この春,当社としては故武藤副社長らに次いで紫綬褒章を受章した野尻さんは,仕事以外にも多くの趣味を持つマルチな人物。今月のクローズアップかじまじんは,公私にわたり活躍中の野尻さんをご紹介します。
1960年代から70年代初めにかけて大規模な山留め崩落事故が起きていた。当時は施工ミスであると受け止められたが,根本的な設計法に問題があるのではないかと考えた野尻さんは現場において自身が発明した計測装置を用いて挙動測定を繰り返した。その結果,全く新しい考え方による山留め設計法「仮想支点法」と施工法「切ばりプレロード工法」が誕生した。これは国の基準や指針に取り込まれ,74年以降山留め崩壊事故防止に大きく貢献した。79年に科学技術庁長官賞を受賞し,96年,57歳で博士号を取得する。そしてそれまでの研究開発成果が評価され,今年4月紫綬褒章を受章した。
その発想の源は?「般若心経に“観自在(かんじざい)”という言葉があるのですが,いつも一つのものを固定観念で捉えるのではなく,いろんな角度,いろんな視点から見るようにしています。今の時代は創造的な発想力が欠けているような気がしますね」 野尻さんは7年前,勤続30年の休暇と資金を利用して大工道具一式を揃え,木彫りを始めた。初めて作った木製のおもちゃが「世界・木のクラフト展」に入選。以来,多くの作品を手掛け,東急ハンズ大賞や日本DIY協会クラフト部門などでも入賞している。また,府中アカデミー合唱団でバスバリトンを担当。年1回の定期演奏会の舞台に立ち,来年にはローザンヌへ遠征する予定とか。ゴルフもシングルの腕前と,まさに多才。
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