テクノプラザ:
   土をしっかりきれいにする 
          〜汚染土壌対策技術

 汚染土壌の問題は,重大な環境問題であるとともに,土地の資産価値に関わることから経済的にも大きな問題である。しかし,現状では調査や対策がまだ始められたばかりで,汚染のメカニズムも未だに解明されていない部分が残っている。
 この汚染土壌に対して,技術研究所では調査から対策にわたる一連の技術開発を進めており,すでに実用化された技術もある。今月の「テクノプラザ」では,この汚染土壌について,これまで技術研究所が主体となって取り組んできた研究成果を中心に紹介する。



●汚染土壌はどんなもの?

 現在問題となっている土壌汚染物質は主に重金属や油,揮発性有機化合物などが挙げられる。重金属は土に吸着しやすいため地表面近くに留まる。油は液体なので帯水層まで浸透し,比重が水より小さいことから,地下水面付近で拡散する。揮発性有機化合物の多くは粘性が小さく,比重が大きいため難透水層上部まで浸透し,帯水層内で拡散する。このように,汚染の形態は,汚染物質の性質によって異なる。

汚染発生・拡散のメカニズム
汚染発生・拡散のメカニズム


●汚染土壌の対応法法は?

 汚染土壌を効率よくかつ適切に処理するには,調査・解析と評価・対策立案・施工のステップ毎に十分な検討を重ねながら進めていく。

ステップ1 調査

 汚染土壌がどの程度のものかを把握するためには,まず対象となる地盤や地下水を調査することが必要だ。当社は,任意の深度の地下水を正確に採取する技術など,独自の調査技術を有している。さらに,より迅速な原位置での汚染調査技術の実用化をめざして,開発を進めている。

ステップ2 解析・評価

 対象の地盤や地下水の調査結果を,各種の解析プログラムを使うことによって,汚染物質の移動や拡散などを評価し,予測することができる。たとえば,当社が独自に開発した物質移行解析技術は,地下水中に流出した汚染物質の移動をシミュレーションによって予測するプログラムである。これらの予測結果によって,適切な対策をとることができ,コストの面でも効率的だ。

ステップ3 対策立案・施工

 当社では,重金属の不溶化処理技術を始めとして,様々な汚染物質に対して有効な対策技術を開発している。油については,汚染の濃度によってそれぞれ方法がある濃度が高い場合,微細気泡によって洗浄する気泡連行法,また低い場合には生物の分解能力を利用した生物処理法がある。揮発性有機化合物については,汚染の濃度が高い不飽和地盤から,原位置で汚染物質を取り除くガス吸引法がある。


鹿島の汚染土壌対策技術
●調査
・サンプリング技術
・地下水調査
・地盤物性調査
・原位置汚染調査

●解析・調査
・物質移行解析
・地下水流動解析

●対策・立案
・遮断,遮水
・固化,不溶化
・分解
・抽出,除去

●施工
・ガス吸引法
・気泡連行法
・生物処理法
・重金属不溶化技術
・RC槽
・鋼矢板,RC壁
・原位置攪拌壁
・高分子シート
・セメント系固化
・原位置固化
・焼却
・土壌除去
・地下水揚水
・ソイルフラッシング

 今後は,エンジニアリング本部土壌環境室をはじめとする関連部署と,的確な市場ニーズのもとに予防対策技術などのより広範な研究・開発を進めていく予定である。

●土壌の汚染を防ぐには?

 今後は,汚染された土壌をきれいにするだけではなく,未然に防ぐ技術が注目されることだろう。そこで当社では,他社に先駆けてエコベースシステムの提案を行っている。これは,産業施設を新設する際に,遮水層を構築して汚染物質の流出を防ぎ,モニターを常設することで,流出の早期発見と汚染物質の拡散を防ぐシステムである。

エコベースシステム
エコベースシステムの概念図
汚染土壌対策に関するご相談は
エンジニアリング本部 土壌環境室(TEL03-3746-6908)まで