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VEリーダー
VEリーダー近年,VEに着目している企業が増えています。
「VEリーダー1万人プロジェクト」を始動した会社や原価改善活動に取り入れる会社もあります。
今月の「検索」は,当社のVEリーダーの取組みや将来の展望について,建築管理本部VE推進チームの柏原忠茂専任部長と足立忠郎次長に聞きました。
私たちの身近にあるVE
 VEとはValue Engineeringの略で,1947年米国GE社のL.D.マイルズ氏が開発し,1960年頃わが国に導入されました。機能とコストのバランスを考え,顧客に価値の高い提案をする手法です。V(Value:価値)=F(Function:機能)/C(Cost:費用)という概念式で表します。
  難しそうと思うかもしれませんが,例えば新しい携帯電話を購入する時,2つの機種で迷ったとします。一方は5,000円高いけれど,片方に付いていない機能が付いている。機能を重視するか,価格が安い方を購入するか・・・。迷った時私たちは,外せない機能は何だったか,予算はいくらあるかと原点に立ち返り自分が求めている価値を再確認します。コストパフォーマンスを考えるのがVEで,私たちは日常生活で無意識にVEを使っています。

VE導入の経緯
 当社では1977年,オイルショックによる経済低迷期に,VEの研究を開始しました。入札・契約制度として,官庁及び民間の発注者からVE提案を要求される案件が増し,1992年にVE準備室を設置。さらに1993年から日本VE協会が認定するVEリーダーの養成講座を始めました。
  当社のVEの特長は,「顧客本位で価値を向上させる」「機能本位(目的志向)で原点に回帰し,発想の転換を図る」「部署横断的にチームデザインをする」ことにあります。そしてこのようなVE活動を先導するのがVEリーダー(VEL)です。
  当社はVEL養成講座で,2008年度までに約4,000名の受講者を輩出し,現在 VEL合格者は2,038名で,2001年から連続して企業別累計数でトップとなっています。

VE発想で生まれたもの
 VEを用いたプロジェクトの代表例として,「クリネックススタジアム宮城」の改修工事があります。球場の改修は,150日という限られた工期と雪への対策が必要でした。そこで提案されたのが,土木技術のフリーフレーム工法と建築技術のプレキャストコンクリート(PCa)段床工法の融合でした。土木と建築,各々の技術が,チームデザインとして結びつき,工期短縮と高品質を実現して顧客の要求機能に応えました。
  VE提案は,提案件数を単に増やすことではなく,提案した内容をどのくらい採用してもらうかが大切です。発注者や設計事務所が満足するVE提案をすることで,コスト競争力が強化され,受注拡大と利益向上に繋がります。
VEL養成講座の様子
VE提案例(チームデザインの成果)

今後の展望と狙いVEリーダー
 VEL養成講座の開催当初,参加者の大半が技術系でしたが,最近は事務系社員も増えました。特に目立つようになったのが若手の営業マンです。顧客の要求機能や要求水準をより多く把握できる立場を活かし,原案がオーバースペック(顧客にとって不必要機能)ではないか,要求水準を逸脱していないかなど,冷静な判断と指摘をするようにアドバイスしています。
  今後,業界トップレベルの当社の土木と建築の技術を融合したアイデアのさらなる具現化を図ります。また,ゼネコンの優位性を発揮し,工期短縮や品質向上に繋がる施工を考慮した設計などの提案を推進しています。VEの考えは,当社の故鹿島守之助会長が,1936年に発表した事業成功の秘訣二十ヵ条の第一条「旧来の方法が一番いいという考えを捨てよ」に通じています。当社にはそのDNAが脈々と受け継がれているのではないでしょうか。

VEリーダー有資格者に聞きました

VEリーダー有資格者に聞きました

 営業案件の社内打合せでコストや顧客要求機能などVEに関する議論になる場面が多くあり,VEの知識の必要性を感じました。今は,現場事務業務の質の向上や,職場環境の整備にもVEを活用しています。(関東支店管理部 女性)

 当社のVE提案がお客様を満足させるものか,営業マンとして判断できなければと,VEL資格取得を思い立ちました。VE提案の内容により当社の評価が向上していることを実感しています。(営業本部 男性)

 施主のニーズとコストのバランスを取り,信頼関係を維持するツールとしてVEを学ぼうと思いました。顧客の「イメージ」を,知恵の結集で無駄のない実用的な「かたち」にして提供できることにVEの魅力を感じています。(関西支店建築現場 男性)

 VEを学んだことで,「機能」という直接目に見えないものやサービスに,論理的,科学的方法で付加価値を付ける一方,コストダウンできる手法を知りました。(東北支店土木部 男性)

 VELの教育・主管部署に在籍していたため取得者も多く,私も取得しました。取得後2年間,建築業協会に出向しVE活動の理解を深めました。当社の品質を長期的に保証するために,適切なVE提案がなされていることの重要性を感じます。(建築設計本部 女性)

 この資格を取得したことで,技術開発の業務に役立つと実感しました。私自身も若手技術者への取得を勧めています。VEの思考法を身に付けたことで,低コスト高機能ビルマルチエアコン空調システムなどを開発できました。(建築設計本部 男性)
 
  まだVEが当社に定着する前でしたが,業務内容がVEに関連する要素が多かったため取得しました。現在は,建築施工系社員の人事・育成を主管。育成体系を見直す際に,必要な機能を整理して絞り込むプロセスは,まさにVE的プロセスそのものと言えます。(建築管理本部 男性)

 当社の取得推奨資格だからVELを取得しましたが,プロジェクト見積時のVE提案作成に活用しています。是非,皆さんにも取得して欲しい資格です。(東京建築支店 役員)

VEリーダー有資格者に聞きました
VEL養成講座のすすめ

 今回お話を聞いた2人は,CVS(米国VE協会認定バリュースペシャリスト)の資格を持っています。VEL,VEスペシャリストと続くVE資格の最高峰で,2009年4月現在,全国で123名。建設業では20名以下の希少な存在の2人が,当社のVEL養成講座の講師をしています。
  「当社のVEL養成は,VEL有資格者を増やすことが最終目的ではなく,VEの正しい考え方を理解して業務に活かすことにあります。VE思考を一般教養として社員全員が身に付け,問題意識の高揚と課題解決力や提案力の強化の一ツールとなれば幸いです」(柏原専任部長)
  「技術系社員には『外部排水溝工事改善提案』などのハード課題,事務系社員には『住宅販促イベント企画』などのソフト課題というように,当社オリジナルのテーマで,VEをより身近に捉えられる内容となっています。VEの事例や,旬の話題を織り交ぜ,受講者が興味を抱ける工夫もしています」(足立次長)

 VEL資格は, CBT(Computer-based Testing)方式の試験に合格すると取得できます。当社のVEL養成講座は,12時間以上のVE研修の受講という受験資格要件を満たし,5〜6名のチーム編成によるワークショップセミナー方式を採用しています。受講当初の計画と,最終案の差異を突き合わせることで,VE手法の有効性が実感できます。
VEL養成講座の講師を務める建築管理本部 柏原専任部長(左)と足立次長(右)