うプロダクションセンターのこれから |