ザ・フォアフロント![]() |
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信頼をつなぐ医薬品施設エンジニアリング 2005年4月に施行される改正薬事法に向けて,医薬品業界再編の動きが活発化している。 より厳しくなる品質規準とアウトソーシング化への移行が改正の焦点となるなか, 各医薬品企業では施設の新設,再編が進められている。当社が積極的に取り組む医薬品施設に対する技術支援の現状を紹介しよう。 |
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医薬品のアウトソーシング時代 医薬品の「市販後の安全対策の充実」と「承認・許可制度の見直し」が薬事法改正の焦点となっている。とくに「製造業」と「製造販売業(元売業)」の分離化によって従来の製造,販売形態が大きく改変されることが予想される。より緻密な安全保証対策を講じるために,これまで一企業内で担っていた製造と販売の機能を分社化,あるいは受委託することによって工程の分担を図るもので,これにより「工場をもたない製薬企業」も成立することになる。 大手製薬メーカーでは,製造部門を中堅医薬品メーカーにアウトソーシングし,新薬の開発に経営の重点をシフトする方向性を打ち出す企業も増えてきている。一方で,中堅医薬品メーカーにとってビジネスチャンスとなる製造受託事業に,一部の大手が参入を表明するなど,企業間競争の激化も予想されており,品質管理の一層の差別化が見込まれる。 |
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厳しくなる規準と競争 薬業を主要産業のひとつとする富山県では,県内で120ヵ所の医薬品製造所が稼動しており,薬事法改正に伴い,受託製造の一大拠点となる素地が整っている。本年10月には,当社主催による「鹿島 医薬品カンファレンス in 富山」がひらかれ,「アウトソーシング時代の医薬品施設」をメインテーマとした講演会がおこなわれた。医薬品製造の受委託が広がりつつあるなかで,集まった多くの参加者が講演に耳をかたむけた。 その際に焦点となったのが,製造施設の「GMP(製造管理及び品質管理規則:Good Manufacturing Practice)」への対応である。日本でも,米国で定められたGMPを踏まえ,J-GMPという規準を設けていた。しかし,大手医薬品企業からの製造の受託には米国のc-GMPへの適合が不可欠となることから,各企業ではより厳しくなる規準と競争を乗り越えるための対応が急がれている。 |
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国際基準に適合する医薬品施設 薬事法の改正は建設業界にも大きな影響を及ぼしている。より品質管理に配慮し,かつ効率的な製造所設備の供給が強く求められる。医薬品の品質管理に,GMPに基づいた「バリデーション」と呼ばれる品質保証制度が導入され,製造手順や工程の管理だけでなく,製造所の構造設備・機械などの製造に関わるすべての要因が検証の対象となるからである。快適な作業空間づくりや建物の環境負荷の低減化を図る“入れもの”づくりにはとどまらない高度な技術の提供が必須となる。 機械,電気,情報,環境などの幅広い技術部門を有する当社では,これらのエンジニアリングを集約,連携を図るため1996年にエンジニアリング本部を設置した。以来,医薬品施設の建設に対しても,これらのノウハウを生かし積極的に取り組んできている。当社が計画に参画した医薬品施設は国内にとどまらない。その代表的な成果として,国内医薬品企業のアメリカ工場建設がある。より広いマーケットへの進出を目指す,日本の医薬品業界の積極性を支援した結果である。 |
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医薬と建設のコラボレーション その他,GMPに積極的に対応した施設は数多く,これらの成果は当社と各医薬品企業との高度な技術のコラボレーションによるものである。品質の確保やメンテナンスシステムの機能性など,医薬のプロフェッショナルには様々な配慮が必要とされているが,これらと総合建設会社のエンジニアリングが融合することによって,医療施設や薬局などに届けられる医薬品は,万全の管理が得られるようになる。 当社では,バリデーションに対応したレポートの作成や清潔を保つためのユーティリティの供給,効率性の高い生産システムの供給など,トータルエンジニアリングとして最適施設実現にむけた支援をおこなっている。 現在では日常的に服用される健康ドリンクから厳重な取り扱いが必要とされる抗生物質まで,医薬品は私たちの健康的な生活を支えるうえで不可欠なものとなった。 医薬品製造の現場は,信頼をつなぐエンジニアリングのコラボレーションによって,さらなる安全を提供してくれることだろう。 |