サンゴの再生技術
沖縄の海などでサンゴ礁の死滅が問題となっていますが,従来までのサンゴ再生事例では,自然から採取したサンゴの枝を移植する手法が多く,ドナーとなるサンゴの破壊が懸念されてきました。
私たちの実験場では,サンゴが自然着生しやすい網状の基盤を開発しました。基盤をサンゴ産卵期の数ヵ月前に海底に設置すると,海藻類の一種であるサンゴモが基盤表面に付着します。このサンゴモがサンゴの幼生を誘引し,着生率を大幅に高めるのです。沖縄県の慶良間諸島で行なわれた実証実験では,基盤設置から1年後の平均生存率が8割を超えるという結果を残しました。
この手法は,海中のサンゴの卵・幼生を,自然に着生させて育成するため,環境への影響が少ないのが特徴です。基盤は,網が自然に分解するトウモロコシの成分を使用しており,安価で軽量,光の透過性にも優れています。基盤に着いたサンゴは,人工構造物などの別の基盤にも簡単に取り付けることができるのも利点です。
当社は昨年から,沖縄県にある国内最大規模のサンゴ礁域「石西礁湖」で国が進める自然再生プロジェクトに協議委員メンバーとして参画しており,この海域でも再生技術の活用を計画しています。
実験場におけるこのほかの研究テーマとしては,湖沼やダム湖の水質改善策として注目を集める「マイクロバブル」に関する研究や,水域環境の保全に寄与する沿岸の希少動物の生態研究も行なっています。今後も環境共生社会の更なる推進を目指して,生態系,生物多様性の維持・保全につながる技術研究に取り組んでいきます。
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