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![]() 芦田川流域下水道沼隈幹線(6工区-1)管渠工事 狭いトンネル内での作業と新システムの導入 現在,広島県東部に位置する芦田川流域では,下水道整備事業が進んでいる。 沼隈幹線は全長約14.2km,この地区の幹線となる管渠だ。当社は,この幹線のうち沼隈半島を横断する約3.4kmの工事区間を担当し,岩盤用全断面トンネル掘削機械「TBM(Tunnel Boring Machine)」を用いて,トンネルを掘り進めている。 |
![]() 工事概要 場所:広島県沼隈郡沼隈町 発注者:広島県福山地域事務所 設計者:八千代エンジニアリング 規模: トンネル延長(区間長)3,409m トンネル掘削工法 TBM工法 トンネル掘削外径 2,320mm(仕上り内径1,350mm) 発進立坑 1基(深さ30.7m) |
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外径2.32mの狭隘な空間 地上よりエレベータで立坑を下り,地下30mの作業現場に入る。掘削外径2.32mのトンネルは,想像以上に狭い。まず,この中でTBMの操作や支保工の組立て,軌条・排水管などの敷設作業が行われていることに驚く。取材に訪れた7月上旬には,約2kmまで掘削が進んでいた。特製の人車に乗り込み,薄暗いトンネル内をバッテリー・ロコ(電気機関車)で約20分。途中,雨のごとく頭上より地下水が降る場所もある。TBM本体の手前で人車を降りる。トンネル先端部までには,TBMの操作室や資材置き場,複雑な機電装置などが配置され,上部にはズリを運搬するベルトコンベアや粉塵ダクトが連なる。人ひとりが腰をかがめて通るのがやっとのスペースだ。膝近くまで溜まる地下水と排水管で足場は悪く,改めて狭隘な作業空間で働く厳しさを痛感した。 |
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トンネル工事は水との闘い トンネルの先端部では,TBMにより「突っ込み」と呼ばれる前下がりの勾配で岩盤が掘削されている。トンネルからは,毎分2.5tから多い時には3t以上の地下水が発生している。現在,地下水は2本のパイプで地上にある濁水処理プラントまで送られているが,地下水が排水許容量を超えると一大事だ。一度マシンが水没すると,復旧までに多大な時間とコストがかかる。何より作業員の安全確保のため,水処理への対策は厳重だ。「水位警報装置を使用した24時間体制の監視を行っています。異常事態が発生した場合は,事務所あるいは携帯電話へ連絡が入るシステムです。さらに,停電時のために発電機を設置しています。TBMがストップしても湧水は常に出ているため,排水を止めるわけにはいきません。この工事は水との闘いです」と厳しい表情を浮かべる片山所長。8月のお盆明けより,さらに突発湧水が予想される難所にさしかかる。排水パイプを1本増設し,毎分6tの排水処理が可能な施設を完備する。また,この施設に対応するために,さらに強力な停電時の給電設備も検討している。 |
全社一丸となって取り組んだ新技術 TBMで掘削されたズリは,ベルトコンベアで後方に50mほど運ばれた後,ズリ鋼車へ積み替えられ,立坑までバッテリー・ロコでけん引される。立坑では,ズリが鋼車からエプロンフィダーと呼ばれる容器に移された後,自動的に1m3ずつ,鋼製のカプセルへと積み込まれる。ターンテーブルが回転し,カプセルが垂直に地上まで伸びる管路の真下へセットされると,地上に設置されたブロワーで管路内の空気が吸い上げられる。カプセルは毎秒1.5mの速さで管路内を移動し,地上までズリが搬送される。 |
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このカプセル空気輸送システムは,1999年,当社と関西設計,住友金属工業が共同開発したもので,今回初めて実用化された。従来,立坑からのズリ搬出は,バケットにズリを入れてワイヤーロープで引きあげる方法や,垂直コンベアが使用されていた。しかし,今後より大深度化する地下構造物の施工を視野に入れると,効率性・安全性に優れた新システムを開発・実用化する必要があった。 片山所長はシステム導入までを振り返り,こう語る。「実績のない新開発システムの採否決断には,少し時間が必要でした。30m程度の地下工事では,従来の方法でも充分対応できます。しかし,我々のチャレンジ精神が次の可能性に繋がるのだと思った時,迷いはありませんでした。今,土木技術本部,機械部,支店土木部,そして現場がひとつになってさらなるシステムアップのために尽力しています」。 新システムの導入に,初期トラブルは想定されていた。関連部署のバックアップで,改善・改良を重ね,1,000m級の大深度地下工事にも対応できることが,この現場の実施工を通じて証明されたという。 沼隈幹線6工区の難所といわれる断層部分の施工を目前に,無事故無災害での完成を目指す片山所長。持ち前のチャレンジ精神がそれを可能とするに違いない。 |
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