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45年前の先輩の偉業に想いを馳せ 五十里(いかり)ダム施設改良本体工事 |
栃木県鬼怒川水系。ここには当社が施工したダムが数多くある。五十里ダム,川俣ダム,川治ダム。その中でも最も古い五十里ダムで今,放水能力の増強を目指したリニューアル工事が行われている。今月の現場からは,当社ゆかりの地,鬼怒川水系の五十里ダム施設改良本体工事を訪ねた。 |
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五十里ダム施設改良本体工事 場所:栃木県塩谷郡藤原町大字川治地先 発注者:国土交通省関東地方整備局 規模: 法面掘削工13,800m3 堤体削孔工101.7m 放流管巻立コンクリート14,800m3 放流管φ3.8m×2 修理用ゲート2門 工期:1999年10月〜2003年3月 |
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供用中のダムの堤体に穴をあける 東京・浅草から東武線の特急と各駅停車を乗り継いで約2時間半。目指す五十里ダムは,湯治場として有名な川治温泉郷の奥の山間にどっしりとその姿を見せた。 この五十里ダムは1950(昭和25)年から1956(昭和31)年にかけて当社により施工された。当時,重力式コンクリートダムとしては日本一の高さを誇り,初めて堤高100mを超えるダムであった。最高のスタッフと最新技術により建設され,その経験と技術,施工機械は,その後次々と誕生したコンクリートダム建設の礎を築いたと言われている。 あれから40年あまり。五十里ダムの現在の放水能力は毎秒100t程度で,しかも「全開・全閉」操作しか出来ないため,ダム湖の水位の調整が難しく,放流時に下流側の水位が急激に上がるなどの問題を抱えていた。そこで,毎秒500tの放水能力を持つ新たな放流設備の設置を目的とした改良工事が計画されたのである。具体的にはダム堤体に二つの穴をあけ,放流管を設置し,下流の急激な水位上昇を避けるため,部分開度放流も可能なゲートを設置するというものだ。 VE提案で水位低下期間を13週も短縮 供用中のダムの堤体に穴をあけ,ゲートを設置するためには,ダム湖の水位を低下させる期間が必要である。 この工事では工事期間中3シーズン,10月から翌2月までの5か月間,通常時よりも40mも水位を低下させて工事を行っている。五十里ダムの水は発電だけでなく,農業用水にも使われているため,ダムの水位は4月中旬には満水近くまで回復させておかなければならない。入札には「技術提案総合評価(VE)方式」が採用され,水位低下期間をいかに短くするかがポイントであった。当社と石川島播磨重工JVは,当初69週とされていた水位低下期間を13週短縮し,56週とする提案を行い,落札となった。「水位低下期間が決められているため,全体の工程管理に非常に気を使います。万が一工事が遅れれば,その工事は1年後にしかできなくなることも考えられます」と現場の米山所長は語る。 1999年度の最初の水位低下期間に上流側の仮締切工を行い,2000年度の水位低下期間に堤体に穴をあける堤体削孔工を行った。現在は放流管の据付工事も無事終了し,堤体外のコンクリート工事が行われており,ゲート戸当り金物を設置する最終の水位低下期間を今秋に迎えることになる。 |
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下流側から全景 左側に2本のトンネルが見える |
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米山義春所長 |
姿を現した45年前のコンクリート 堤体にあけられた穴は直径5m。下流側に作業構台を設け,ロードヘッダという削孔機械を用いて,長さおよそ50mのトンネルを2本掘った。45年間,巨大水圧を支えつづけたコンクリートがあらわになったのである。「坑壁は美しく,水漏れなどは一切見られませんでした。昭和27,28年当時,我々の先輩がどれだけしっかり品質管理をしていたのかが偲ばれます。建設に携われた諸先輩方の高度な技術力と真摯な施工力に胸が打たれました」と米山所長。 コンクリートコアを採取して強度試験等を行った結果,打設当時よりも圧縮強度が5%程度増加していること,中性化試験によっても耐久性が保持されていることが実証された。 当社ゆかりの水系で再び・・・ 鬼怒川ダム群では,現在,貯水容量が少ない五十里ダムと,貯水量が多い川治ダムとを約1kmの水路トンネルで結び,水を有効利用しようとする,いわばダムのネットワーク化工事も進められている。新しいダムを造るだけでなく,こうした既存のダムを有効に使っていくという考え方はこれからも増えていくことだろう。 川治ダムの建設にも携わった米山所長は五十里ダムを前に言った。「20数年ぶりにこの水系に戻ってきて,先輩たちの造った素晴らしいダムの改良工事に携われたことは,技術者冥利に尽きる。是非,この工事を成功させ,先輩の偉業を後世に伝えたいですね」 |
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