パリの北西約43kmに位置するヴィニー市。人口約1,050人,緑豊かな田園風景が広がる小さな郊外の町だ。市のシンボルとして人々から愛されているのが,16世紀前半に建造されたルネッサンス様式の古城「シャトー・ド・ヴィニー」。このシャトーが,フランスの歴史ある食文化を学ぶ学校「東海調理製菓専門学校フランス校
シャトー・ド・ヴィニー」として生まれ変わった。
2002年4月にプレ・オープンした当校を運営するのは,静岡県浜松市に本校をかまえる学校法人ミズモト学園。創業者の水元重友氏はフレンチのシェフ出身である。「技術の習得のみならず,本場の文化や食材などを通じた生のフランスを感じてもらう環境を作りたい」。日頃からの同氏のフランス料理・製菓への深い思いは,フランスの象徴のひとつである古城を利用した学校建設の構想へと繋がった。
古城探しを担ったのは,当社の現地法人KAJIMA FRANCE社。20件近くの古城を巡り,耐久性,治安,パリからのアクセスなど,すべての条件が整う「シャトー・ド・ヴィニー」にたどり着いた。同社は,こうした城の仲介のほか,調理棟・製菓棟の建設も担当。当校の経理業務も代行している。
鳥たちの囀りが響く森林の中を遊歩道が伸び,小川が流れ,菜園やハーブ園が広がる――。堀に囲まれた約20万m2におよぶシャトーの敷地は自然の宝庫だ。現在シャトーは生徒たちの宿舎やテーブルマナー等の実習の場として使用されており,将来は来客用の宿泊施設も整備される予定だ。この12月に完成を迎えた調理棟(地上2階,延床面積421m2),製菓棟(地上2階,延床面積373m2)は,既存の納屋と馬小屋を改装し建設された。景観との調和を考慮し,古い建造物を現代のニーズにあった施設として再利用していく――。ヨーロッパに根付く文化がここには感じられる。
来年には学生用宿舎の建設も着工し,ますます施設の充実が図られる。多くの日本人シェフやパティシエがここから巣立つ日も近い。
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