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JR近接で北海道初の160m超のビルを建てる 札幌JRタワー東工区JV工事 |
北海道の経済・社会の中心地,札幌のターミナル駅JR札幌駅の南側が大きく変貌を遂げつつある。駅に直結した商業施設,ホテル,オフィス等の機能を持つ複合施設「JRタワー」だ。当社はこのJRタワーの東工区を担当し,北海道では初めて高さ160mを超える超高層ビルを建設中である。今月の「現場から」では,様々な制約条件下で行われているJRタワーの現場を訪ねた。 |
JRタワー新築工事 東工区 場所:札幌市中央区北5条西2,3,4丁目 発注者:札幌駅南口開発,朝日生命保険,北海道旅客鉄道 設計:日本設計 規模:高層棟−CFT構造 地下3階,地上38階, 塔屋1階 延べ90,627m2 駐車場棟−S造一部SRC造 地下3階,地上11階, 塔屋1階 延べ27,582m2 工期:2000年1月〜2003年1月(札幌支店JV施工) |
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1番線線路に覆い被さるように避難デッキが設置されている |
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JR線路の真横につくる超高層 新千歳空港から快速電車「エアポート」に乗り約30分。JR札幌駅に近づくと,目指すJRタワーの現場が車窓越しに見えてきた。JRの線路の上に覆い被さるように地上38階建てのタワーがそびえていた――。 JR札幌駅の南口に,幅約365mに及ぶ巨大複合施設の建設が進められている。総延べ床面積27万m2を超える巨大プロジェクトは,オフィスとホテルが入居する地上38階建ての超高層棟を中心とする当社施工の「東工区」,12の映画館からなるシネマコンプレックスや商業施設から構成される「センター工区」,そして,北海道初進出となる大丸百貨店が入る「大丸工区」の3工区に別れている。 東工区の中心である地上38階建ての高層棟は,完成すると最高高さ169m(ヘリポートは173m),北海道で最も高い建物となる。札幌のシンボル,テレビ塔の高さは147m。最上階からの眺めはテレビ塔をも下に見る高さだ。 この地上38階建ての超高層ビルを,JR線路の真横で建てなければならない。しかも建物の一部は1番線線路の上に半分かかる形となっている。東工区の工事は全て営業線近接工事となり,このため高層棟,駐車場棟の線路側1スパンの鉄骨建方は,終電から始発までの間,しかも架線の電力が停止するわずか数時間しか行うことができない。昼間でも1番線の列車が通過する間はタワークレーンの運転をストップすることが義務付けられ,旋回範囲も厳しく制限されている。本間所長は「万が一線路の上に物が落ちたりして,数分でも列車がストップすることがあれば,北海道全体のJRダイヤが乱れます。JRダイヤへの影響をゼロにすること,そして一日約20万人に及ぶJR札幌駅利用者への影響をゼロにすることを最重要課題としています」と語る。“絶対に物を落とさない”ために,作業員にはボルトや工具類などの扱いに細心の注意を払うと共に,工具類には落下防止用のワイヤーをつけ,鳶工にはダブル安全帯の使用を義務付けるなど,二重三重の安全管理がなされている。紐の切れ端一つ架線に落ちただけで,全道のダイヤに影響を及ぼすのである。 |
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JR見張り員 無線で1番線監視員からの列車接近の連絡を受け,作業階でタワークレーンの運転中止を指示 |
配置図![]() |
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建物区分![]() |
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南口駅前広場からの全景。左から大丸工区,センター工区,そして超高層部分が当社JV施工の東工区 |
北海道で未知の高さへの挑戦− 寒さと雪との闘い 北海道では高さ150mを超える構造物はこれまで建設されたことはない。「北海道の厳しい気象条件下,高さ100mを超える高所での作業は,風速も体感温度も未知の領域だった」と語るのは,村岡統括所長。昨年の厳冬期の鉄骨建方作業は困難を極めた。最低気温はマイナス15℃まで下がることもある。北西から吹きつける瞬間風速30m/sにも及ぶ季節風は,体感温度を更に下げ,耳がちぎれるほどの寒さだったという。実際,取材時も地上では無風状態だったが,地上160mのPC取付け階では,強風が吹きつけ,しばしば作業が中断されていた。地上と比べると体感温度で5℃は違うと感じられた。真冬時の寒さは想像だにできない。 あの苦労はもうしたくない! 昨年の真冬の厳しい寒さを経験し,今年は冬本番を迎える11月末までに,高層階での鉄骨建方,PC板取付け作業を終了すべく,様々な工夫を行った。鉄骨及びカーテンウォールのユニット化,1節あたり1,200tに及ぶ鉄骨が使用される構造切り替え階の効率化施工等により,高層棟の鉄骨工事を当初予定より約2か月短縮し,冬本番を迎える前に2基のタワークレーンのうち1基を解体することができる見通しだ。 北海道を元気づける建物に・・・ このJRタワーのグランドオープンは2003年3月。高層棟の21階以上には「JRタワーホテル日航札幌」が入居し,JR札幌駅から直接アクセスできる。22階には天然温泉スパが設けられ,最上階38階は札幌を一望できる展望室となる。本間所長は最後に「制約条件の厳しい中での工事ですが,札幌だけでなく,全道の皆さんに注目されている建物ですから,やりがいがあります。このプロジェクトによって北海道を元気づけたいですね」と語った。 |
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今年11月,雪の屋上階の様子 | 村岡保孝統括所長 |
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本間潤一所長 |