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箕面有料道路山岳トンネル築造工事(北工区)

長大山岳トンネルと大深度換気立坑を構築
大阪府北西部に位置する箕面市。明治の森箕面国定公園や紅葉の美しい
勝尾寺などで有名な緑あふれる府民の憩いのまちである。今月のザ・サイトでは北大阪圏を
活性化する必須ルートとして建設中の箕面有料道路山岳トンネルの現場を紹介する。

工事概要
箕面有料道路山岳トンネル築造工事(北工区)
場所:大阪府箕面市
発注者:大阪府道路公社
設計:大阪府道路公社
規模:本坑延長3,298m 掘削断面積約80m2
作業坑,避難坑,避難連絡坑,地下換気所,換気立坑ほか
工期:1998年10月〜2005年3月
(関西支店JV施工)
箕面有料道路山岳トンネル
北工区工事パース(模式図)
北坑口部
事業の概要
 大阪府と大阪府道路公社が計画している国道423号バイパス箕面有料道路(箕面市萱野〜下止々呂美間,延長7.3km)。このうち当社は道路公社が築造する山岳トンネル(延長5.6km)の北工区の施工を担当している。
 同トンネルは,当面2車線(対面通行)で整備を行い,本坑と避難坑を建設する。将来的には避難坑を南行き車線として拡大し,2車線×2車線の4車線を併せた双設トンネルとする計画である。
 北工区では全トンネルのうち本坑延長3,298m,避難坑3,338m,地下換気所及び換気立坑を施工している。本坑の掘削は発破方式によるNATM補助ベンチ付全断面掘削工法を導入した。ロックボルトと吹付けコンクリートを主要な支保部材として地山の持つ強度を積極的に利用する合理的な工法で,全国の山岳トンネルで広く採用されている。
 工事は順調に進んでおり,今年7月には本坑の貫通式を終えた。現在,避難坑・換気立坑の発破掘削作業の最盛期を迎え,本坑は2次覆工のコンクリート打設を行っている。
NATMトンネルを体感
 作業坑より車でトンネル内に入る。しばらくは,仕上げを終えたコンクリート面のトンネルが続く。さらに奥に進むと,凹凸ある岩盤が顕わになってくる。坑内にはズリの山や重機,コンテナなどが立ち並び,足元も悪くなった。ようやく避難坑の切羽にたどり着くと,削孔機で爆薬装填の準備作業中であった。耳と体がしびれるほどの音と振動が伝わってくる。爆薬の装填が終わると発破を知らせる音楽が坑内に流れる。続いて「ドドドン」という発破音と震動が鳴り響いた。発破の後は,ズリ出し,吹付コンクリート,ロックボルト打設という工程で1次覆工を終える。1日約5.0mずつ掘り進み,11月25日に貫通した。
本坑内部。2次覆工作業の様子
避難坑での削孔作業
大深度立坑を掘削
 この山岳トンネルの換気立坑は331m。東京タワーとほぼ同じ高さ。立坑の施工には「ショートステップ工法」が採用された。この工法は,地山の状況に応じ,1回あたり1.0〜1.5mの掘削を行い,地山を補強してから,1次覆工コンクリートの逆打ちを繰り返していく。当現場では1次覆工だけで2次覆工の機能を持たせるという初の試みに着手している。このため,1次覆工コンクリートに繊維補強材(ポリウェーブ)を混入して強度を上げ,ピッチごとに止水材を取り付けている。立坑は取材時には,地下290m付近まで掘削が完了していた。
 換気立坑とつながる地下換気所は横幅11m,高さ15m,奥行き57mもの大空間だ。既に掘削が終わり,11月末にこの大深度換気立坑と大空間地下換気所がドッキングした。
立坑櫓全景
331mの換気立坑の内部
掘削を終えた地下換気所・機械室
立坑施工概要図(ショートステップ工法)
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環境に配慮したトンネル工事
 当工区の地質は主に砂岩で構成されているが,坑口付近に五月山断層など断層破砕帯があり,工事当初から大量の湧水の処理に苦労したと言う。坑口で処理する総湧水量は,最大で8.0t/分にも達した。そのため,効率よい排水設備を設置して対処している。
 湧水は全てサイト内に整備された濁水処理プラントに送られて確実に処理を行い,現場付近の川に放流したり,工事用水として用いたりしている。
 さらに,濁水処理後に出る脱水ケーキもセメント混和材として再利用するなど,環境への配慮も万全だ。
濁水処理プラント全景
現場を生活拠点とし地元と一丸となる
 本現場の森岡所長は13本のトンネル工事,距離にして2万mをてがけたトンネル現場のベテラン。「トンネル工事は24時間体制の大変な現場です。職員は交代で泊まり込んで現場を見守ります。現場にしっかり根付くことが大切です」と語る。とてもハードな生活ではあるが,それに対して気負いはない。
 また,「地元の方々の理解が第一です。自分の住むすぐ近くで大規模な土木工事が行われているわけですから,実際の現場を見学していただき,ご理解いただきたいのです」とも語る。地元への見学会も連続5日間にわたり開催した。働く人も帰宅してから参加できるよう,夜間にも実施することで,近隣のほぼ全員に参加していただくことができたという。
 山岳トンネル築造工事の完成は2年後の平成17年3月。箕面有料道路は平成19年春に開通の予定。開通すれば,池田市内の交通渋滞の緩和や,大阪府が整備中の「水と緑の健康都市」へのメインアクセスとしての役割を担う。将来は,第二名神高速道路と大阪中心部を結ぶ大幹線道路となる。
本坑本貫通時に美酒を囲むJV社員たち