札幌の大通公園にほど近いオフィス街の真ん中に,巨大なガラスの華が咲いた。 札幌テレビ放送が開局40周年を記念して計画した新しいイベントスペース・札幌メディアパークは,世界初の開閉方式のガラス屋根を持つ印象的な建物だ。今回の現場からはガラス屋根がついに完成し,その全貌を現した札幌メディアパークを紹介する。
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●世界初の開閉方式ガラス屋根
札幌メディアパークは,南に大通公園,北に北大植物園,東に赤レンガの北海道庁があり,周囲にも芸術文化施設が多く存在する「北一条文化ゾーン」に位置している。この施設はテレビ・ラジオの公開生放送や各種イベント,コンサートなどを行う多目的施設である。
ガラス屋根の開閉パターンは全部で5つ。「全開」にするとガラスのピラミッドが6つつながった形ができあがる。屋根と言うよりは巨大なガラスの造形のようだ。この他に4つのパターンがあり,用途に応じた開閉方式が採用されることになる。 ●ガラス屋根の開閉機構は「車のジャッキ」 可動屋根は固定の屋根に取り付けたシャフトを軸に回転して開く。車のジャッキを思い浮かべてみよう。ねじを回すことでひし形状の受け台の支持部分を鉛直方向にのばし,それによって車を持ち上げる。ねじの回転を直線運動に変えるという原理がガラス屋根の開閉機構に使われている。油圧ジャッキ等を採用しなかったのは,メンテナンスの容易さと故障のおこりやすさを考慮してのことである。
●雨を漏らすな−新しいサッシの開発
前例のない開閉方式であるため,屋根の雨仕舞いは大きな課題だった。特に屋根の頂部は6枚のパネルが重なり合う構造だからだ。設計者・施工者・メーカーの間で一年ががりで新しいサッシの開発が行われた。現場の斉藤所長は「新製品のサッシを開発する場合,市場に出るまでには3〜5年かかるのが一般的。それをこの現場では1年足らずでやらなければならず,気ばかり焦った」と言う。水密性能を確保する必要のある部位では必ず二重止水構造となるようにし,可動パネルと固定パネルの交差部では可動パネルの動きに追従するようにしている。実物大の模型を作成し,作動実験が繰り返された。
●世界に開かれた現場
工事は発注者である札幌テレビ放送のビルの真横で進む。テレビ局の施設の工事だけに現場の様子がテレビで紹介されることも数多い。斉藤所長はすでに数回のテレビ出演を経験。生中継などでも「もう緊張もしませんよ」と余裕の表情だ。 ●世界に開かれた現場
この建物の愛称が,札幌テレビの公募により広く道民に呼びかけられた。そして,8,000通以上の応募の中からこの程「SPICA(スピカ)」に決定した。
折り紙細工の様なガラス屋根を持つこの「SPICA」は来年4月7日のオープンには多くの人々の注目を集めることだろう。これから北海道は厳しい冬を迎える。竣工までのラストスパートは始まったばかりだ。
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